山下藤子の引き伸ばし戦術


「さて、メイド長、ご感想は?」

「甘美でした♪それにイザナミ様のあの声を初めて聴きました♪」


「そうでしょう♪皆ね、夜伽の順を心待ちにしているのよ、それが伸びるとなるとね、分かるでしょう?」

「わかります!」


「今回は後始末を惑星管理局にまかせたから、他の方のうっぷんは惑星管理局が矢面よ♪女がらみで『百合の会議』に呼び出されると、ネチネチといびりまくられるのよ♪よかったわ、逃げられて♪」


 のんびりとイザナミさんとリリスさんがお話をしている頃……


「山下ハウスバトラー、三軍統合司令部から、ソロモン宇宙の探査が完了したと云ってきております」

「詳細な資料が添付されており、引継ぎを要求しています」


 今では惑星管理局の次席に収まっている、ソフィア・ペロフスカヤさんが報告にきました。


「誰の名前?」

「イシス様です」


「……おかしいわね……ミリタリーオフィスのハウスバトラーであるガブリエル様をとばしてイシス様ね……」

「悪いけど適当な理由をつけて受け取りを伸ばしてくれる?少し裏を取って来るわ?」


 山下藤子さん、切れ者ですからね、懇意にしているヴィーナス・ネットワーク・レイルロード物資補給担当部長である、景山響子さんに会いにいきました。


「あら、珍しいわね、どうしたの?」

「少し教えていただきたいことがあるのです」


「なにかしら?機密に関することは喋れないけど」

「それで構いません、実はソロモン宇宙の事なのですが、ステーションは作られているのですか?」

「ああ、そのことね、惑星世界管理局としては気になるわね」


「こんど簡易鉄道が敷設されることになってね、ソロモン宇宙の出口にアヒノアム・ステーションと、その先にリンドウ・ステーションが設置されたのよ」

「簡易鉄道としても『ステーション・フルタイム施設』が設立されますよね」

「そうよ、レイルロード・オートレストランなんか作ったわよ」


「……」


 クスっと笑った景山響子さん。


「大体の事は想像出来るわよ♪」

「いまね、リンダウ・ステーションの拡張計画が持ち上がってね、なんでも女奴隷を山ほど引き取ることになったとかの話を、小耳にはさんだわよ♪」


「あそこの女性の人種的な特徴として『巨乳』らしいわよ、それもかなりの美人さんぞろいらしいのよね、設立準備に訪れたうちのコニー・アルバーンが云っていたわよ♪」


「これでいいかしら♪貸し一つよ♪」

「ありがとうございました、危うく『百合の会議』で吊るしあげられる所でした」


「誰かが『ババ』を引くのだけどね、この『ババ抜きゲーム』は♪」

「そうなのですよね、大体は『ババ抜きゲーム』にからきし弱いヴィーナス様が引くのですけどね……助かりました」


 物資補給担当部より戻った山下藤子さん、ソフィア・ペロフスカヤさんを呼び、

「どうも、このような話があるそうよ、引き継ぐと例の『百合の会議』が待っていそうよ」


「まったく、イシス様は姑息なのだから……」

「でしょう、だから慌てて引き継ぐことはしない、書類の不備とか担当者の病欠とか、できるだけ伸ばすのよ♪」

「分かりました、ソロモン宇宙の女たちの件が表に出るまで、引き伸ばして見せます!」


「お願いね、うっかりすると次席のソフィアさんも並んで被告席よ」

「全力で回避したいので、とことん抵抗して見せます!」


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