30、三島遥香の末路
なんで?
なんで?なんで?
ボクはわけがわからなくて廃墟内で震えている。
おかしい……。
ボクはギフトを克服したのにギフトが消えない。
いくら明智さんから教えられたことをやってもギフトが消えない。
……明智さん?
そうだ、明智さんだ!
明智さんならこの状況をどうにかできるはずだよね……?
祈るようにボクはスマホで明智さんに通話する。
3コール、4コールと続くと出ないんじゃないかと不安になり10コールになるくらいで明智さんは電話に出てくれた。
『もしもし?』
「あ、明智さんですかっ!?」
『おー、三島じゃん』
明智さんの頼もしい声が聴けて安心感が出る。
くつろいでいるのかちょっとテンションが高そうな声であった。
『どうした?』
「た、た、助けて欲しいんですっ!」
『助けて?』
「ボク、……ボク、突然ギフトがコントロールできなくなって……。おかしいんです……。家族もみんな死んじゃって……」
『じゃあ暴走したんだよ』
「……は?」
しれっと明智さんはバカにした声で指摘してくる。
まるでこうなるのがわかっていたみたいに……。
『三島はさ、あんな強いギフトの力を無理矢理抑え付けていたんだぜ?んなもんそうなるわな』
「……え?」
『水を溜めるダムがあるだろ?ダムの許容範囲以上の水を溜め込むと決壊しちゃうだろ?だから定期的に水を放出しないといけない。三島のギフトはダムと同じだったんだろうね。ギフトの力を抑えまくったせいで制御する力が決壊しちゃったんだよ』
あまりにも説得力のある説明にボクの心は絶望する。
そう指摘されたら本当にそれが原因だとしか思えない。
『やはり暴走しているギフトを無理矢理どうにかしようとすると悪化する俺の説は正しかったわけだな……。なるほど、なるほど。良いデータが取れたよ』
「データ……?」
『君のギフトはいわゆるパンドラの匣だよね。触れてはいけない力そのものって感じ。あぁ、良いねぇ……、『アンチギフト』を破れるのか試してみてぇ……。『アンチギフト』は暴走してバフの掛かった最強の『エナジードレイン』に勝てるのかなぁ?ははっ、アンチ超えを果たす良いデータになりそうだなぁ……。都合良くタケルが来たら最高なんだけど……』
ぶつぶつとわけがわからないことを呟く明智さん。
なんで?
ボクがこんなに苦しんでいるのになんで楽しそうに笑うの……?
なんでボクなんか眼中にないみたいに言うの……?
近付いた目的がボクじゃなくて『エナジードレイン』にあったみたいに言うの……?
「た、助けて……。助けて明智さん……」
『何に対する助けて?』
「え?」
『『え?』じゃなくてさ、死んだ家族を蘇らせるとか俺できないよ?それとも三島が人殺しをしてギフト管理局に逮捕されるのを俺が匿えとかそういう話?しないよ、そんな人殺しを匿うとか』
明智さんがハッキリボクを人殺しと罵った。
「…………騙したんですか?」
『いーや?騙すつもりなんか無かったよ?これで克服できていれば良いねとは思ってたさ。完全克服するか暴走するかの二択だと思ってただけさ。暴走する可能性を三島に隠しただけで騙すなんて酷いこと俺がするわけないじゃないか』
ケラケラと嗤う明智さんの声が悪魔にしか聞こえなかった……。
ボクの明智さんに対する尊敬、好意がすべてバラバラと崩れていく。
『ありがとう、良い研究データが取れたよ』
「…………っ」
『じゃーね。人殺しちゃん。幸せな夢を見なよ』
ツーツーと通話が切れた音がする。
ボクの手からスマホが滑り落ちて床に転がっていく。
パキッとスマホの画面にヒビが入る。
ーー人殺し。
明智さんがボクを人殺しと罵った。
そうだボクは家族を殺した殺人犯……。
その事実に涙が溢れる。
「は……ははっ……。……ははっ……」
ボクは廃墟内から動けなくてそこで狂ったように笑う。
もう、ボクには何もない……。
お父さん、お母さん、和馬、ネコ助には会えなくて……。
美月さんと詠美さんにはもう会えないよね。
「ぅ……ぅ……なんで……。なんで……こんな……」
ボクは自然と涙が溢れてくる。
どうしてボクがこんな目に逢わなくちゃいけないの……?
ギフトなんか……。
『エナジードレイン』なんか覚醒させなければこんなことにはならなかったのに……。
どうして……。
ボクの涙は半日経っても止まらなかった……。
正確には止まっても泣くを何回もループしていた。
廃墟から動くと捕まるかもしれないという恐怖から動けない。
このままどうしようかと考えなくちゃいけないのに頭が働かない。
その時、廃墟内に数人ぶんの足音が聞こえた。
「居たぞ!三島家の長女の姿だっ!」
「……え?」
ギフト管理局の制服を着込んだ男性が6人ほどボクの視界に映る。
「ちょっと事情聴取をさせてもらうよ」
「…………ぁ」
そっか……。
ボク捕まるんだなと悟った。
大好きな家族が死んだ。
恋心をズタズタに切り刻まれた。
もうなんでも良い。
ギフト管理局員の人がボクの身体を触った時であった。
「うわああああ!?」
「ぇ……?」
悲鳴を上げて管理局員の人が倒れた。
ボクも目を丸くし、他の管理局員が倒れた人に駆け寄る。
「お、おい……。中島が死んでる……」
「こ、こいつ……!?ギフトで人を殺しやがった……」
「じゃあ家族殺害も……?」
「こいつで間違いない!」
「え……?」
ギフト管理局の男5人がボクを犯罪者を見る目付きに変わった。
「ギフト管理局に子供が喧嘩を売る気かっ!?」
「お前っ、人殺しの味を覚えやがったなっ!?」
「ちがっ……違うんです!ボクは……ボクは何もっ……!?」
そのあとの出来事は泥沼だった。
被告人・三島遥香。
犯した罪。
三島雄吾、三島八恵、三島和馬、中島卓夫、元木春木、村瀬昇。
ギフトの使用で6人を殺害。
判決・極刑。
ーーーーー
「おーい、三島」
「は、はい……?」
ボクを明智さんが呼んでいる。
優しい彼の声にボクは反応する。
「じゃあギフトをコントロールできるようにしたかったんだが大丈夫か?」
「だ、大丈夫です」
なんか昨夜に見た夢と今日の出来事がデジャブになっていた気がする。
なんとなく、見たことある光景だなと思った。
「良いか三島。絶対に完全にギフトを遮断する行為をしてはいけない。俺の予想だけど……『エナジードレイン』が暴走する可能性が高い」
明智さんがなんの根拠もなく『エナジードレイン』が暴走する可能性を語る。
不思議とその説についてボクの心は強く肯定していたのであった。
そして、それがとても心強くて、安心感があって……。
明智さんの言葉を聞くと、とても暖かい気持ちになる。
†
病弱の代償というタイトルが付いている話全てが原作の流れになります。
今回は意図的に原作かクズゲスかぼかしていました。
遥香が幸せと日常の大切さに気付いていて、原作の流れを打ち切ってもうこれがクズゲスの展開にしてハッピーエンドにしようか悩んだのですが、心を鬼にして秀頼には外道になってもらいました。
全部原作秀頼の演技です。
秀頼から騙されてショックを受けた人は、身も心も秀頼の雌奴隷に調教されています。
気を付けましょうという注意喚起です。
第8章 病弱の代償編
第171部分 12、津軽円の本気
にて、
三島遥香は自身のルート以外では全く出番はないのはここで逮捕されているため。
秀頼の介入のせいで人生が狂います。
また、
第181部分 22、病弱の代償・自覚
にて、
秀頼がギフト耐性について1度も遥香に語っていないのに、彼女の口から『ギフト耐性』という単語が出ているので気付いた人なら原作世界に移行していたことに気付いていたかもしれません。
ピアスについては、
第6章 偽りのアイドル
第103部分 6、津軽円も覚えてない
ピアス穴が開けられないについて円に突っ込まれています。
もし、タケルが三島遥香と接点を持っていて遥香の好感度が高い場合は都合良くタケルがこの場に現れて遥香ルートが始まります。
タケルがギフト管理局の人へ遥香のギフトの危険性を語ることで逮捕を回避させます。
遥香ルートではギフト管理局員3人の命は助かりますが、遥香の家族は助けられません。
そこはもうタケル君が無能だからとしか……。
その後は
第170部分 11、佐々木絵美の末路C
へと繋がっていき、ギフトが暴走した遥香に触って絵美が死亡します。
この辺りは重複して冗長になるために、クズゲス本編では深くは掘り下げません。
あくまでこうなるとだけ覚えていただくと幸いです。
共通ルートの三島遥香の末路はメタフィクション世界ではゲームに収録されておらず、小説版で語られている真相です。
※他のルート、続編では全く遥香の存在が語られないためにゲームしかプレイをしてない人でも死んだか逮捕されているということを察することが可能。
※小説の発売がセカンドの発売前であったので、セカンドのヒロインを隠す目的もあり詠美の出番はなく、美月と永遠などの人間関係も秘匿されてました。
※三島遥香に友達が2人できたと地の文で触れられた程度で、美月と詠美は小説版では未登場。
小説の内容は秀頼と遥香と家族のやり取りがメイン。
※この内容は遥香ルートの内容を収録された小説の書き下ろしとして10ページほど掲載されました。
※数少ない遥香ファンは共通ルートの扱いの酷さに激怒し、明智秀頼がヘイトを稼ぎました。
※ただ家族と遥香のやり取りをきちんと描写をしたことは称賛されています。
※遥香ファンにヒデ×ハルのカップリングを勧めるとぶち切れます。
※『悲しみの連鎖を断ち切り』のスレ内では理沙ファンは純粋に妹萌えの人が多く、遥香ファンはあっさりした人が多く、ヨルファンは声がでかいオタクの人が多く、美月ファンはお世話されたい人が多く、永遠ファンは熱狂的でキ●●●な人が多いと言われています。
※タケルファンは影が薄く、円ファンは変態なファンが多く、美鈴ファンは病んでると言われ、絵美ファンは幻の人扱いされて、秀頼ファンは雌奴隷or頭タケル扱いされてました。
※秀頼を擁護する書き込みがあると『お前秀頼の雌奴隷かよ』or『お前の頭タケルかよ』のどちらがレスされます。
※光秀君は前者側でした。
光秀君は小説を読んでいますが、来栖さんは小説を読んでいませんでした。
章のタイトルが話に挿入された=原作という法則になっています。
鳥籠の少女、偽りのアイドル、病弱の代償などなど……。
今後もこの形で連載していきます。
次章はおそらく順番的に『月と鈴』になる予定ですが、話のタイトルに『月と鈴』と付いていたら原作時系列として読んでしまって構いません。
【原作SIDE】も表記する予定。
多分もう騙す意図の話はしません。
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