第438話「困った時は、お互い様ですよ。袖すり合うも多生の縁って言いますし」

リオネルの魔法剣、風斬剣が電光石火で繰り出され、


ずっしいん! ずっしいん! ずっしいん! ずっしいん! ずっしいんん!

ずっしいん! ずっしいん! ずっしいん! ずっしいん! ずっしいんん!


魔法文字を斬られた銀製ゴーレム10体は、次々と崩れ落ち、行動不能となった。


「お、おお! リオネル君!」

「た、た、助かったあ!」


絶体絶命の危機ピンチ

疾風のように現れ、あっという間にゴーレム10体を瞬殺したリオネル。


負傷した8人の仲間を守りながら戦っていたバルトロメイと、

もうひとりのドヴェルグは、ホッとした表情を見せた。


しかし!

我に返り、ハッとしたバルトロメイ。


あたふたと、慌てて言う。

リオネルへ助けて貰った礼を言う余裕もないようだ。


「お、おいっ! は、早く! 次の敵が出る前に! ふ、負傷者へ! ち、治癒の魔導ポーションをっ!」


「は、はいっ! バルトロメイ様あ! た、体力回復と気付けの魔導ポーションも! 大至急準備しますう!」


改めてリオネルが見やれば……

傷ついた8人のドヴェルグは重傷者、中傷者が4人ずつ半々くらい。

出血が酷い重傷者も居る。


リオネルはゴーレムを倒しただけでなく、けが人の治療も協力する事にした。


「バルトロメイさん」


「な、何だ! 悪い! リオネル君! 礼なら後でする! 見たら分かるだろう?今、取り込み中なんだ!」


「ええっと……俺、治癒魔法が使えますから、けが人のケアにご協力します」


「な、何!? ち、治癒魔法が使える!? ほ、本当かあ!?」


「はい。全員へ、『全快』を使います。宜しいでしょうか?」


しれっと言うリオネルに、バルトロメイは大いに驚く。


「はあ!!?? ぜ、ぜ、全快ってええ!!?? 最高位レベルの治癒魔法じゃないかあ!!!!」


「そうです。じゃあ、行使しますね」


「あ、ああ!! 頼む!! 礼なら何でもするっ!!」


「わっかりました!」


頷き、微笑んだリオネルは、けがをし、唸っているドヴェルグ達へ近付くと、


「……じゃあ、どんどん行きますよ! 『全快』『全快』『全快』『全快』『全快』『全快』『全快』『全快』ついでに、バルトロメイさんともうお一方へも『全快』『全快』 ……はい、終了っす」


最高位レベル治癒魔法『全快』を10連発!


リオネルが放った、『全快』のとんでもなく強力な魔力が辺りに満ちた。


バルトロメイ達の減っていた体力が満ち溢れて来る!


折れていた骨が修復され、負っていた傷がふさがっていく!


痛みが消え、気力がよみがえる!


何と何と何と!

あっという間に、バルトロメイ達は、

ベストコンディション『以上』になってしまったのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


負傷が癒え、元気を取り戻したバルトロメイ達。


落ち着いてから、リオネルが事情を聞くと……

急襲して来たガーゴイルの大群を退け、8人が負傷した直後に、

銀製ゴーレム10体に襲われ、窮地に陥ったという事らしかった。


そんなピンチに、リオネルが颯爽と現れ、ゴーレムを倒し、

けが人の手当までしてくれた。


リオネルの底知れぬ実力に、バルトロメイ達は、しばし唖然としていたが……


ハッと我に返り、リオネルに対し、平身低頭。

感謝の気持ちを告げて来る。


「リオネル君! 何から何まで本当に本当にありがとう! もし君が助けに来てくれなければ、我々はここでたおれていた。いくら感謝してもしきれないっ!」


バルトロメイが口火を切ると、他のドヴェルグ達も次々と礼を述べて来る。


「ありがとうございます! 絶体絶命でした!」

「九死に一生を得ましたよ! ありがとうございます!」

「ありがとうございます! ぎりぎりで命拾いしました!」

「剣が峰に立たされましたよ! ありがとうございます!」

「ありがとうございます! 闇夜の灯火です!」

「干天の慈雨ですな! ありがとうございます!」


対してリオネルは、


「困った時は、お互い様ですよ。袖すり合うも多生の縁って言いますし」


そして、


「バルトロメイさん。とりあえず、地下80階層の小ホールへ戻りましょう。俺も同行しますから」


リオネルの言葉を聞き、バルトロメイは驚き、恐縮する。


「そんな! リオネル君は今日、地下90階層へ行くのだろう? 80階層では逆戻りとなってしまう。君の予定が全く変わってしまうよ!」


「あはは、全然構いません。今夜は80階層でキャンプします。予定は所詮、未定ですから。あ、それと俺が倒した銀製ゴーレム10体も差し上げます」


「おいおいおい! リオネル君! さすがにそれは受け取れんよ! あのゴーレムは君の戦果だ!」


「いえいえ、全然構いません。とりあえず、俺の空間魔法で一旦回収し、80階層でお渡ししますね」


リオネルはそう言い、


「さあ、ここに長居は無用、出発しましょう。今夜は俺が晩飯を作りますよ」


と、にっこり笑ったのである。

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