戦国時代の槍使いのおじさん、イケメン高校生から逃げれる?

水瀬希星

第1話 目が覚めたら、令和だったべい! 

 ペシーン! ペシーン!


「アァ、いたっ! いたいべいぞっ!」

 だ、だれだべい? おれの月代さかやきがみかしらあながちにぼうでひったたくやつは…?

 おれはぼけまなこの目をふぁんぐぁんふぃらいたべい。すると、おれの目のまへに、一人ふぃとりよわひとせばかりなるをとこが、わうごといかりのぎゃうさうで、立っていたべいぞ。

 をとこたけろくしゃくばかりにて、かしらの毛をことごとりたるやうなれば、ながら寺のそうのやうにどくんだやうなるかほちのをとこだべい。やまでらそうへいか?!

「だ…だれだべい? 寺のやまぼうか?!」

 そうのやうなるをとこしろぬのぼくひつで、『吉田高校 剣道部』となむしょされたるそでみじかうすごろもて、左手ゆんでに『ふぉん』と書かれたるふぉんを持ちて、白粉おしろいのつきたる右手めてに、白きくゎいの色をしたるちいさ丸棒まるぼうを持っているべい。

「吉田のかうかう? つるぎみち… スハヤッ!!」

 おれは、きと、そうこしを見たべいが、やつこし脇差わきざしかたな小太刀こだちさず、丸腰まるごしだべいぞ。けだし、寺のそうか… とにかくに、おれはあんしたべい。

「おのれ…何者なにものだべい? てきか?」

 しかして、そうが口をふぃらいていはく、

「ハァァァー?! オレは、ほんせんせいだ! オレのじゅぎょうねむりするせいは、ぜんいんオレのてきだ!! まったく、なにボケてる…」

「『ふぉんのせんせい』? あんだそれは…? むろまち殿どのくゎんじんか? うん? あれ? あん……? あ~… あ~あ~あ~」

 おれは、おれのこえが、うらわかじふななとせばかりなるをんなのやうにへんしたることに、今、やうやづいたぞ。

「お、おれのこえが、をんなこえになったべい! あんとしたこんだぁぁぁ?! もしや?」

 こころみに、おれはおのむねんでみんとす。

「おぉぉ、むねがあるべい! うおぉぉぉ、たわわにみのりたるあきづきかうのやうだ! ワハハハッ! あんてこんだ!!」

 秋のふぉうじょうよろこびもつか、おれはふゆ吹雪ふぶきごとく、きつかんがしたべいぞ…

「ハヘッ? も、もしや?!! スハヤッ!!」

 おれは、おのまたを、でんこうせっのごとく、いそさわったぞ。

「な、い?! なにかんべい!! あ、ああ、あんとしたこんだァァァ?!!」

 おれはきょを感じたべい… そも、おれにはどくかんべいこんだし、これもふぉとけみちびきだ! 是非ぜひなきことと、あきらめんべい… れども、またのうちがさびしいこんだ…

しょぎゃうじゃうだべい…」

 おれは、あたりをキョロキョロとまわしたべい。

 さんじふじゃうばかりなるにて、かべ漆喰しっくい白壁しらかべのやうなりて、かくまどにはふぃかりけたるいたがあるべい。けんろうしろろうかくか? まどそとには、うつくしきりゃくいんやまなみせいてんそらが見えべい。まへいたかべにはくろかべがありて、そこにしろで次のやうなる文字ぞ書かれたる。


 日本史 五月十五日 小テスト

 出題範囲: 安土桃山時代

 提出課題: 織田信長と仏教とキリスト教について、レポート A4、1枚


 このしろろうかくうちるは、そうのやうなるとせばかりのをとこをば『ふぉんのせんせい』となん言いけるものほかとしころ十七歳じふななとせばかりなるなんどもがじふにんと、をのこどもが十六人じふろくにんなり。

 大人おとなしきげんぷくかんべいか、月代さかやきがみりたるなんは一人だにし。をのこどもは、いとみじかかみ乙女をとめれば、すいはつ乙女をとめり。れども、かみの色が黒いむすめもあれば、くりいろむすめもありて、みないちようにならざりけり。

 たるころもは…ふぁかまにあらず。白きうすぬのどうて、足には…なんまうすべきか…? とにかくに、みやこらくちゅうでも見たことなきころもだべい。

「少なくとも、むろまちではかんべいが…」

 そのなんどもとをのこども、みないちだうにおれをながめたり。

此処ここは、何処いづこだべい?」

 すると、なんどもとをのこどもが、ひきわらいやがったべい。

「ブッハハハハハッ! ここは、いづこってw!」

沙由梨さゆり~。めっちゃウケんだけどw!」

 その時、おれのふたしゃく(60cm)ばかりとなりづくえにおるべいなんが、おれをつめていはく、

沙由梨さゆり? どうした? へんゆめでも見たか?」

「さゆり? おれがは、やり使つかいのやりもん…もとい、一利休いちのりきゅうだべいぞ!」

「やりえもん? いちのりきゅう? なんそれ? あたらしいBL(ビーエル)の設定せってい?」

「び… び、びび… びいえる…? あんだ、それ?」

「『ボーイズラブ』って、沙由梨さゆりが俺に教えてくれたし。あっ、ゴメン… コレ、ないしょだっけ…」

 おれはぜんとしたべい… なんかたごんは、ふぁなはかたげなこんだ… びいえる… どこのくにふぉうげんだべいか?

 せつ、おれはづいたべい!

「ハッ! もしや…ここは極楽ごくらくじゃうだべいか? おれはをんなとして、極楽ごくらくじゃうわうじゃうしたべいか? あぁ、そうだべい! おれは、をんなとして、極楽ごくらくじゃうに」

 しかして、なんあをざめていはく、

沙由梨さゆり… ぼけんのも、いいげんにしろって。吉田村ココ極楽ごくらくじょうわけねーだろ?」

 して、『ふぉんのせんせい』が黒き板のまへかへりて、おれを見つめていはく、

「では、日本史のきょうしょの59ページの一行目から、𠮷よし沙由梨さゆりさん、読んでください」

「あんだ? おれか?」

 すかさずなん、おれのづくえうへにあるふぉんりゃうをサラサラとめくりて、おれに微笑ほほえんだべい。

沙由梨さゆり、ここから読んで! ドンマイ!」

 なんきたるふくろつつまれたるにぎめしを、ドンといたべい。

「ドンまい… これが極楽ごくらくじゃうめしだべいか?」

「コ、コンビニのうめしおにぎりだよ…」

「こんびに… こん…」

 こんじきうつくしきあまのこんだべい。けだし、きっしゃうてんにょこんじきぞうか…

 しかして、極楽ごくらくじゃうらしにれんがために、おれはふぉんりゃうかれたる、きよらなる文字を読み上げんとす。むかしやまでらてらで、『ていきんおうらい』と『ろん』と『せんもん』をしゃうどくしたべい。ふぁや、この極楽ごくらくじゃうごんれるべいぞ。

 して、おれは『ふぉん』に書かれたるしんしょの文字を、うららかなる乙女をとめこえもてどくしょうしたべい。

てんしゃう十年じふねん六月みなづき二日ふつか… あん? てんしゃうって… あんのこんだ~?」

 すると、けんろうしろろうかくうちりて、各々おのおのせるなんどもとをのこどもが、づくえをひったたきつつ、いちだうふぁらそこからわらひやがったべい。

「ブッハハハッ! いきなり六月ろくがつ水無月みなづきとか、くさえるしw」

「フハハハ! はらがもうw もうギブっす! ギブっす!」

「ウフフ。沙由梨さゆり~、さっきから、『あんのこんだ~』って、なに? めっちゃ、ウケるんだけどw」

「それな。今日から、うちの村で流行はやるっしょ。『あんのこんだ~』」

「トレンドじょうしょう一位! 待ったなしw!」

 して、『ふぉんのせんせい』がいはく、

𠮷よし~。そこ、てんしょうな。て・ん・しょ・う。ちなみに、てんしょうじゅうねんは、1582年な。はい、続き読んで~」

 てんしゃう…? そんなげんぐゎうあったべいか? そのうへせんひゃくはちじうねん? とにかくに、今日けふは、永禄えいろく七年しちねん七月ふみづき十日とをかだべいぞ。

 おれは、せいれいなるこえもて、ふたたび、『ふぉん』をどくしょうしたべい。ちなみに、おれはしんしょより、そうしょぎょうしょが好きだべいぞ。とくに、わうそうしょてんいちだべい。

てんしゃう十年じふねん六月みなづき二日ふつかのまだらぬうちに、あけみつひでぐんぜいかつらがわわたって、ふぉんのうりすることをぜんぐんげた。「かたきふぉんのうにあり!」と」

𠮷よしてきな」

「ブッw!」

「そこ、ぜってぇてきだろw」

、ウケねらってる?」

「てゆっか、マジで、そのキャラへん、ぶっちゃけどうしたん?」

「うん。うちもしんぱいになってきたレベル」

 なんどもとをのこども、たがいに見かはして、おれのどくしょうあざわらいたり。むかしのおれならば、おれにけんくゎこうろんをしかけたり、ちょうしょうしたべいをとこどもは、かたでもふぁたしたべいぞ。まぁ、をのこわらわには、あに、手を出さずだべい。

「「てきふぉんのうにあり!」と。そして京都みやこり、ふぉんのうふぉうして、ついにらんにゅうした。あけみつひでふぉんこされて、信長のぶながやりをとってたたかうも、最期さいごふぉんのうふぃふぁなってぐゎいし……」

 おれは… おのが手がわなわなとふるえたるをくゎんじたべい…

𠮷よし、どうした? 次を読め~」

「あんだと…? 信長のぶながかう洛中らくちうふぉんのうみまかりけるだと…? あの桶狭間おけふぁざま駿河するが今川いまがわぜいったべい信長のぶながかうが… 薨去こうきょしたべいだと?」

 あんだと? あんだとぉぉぉ?! 此処ここ信長のぶながかうともあろうしゃうが、いのちとしけるだべいか? ここは極楽ごくらくじゃうぢゃかんべいか?

極楽ごくらくじゃうにあらざれば、ここは…何処いづこだべい… いな、ここは、いつのだ?」

 すると、おれのかたわらにせるなんが、まへゆびしていはく、

沙由梨さゆりこくばん。今日のづけって、今朝けさ沙由梨さゆりが書いたんだろ?」

 おれは前を向いて、くろいたみぎふぁししろで書かれたる文字を読んだべい。

れいふたとせ 五月さつき とを じき 𠮷よし沙由梨さゆり… れい? 今年ことしえいろくななとせだぞ」

 なん、ついにあきふぁてたるやうにて、いきをついたべい。

「はぁ… 沙由梨さゆりぼけるなって。えいろくってさ、のぶながとかがいた時代だろ? 今から四百年以上前だぜ。今さっき、じゅぎょうでやったばっかだし…」

「あんだと? 信長のぶながかうが、よんひゃくねんじゃうまへ?」

「今は、俺、よしざとさわらと、𠮷よし沙由梨さゆりがいる、令和二年だっての!」

「れ… れ、れれ…」

「令和二年。だぜっ!」

「「「れいねん…?!」」」


つづく!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る