第14話 アニ、盛大に勘違いをする
「……ひっ……あぅっ……ひゃんっ……」
「アニ様!」
「――――――はっ!」
目覚めると、外はすっかり朝になっていた。
オリヴィアが心配そうに僕のことを見ている。
「随分とうなされていましたが……大丈夫ですか……?」
「う、うん……へいき」
……未だに耳のあたりがゾワゾワするけど。
僕は、耳の無事を確認しながら起き上がった。
今は誰にも触られたくない気分だ。
「……それでは、これから私は出かけます。アニ様は、なるべく危険が無いようにお過ごしください」
そんなことを思っていると、唐突にオリヴィアが言った。
「出かけるって……どこに?」
「はい。このままでは、私のお金も底を尽きてしまいますので、日雇いでメイドを募集している仕事を探そうかと」
「そ、そっか」
「そうしてお金を貯めて、ゆくゆくはこの地を離れ、静かな場所に家を借りて二人でずっと一緒に暮らしましょう!」
目をキラキラと輝かせながら遠くを見つめるオリヴィア。
……完全に自分の世界に入っているみたいだ。
「行ってらっしゃいオリヴィア。……お仕事見つかるといいね」
「はい。……その……ですのでアニ様には寂しい思いをさせてしまいますが……」
不安そうな顔で僕のことを見るオリヴィア。
流石に、これ以上迷惑はかけられない。
「大丈夫だよ。僕だってもう大人だし、一人でも(お仕事探し)出来るからさ」
「そう……ですか。それならしっかりと(お留守番を)よろしくお願いしますね」
「任せて!」
僕がそう言うと、オリヴィアは安心した様子で部屋を出て行った。
――さてと、僕も早くお金を稼いで、オリヴィアに楽をさせてあげないと。
それに……
(レス……ター……。レスターか……ケケケ、あれは大仕事だったなぁ…………)
僕が昨日消したあの男、間違いなくレスター家の――父さんと母さんの暗殺に一枚噛んでいる。
今ここで闇の中から解放して問い正すことも出来るが、ほぼ確実に魔法の影響で精神が崩壊しているし、何の情報も得られないだろう。
それに、部屋の中とはいえ白昼堂々と闇属性魔法は使いたくない。
とにかく、あの男に裏で何者か……おそらく貴族の人間が情報を流し、邪魔な相手を消させていたのだ。
そして、現在はその標的がヴァレイユの妹達に変わっている。
このままでは、メイベル、ソフィア、エリーの三人が危ない。
一刻も早く妹達をつけ狙う変態貴族を見つけ出し、葬らねば。
……そうと決まれば、僕はこんな所でのんびりしている場合ではない。
偉くなってこの国の貴族達の社交界へ潜入し、情報を集めて、僕の家族を殺し、更には妹達までも手にかけようとしている奴を突き止める。
これからはそれが僕の生きる目的だ。そうしたら、レスター家の再興も出来るし、一石二鳥である。
……でも、どうすれば偉くなれるんだろう?
何の後ろ盾もない人間が、金と権力の両方を手に入れる方法といえば……
「……やっぱり、冒険者かな」
確か、冒険者になって一定の功績を残すと、国王から勲章を授かる事が出来たはずだ。
だから僕みたいなはみ出し者は皆、冒険者になると昔読んだ本に書いてあった気がする。
「よし、そうと決まればさっそく出発だ!」
かくして、僕は冒険者ギルドへ向かうことにした。
*
「ええっと…………」
……完全に迷ってしまった。
宿屋の女将さんが親切にギルドまでの地図を描いてくれたんだけど……大雑把すぎて良く分からない。
「うーん……あそこかな?」
迷いながらもしばらく歩いていると、遠くの方の建物に人だかりが出来ているのが見えた。
皆、冒険者っぽい服を着ているし、あれが冒険者ギルドかもしれない。
この地図とにらめっこしていても分からないし、とにかく行ってみよう。
そう思って顔を上げて、一歩踏み出したその時。
――ぽふっ。
僕は何か柔らかいものと衝突して、前が見えなくなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます