5、地雷
「なるほど、なるほど……」
「お互いに同じ世界からこのゲームの住人になったみたいね」
「俺だけこの世界に来たのか、とも思ったがもしかしたら俺ら以外にも、元メタフィクションの住人の奴も存在の可能性はあるな」
「そうね。関係ないけど急に『メタフィクションの住人』とかいう単語が出て驚いたわ」
「じゃあ横文字NGだね」
川を眺めながらの情報交換は終わった。
お互いに惨劇回避という目的のために考察などを時間をかけてする必要がありそうだ。
……というか、あれ?
なんか似た会話をどっかでしたことあるな?
「私たち以外の元メタフィクションの住人を見つけたらお互いに報告し合いましょう」
「わかった。関係ないけど急に『メタフィクションの住人』とかいう単語が出て驚いたぜ」
「じゃあ横文字NGですね!それでは、またお話をしましょう」
「そうだな」
気にくわない女だが、重要な存在であることは間違いなさそうだ。
お互い様であるが。
というか、やっぱり聞き覚えのある会話な気がする。
んー、多分かなり前。
「そういえば、ずっと気になっていたことがある」
「何かしら?」
「元の世界でも女なんだよな?」
「そうですよ」
「……『悲しみの連鎖を断ち切り』って萌えゲーだけど全部したんだな……」
「…………」
女の子とイチャイチャワイワイするギャルゲー『悲しみの連鎖を断ち切り』シリーズ(言うほどイチャイチャしてかな?)。
俺の知り合いの中でもこのゲームをプレイしている女子とか聞いたことなかったので結構驚いている。
「どうでも良いでしょ!同盟は組んだけど、私の中身にまでは干渉しないで!」
「え?ど、どうしてキレたんだよ……?」
「そんなこと言ったらあんたは萌えゲーしていたオタってことよね?」
「はぁ、それは否定しないが……」
それ以外何者でもないが……。
「さよなら、デリカシー無さすぎて最悪。さぞモテないキモオタ人生だったんでしょうね!」
「否定はしないが……」
「ポジティブムカつく!帰る!」
「?」
急にヒステリーを起こして走り去っていく津軽。
あんなにキレる意味がわからん。
オタ同士なら語り合いたかっただけなんだが……。
「嫌われたな……」
なんかヤバイ地雷を踏んでしまったらしい。
オタク隠してた系女子なのかもしれない。
原作の魅力について語り合える仲間が増えたと思ったのに残念だ。
「帰るか……」
1人で河原で黄昏るのも良いが、時間の無駄なので帰ることにする。
川を抜け出し家に向かっていると帰宅途中の絵美を発見した。
「おーい、絵美!」
「あっ、秀頼君」
気付いた絵美は足を止めて、俺は走って絵美のところへたどり着く。
「もう、なんで今日は一緒に帰ってくれなかったのー?」
「朝に、テレビで河原にツチノコが出たとかニュースになってたから探してた」
「もしかしてツチノコ見つかった!?」
「いや、ツチノコは見付からなかったけど学校でドラゴンは見付けた」
「ドラゴン!?凄い!見たい、見たい!」
「じゃあ明日だな」
明日俺が出会ったシスコンドラゴンでも紹介してやろうと思った。
というか、ツチノコもドラゴンも疑わない純粋さが眩しい。
「本当に絵美は可愛いなぁ」
「えへへへ」
絵美の頭を撫でながら、この子を悲劇に巻き込ませるものかという想いが溢れ出す。
いつの間にか、絵美という存在も俺にとって妹みたいな存在になっていた。
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