第331話「衝撃の発表が為された」
「リオネルうう!!」
「リオネル様ああ!!」
……果樹園を包んでいた白光が消えると、引き続き防護用の岩壁を生成するリオネルの下へ、ジェロームとエリーゼが駆け寄って来た。
白光に包まれるまで、ふたりは仲良く一緒に作業をしている。
ジェロームとエリーゼの手がしっかりとつながれているのを見て、
リオネルは慈愛を込め微笑む。
そんなリオネルへ、ふたりは迫る。
血相が変わっていた。
「おいおい、リオネル!」
「リオネル様!」
「お疲れ様です」
「お疲れ様ですじゃない! な、何だ? あの白光は!」
「一体何でしょう? あの白光は!」
手をつないでいるだけではなく、
ジェロームとエリーゼの息はぴったり合っていた。
見ているだけで微笑ましい。
ふたりの魂は、より近くなっているのが分かった。
リオネルは、心配せず安心するように告げる。
「大丈夫。邪悪なものではないですよ、果樹園へ活力を与える精霊の光です」
きっぱりと言い切ったリオネル。
対して、ジェロームとエリーゼは、更に追及する。
「邪悪なものではないだと? リオネルがやったのか?」
「精霊の光? もしや、リオネル様の魔法でしょうか?」
「いやいや俺ではありません」
と否定したリオネル。
少し迷ったが、
「植物の繁茂を司る地の最上級精霊のお力です。この果樹園へ祝福があったのです」
と答えた。
加護を与えたのはティエラであるが、
彼女の父たる地界王アマイモンを匂わせる言い方でもある。
「植物の繁茂を司る?」
「ノーム、ノーミードではなく、地の最上級精霊のお力ですか?」
補足しよう。
ノームは良く知られる地の精霊。
ノーミードは、ノームの女性個体である。
「はい、ノーム、ノーミードを統括する地の最上級精霊のお力です。果樹園に地の加護で活力を与えて頂き、良く実るようにして頂きました」
「おお!」
「成る程ですね!」
「はい! 魔法で生成したこの岩壁同様、地の最上級精霊のお力に感謝するよう、エリーゼ様から村民の方々にも宜しくお伝えくださいますか」
リオネルが言うと、エリーゼはジェロームと顔を見合わせにっこり。
「分かりましたわ! 村民達へ伝えます! ……ですって! ジェローム様!」
「ああ、リオネルの言う事は間違いないと思うよ」
とふたりで盛り上がり、更にエリーゼは、
「聞いてくださいな、リオネル様」
「何でしょう?」
「ジェローム様ったらね、あまりにも私の亡き兄アンリに似ていますから、村民達も凄く驚き、でもその後すぐに、全員と打ち解ける事が出来たのですよ」
エリーゼは、いかにも嬉しそうに言い、
「ね?」
とジェロームへ同意を促す。
「ええ! ですね!」
と、ジェロームも気安く返事を戻し、リオネルへ言う。
「何かさ……とても
そしてジェロームとエリーゼは、再び顔を見合わせ、
にっこりと微笑み合ったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
その後、果樹園、農地の整備、復興、新規の農地の開拓、畝づくり、植え付けの各手伝い、灌漑設備建設の協力に加え……
農地の防護壁の生成、城館の防護壁の生成等々の追加発注も多々あり、
リオネルとジェロームは、順調に『支援施策』を実行していった。
農地復興には、ティエラから授かった地の加護が、
リオネルにより行使されたのは言うまでもない。
エリーゼの言葉通り、作業を続けていくうちに、
アンリに酷似したジェロームは村民達と完全に打ち解けた。
そして、エリーゼと仲睦まじく、作業を続けたのである。
ふたりが仲睦まじく作業をするのを、完全に回復したエリーゼの父アロイス・カントルーブ男爵も慈愛を込め、見つめていた。
そんなこんなで、リオネルがゴブリンを完全討伐してから約1か月……
リオネルとジェロームが発注を受けた『支援施策』は全ての作業が終了した。
その間、リオネルとジェロームはレサン村とカントルーブ男爵家の城館を行き来したが、作業が進むにつれ、村と城館の様子はますます明るくなって行った。
ムードメーカーは、やはりジェロームであった。
ジェロームはレサン村の村民達だけでなく、カントルーブ男爵家の城館においても、
バンジャマン、従士長、使用人達と、打ち解けていたのである。
やはり、エリーゼの亡き兄アンリに酷似していたのが大きかったようだ。
そしてジェロームとエリーゼの仲といえば、ふたりきりで狩りに出かけたりして、
どんどん深まって行き、今や互いを想い人として、完全に認識するようになっていた。
その狩りの際は、鹿、猪などをびしばし! 仕留めて来て、
エリーゼ曰はく、ジェローム様の弓矢の腕は中々で頼もしい! と得意顔。
ゴブリンとの戦いの際は、村で留守番役を務めたジェローム。
ここで初めて、武道の腕が発揮されたのである。
ある日、ジェロームとエリーゼは、アロイス・カントルーブ男爵の書斎に呼ばれ……約2時間、3人きりで話し込んだ後……衝撃の発表が為された。
それはまさに運命の激変、ターニングポイント。
薄幸な人生を歩んで来たジェローム・アルナルディは、
遂に巡り合った想い人、愛するエリーゼとの婚約が確定。
彼女の夫としてカントルーブ男爵家の『入り婿』となる事が決定したのである。
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