6、佐々木絵美の末路A

わたしはその日、お母さんに引っ越したばかりの家を片付けるから少し出かけていなさいと言われていた。

歩いてすぐのところに公園があるから、そこで時間を潰して欲しいと。


前の住んでいた家には、公園なんて無かったからどんなものなのだろうとワクワクしながら向かっていった。

この日、わたしの人生が大きく変わることも知らずに……。


公園には1人ブランコに乗った、年の近そうな男の子が居た。

近所の人だとしたら仲良くなりたいなと思いわたしは近づいていった。


「あ……、こんにちは……」

「……」


お母さんから、人と会ったら挨拶はしておきなさいと言われており、それに従って挨拶を交わす。

その男の子は無言で顔を上げた。


「ちっ、うっぜぇな」

「……ご、ごめんなさい」


ものすごく雰囲気の怖い男の子であった。

このままここにいると酷い目に合うかもしれないという恐怖が頭全体に広がっていく。


その男の子は突如立ち上がり、わたしを睨んで口を開く。


「【お前、今この瞬間から俺の奴隷になれ】」

「……はい」


奴隷、意味はわからなかったけれど、身体がなんとなくその意味を理解してしまっていた。

わたしの意識はそこで死んだ……。



―――――



「同じクラスの『十文字タケル』、あいつの弱点になり得る情報はいくらでも入手してこい」

「はい」


わたしは、明智秀頼という人の奴隷。

口は動くし、身体も動く。

ただ、わたしの意思でアクションを起こすことができない。

テレビを見ている時みたいに、自分の身体が勝手に明智秀頼の言うことだけを聞かされるのだから。


睡眠時間を取る暇もないまま、十文字タケルという男を尾行する。

別の日にはその妹の十文字理沙という女を尾行する。

その別の日にはまた違う女の人の尾行をする。


友達の振りをする。


バケツで水をぶっかける。


スカートを脱がされる。


絶対に秘密と言われた約束を明智秀頼に堂々と情報を明け渡す。


明智秀頼のアリバイ工作をさせられる。


上履きをゴミ箱に捨てる。


カッターでノートや教科書をびりびりに破り捨てる。


鍵を盗み出し、その鍵を複製させられる。


問題のある家族構成を調査させられる。


宿題を全部投げ渡される。


唇を奪われる。


■■■■■■


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◇◇■□◆■◇


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―――――



「っ!?え?」


ある日、突然わたしの意思が復活した。

ようやくずっとテレビを見ていたような感覚もなくなり、『自由』という感覚がわたしに戻ってきた。

約10年振りくらいの感覚。


でもよくわからないのが、川?みたいなところにわたしと複数人の人物が視界に広がっていた。


「ちっ、なにやってやがる!?【絵美!タケルを拘束しろ!】」

「は、はいっ!」


取り戻した自由の感覚をまた失い、わたしはよく知らない男の人を捕まえようと身体に触れる。


「え?だ、誰?……どういうこと?」


この男の人は誰だろう?

わからない、いままでわたしがどうやって生きてきたのかもよくわからない……。


「絵美ぃ!?」

「ひい!?だ、誰ですか!?」


なんとなく覚えがある人。

あの日、公園でわたしの意思を奪った男の子の面影が残った男性に馴れ馴れしく名前で呼ばれて恐怖の感情が昂った。

気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い。


知らない人に馴れ馴れしくわたしを呼ばれるという行為そのものに嫌悪感がすごくなり、全身に鳥肌が立つ。


逃げないと。

お父さん、お母さん、助けて!!


「【絵美!!川に飛び込んで死ね!!】」

「なっ!?秀頼、お前っ!?」


もう一人一緒に居た男の人なら信用できると思った。

彼と一緒に居れば、わたしが操れることはないんだと本能的にわかった。


けど……。


「い、いや……。な……、なんでそんなっ……」


身体が思った方向と違うところへ足が向く。

身体が飛び、川の中へ頭から落ちていく。


「◇●◎■●■■■◇、ッ◇■■●」


抗うことすらできなくなり、そのままわたしは完全に意識を突き放した。


ゆるさない……!!


明智秀頼という名前に嫌悪感しか沸かない。


ゆるさないゆるさないゆるさない!!


もし、次に出会うことがあれば、、、














ころしてやりたい。



―――――



「あれ……?」


朝起きると、目に涙が溢れてきた。


何か怖い夢でも見ていたのだろうか?

まるでわたしが殺さるかのような恐ろしい幻想。


「なんとなく夢に十文字君が出ていたような気がするけど……」


最近知り合った秀頼の親友を自称する男の子。

なんだろう、夢を見る前よりも彼が頼もしい気がする。

なんでそんな感覚を持ったのだろう?


「どうせだったら秀頼君と一緒になんかする夢とかだったら良いのになぁ……」


秀頼君と彼女になってキスとか?

無理矢理唇を奪われるとか?


「……いいかも」


お母さんがよく見ている恋愛ドラマの影響か、すぐ秀頼君と重ねちゃったりしてしまう。


『絵美ー?、そろそろ準備しなさーい』

「わかったー」


今日も日常が始まるのであった。

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