第491話「謎は尽きない……」
リオネルは、レベルをふたつアップし、『40』とし、
あっさりとマジック2を消した!
立てたばかりの『当面の目標』を、『早くもクリア』したのだ。
すぐに、今夜?泊まるのに最適の場所を見つけ、キャンプを設営。
いつもの通り、本日ともに探索した仲間を食事を与えた後に休憩させ、
入れ替わりのメンバーを巡回に出した。
そして、明日のメンバーと自分の食事を作る。
警戒はしながらも、調理の手を動かしながらも、
リオネルは明日の探索について考える。
誰も聞いていないから、肉声でつぶやいてみる。
いつもの独り言である。
「冒険者ギルドの公式地図にも記載されているし、いろいろな人達から話を聞いた。地下141階層からは、どの時代が不明な、石造りの古代遺跡らしきものがあるって事だよな。隠し通路でつながる地下151階層以降とは、何かつながりはあるのだろうか」
「古代遺跡は全て、先行の冒険者達が散々探索したらしいから、何か大事なモノとかめぼしいモノが残っているとかは考えにくいけど、ひとつ、ひとつ、調べてみるか」
「そういえば……イェレミアスさんの痕跡は、……魔力残滓は途絶えてしまったな。フィールドを丹念に捜したけど、本人は勿論、手掛かりになりそうな遺失物も全然ない」
フォルミーカ迷宮の深層に棲むアールヴ、イェレミアスへ、
手紙を届ける頼まれ事がある。
フォルミーカ地下街の片隅ににある古い造りの地味な魔道具店、
クピディタースの店長で、元冒険者の魔法使いボトヴィッド・エウレニウスから依頼されたものだ。
「ボトヴィッドさんには
ここで、ふと、リオネルは……
地界王アマイモンの愛娘、地の最上級精霊ティエラの事を思い出す。
地属性にひもづく転移魔法は、ふんだんに行使しているが、
ここしばらく『攻防たる地の最上位魔法』を使ってはいない事を、
思い出したのである。
……ズバリ『剣山破砕』と『大地の束縛』だ。
こらあ! リオったら!
転移魔法だけでなく!
もっと! もっと! もっと!
地の魔法を使いなさいよ!
しれっと現れ、腕組みをし、目を吊り上げたティエラ様から、きつく言われそうだ。
ティエラ様始め、精霊達を怒らせるとすんごく怖そう。
苦笑するリオネル。
地、風、水、火……
4大精霊は、自分の属性魔法を優先して使って欲しいと主張する。
全ての属性魔法が行使可能なリオネルでも、使用頻度の高さが、
精霊達がこだわる部分なのである。
やがて、交代したメンバー。
ケルベルスの弟魔獣オルトロス、ミニマム竜に擬態したフロストドレイク、
魔獣アスプ20体は戻って来た。
リオネルは、用意していた食事を彼らへふるまい、
その後、明日の打合せをし、寝袋へ入り、就寝したのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
翌朝もリオネルは早めに起床。
身支度をし、食事をし、キャンプをたたみ、出発する。
立てた今日の目標は、地下141階層へ降り、その141階層を抜け、143階層クリアまで、3階層クリアを目指す。
ちなみに次のレベル目標は『50』
5階層クリアからダウンしたのは、やはり古代遺跡が気になるから。
じっくりと時間をかけ、調べてみたいと決めたのである。
歩きながら、リオネルは記憶をたぐった。
……ボトヴィッドもこの領域で、至宝『ゼバオトの指輪』を発見し、持ち帰ったと言っていた。
彼自身は、『ゼバオトの指輪』だと認識してはおらず、
たいそうなお宝レベルと思っていたのだが。
ここで疑問が生じる。
先行の冒険者達が散々探した後なのに、何もないはずなのに……
なぜに『ゼバオトの指輪』があったのか?
リオネルの推測たる答えは、いくつかある。
誰かが故意に置いた。
指輪を所持していた魔物が、隠した。
それとも、指輪が自らの意思で、その遺跡へ赴いた。
ここで新たな疑問も湧く。
ボトヴィッドを導いたのは、宝箱を開けさせた上、地上へ帰還する為に?
そして、ゆくゆくは、リオネルと邂逅する為に?
謎は尽きない……
しかし、不可思議な事ではあるが、
『ゼバオトの指輪』が他の宝石にまぎれ、古代遺跡にあったのは、
自らの意思だと、リオネルは考えている。
その後の、リオネルとの邂逅は、さすがに偶然だと思ってはいるが。
推測等、話が長くなったが……
つまり、141階層からある古代遺跡は、本当に不可思議な場所だという事だ。
正直言って、リオネルは少しわくわくしていた。
未知の古代遺跡探索が、良い気分転換になると考えたのである。
地下141階層への通路。
古ぼけた石造りの階段を降りたリオネル。
141階層へ着くと、高鳴る胸を押さえながら、第一歩を踏み出したのである。
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