第198話「勝って兜の緒を締めよ!」

オークカーネルをこぶし一発で倒した、リオネルの心の中で、

内なる声はまだまだ続いている。


リオネル・ロートレックは、規定値に達し、

『レベル18』に到達しました。


チートスキル『エヴォリューシオ』の効果により、


身体能力、五感が全般的に大幅アップしました。


体内魔力が大幅に増量しました。


魔力回復力が大幅にアップしました。


魔法攻撃力が大幅にアップしました。


物理攻撃力が大幅にアップしました。


対魔法防御力が大幅にアップしました。


対物理防御力が大幅にアップしました。


……内なる声から告げる『成長』の証はようやく終了。


リオネルは軽く息を吐き、前方を見た。


たった拳一発!


リオネルのワンパン一発で!

体長3m、体重は300㎏を楽々超える巨体を持つ、

オークの上位種オークカーネルの巨体が遥か後方へ吹っ飛んでいた


動けなくなった配下どもの伏す手前まで、ごろごろと転がったオークカーネルは、

ぴくりとも動かない。

……既に絶命しているようであった。


自分のやった事ながら、さすがにリオネルは驚愕した。


信じられない。


だが、オークカーネルに打ち込んだ拳の手ごたえははっきりと残っていた……


す、すっげぇ!!

な、何だよ、これ!?


こ、これが!?

『クリティカルヒット!!』そして『貫通撃!!』か!!


チートスキル『エヴォリューシオ』の効果と、

習得した破邪聖煌拳はじゃせいこうけんとの『派生』から習得したのか!!


『エヴォリューシオ』に大感謝だ!!

破邪聖煌拳はじゃせいこうけんを丁寧に手ほどきしてくれたモーリスさん!!

修行に付き合ってくれたミリアンとカミーユにも大感謝だなっ!!


内なる声の説明はなかったけれど……

何となく分かるぞ、このふたつの技のスペックが!


『クリティカルヒット』は……常に出せる技じゃない。

戦いの中で偶然、イレギュラーに出る攻撃力倍増の技なんだ!


そして、この技がもしもチートスキル『エヴォリューシオ』で『進化』すれば!

常に出せるようになるのも、俺には分かるぞ!

だが!

その為には、まだまだ修行が必要だ!


そして『貫通撃』は、敵の肉体を裂かずに、硬化した魔力で内面を撃ち抜き、

大ダメージを与える攻撃技なんだ!


両方の技もまだまだ『進化』そして『派生』する余地が、伸びしろが充分にある!


そしてそれらを今、俺はほぼ同時に使った!

だからオークカーネルは、あっさりと俺の右拳一発で、沈みやがったんだ!!


そして、『クリティカルヒット』『貫通撃』の衝撃が凄すぎたから、地味に思えるけど……『レベル18』になった事も素直に嬉しい!

ほぼ全ての能力が、またダダ上がりしたのと、

付随するスキルの補正で、戦える相手レベルの上限がまた上がったぜ!


「「「「おおおおおおっっっっ!!!!」」」」


圧倒的な強さを見せたリオネルを目の当たりにし、

ミリアンとカミーユ、そしてモーリスとゴーチェは、大きな歓声をあげた。


思わず自分へ駆け寄ろうとする4人の気配を感じ、リオネルはすっと手を挙げて制した。

「まだ戦いは終わっていないぞ」という意思表示だ。


リオネルの『制止』を見て、

「どうして?」という疑問と戸惑いの波動も追っかけ4人が放って来た。


だが「しばし待て」という意思で、リオネルは軽く首を横へ振った。


『究極奥義』ともいえるふたつの技を習得したリオネルであったが……

落ち着いて4人を制止するくらい、クールダウンし、気持ちが鎮まって来た。


後でじっくり、

『クリティカルヒット!!』と『貫通撃!!』を存分に試し、徹底的に訓練しよう。


勝って兜の緒を締めよだ!

ここは焦らず欲張らず……最初に立てた予定通りの戦法で行くぞ。


やがて、倒れていたオーク上位2種、オークオフィサー、オークソルジャーが、

続いてノーマルオークどもも頭を振り、ふらつきながら、ゆっくりと起き上がる。


オークどもを見ながら、リオネルの心は、

チートスキル『見よう見まね』で修得した、

じょうまじえず獲物を倒す『狼の非情』さが満ちて来ている。


悪いな……

お前達は、俺が成長するかてになって貰う

……貴重な『経験値』となって貰うぜ。


起き上がったオークどもの目の前には、リオネルにグーパンでぶっ飛ばされた、

オークカーネルの亡骸なきがらが横たわっていた。


きえおおおっっ!!??

ひえおおおっっ!!??


完全に事切れたリーダーに気付き、身て、大いに驚くオークども……


心配するな……

お前達のリーダーは一足先にあの世へ逝った。

お前達もすぐに追いつくさ。


ニヒルに笑ったリオネルは無言で、魔法杖を振りかざす。


『炎弾』を込めた魔法杖ではあるが……

この魔法杖は、違う使い方も可能だ。


単に魔法を円滑に発動する為、補助としての魔道具、

『発動体』としても使う事も出来るのだ。


つまり魔道具店において魔法杖へ込められた魔法『炎弾』を行使するふりをして、

全属性魔法使用者オールラウンダーに覚醒し、4大属性全ての魔法を習得したリオネルが、自身で魔法『炎弾』を行使するのだ。


このような策を弄するのは当然、リオネルの実力を見抜き、

チェックし、「貴族家を養子入れさせようとする」ゴーチェへの『対策』である。


今ここで、リオネルが全属性魔法使用者オールラウンダーと見抜かれるわけにはいかない。

絶対、強制的に『囲い込まれてしまう」


だが、折角『英雄の迷宮』へ赴いたのだ。

習得した魔法を実戦で行使しなければ修行にならない。


そのジレンマゆえ、リオネルが考え抜いて生まれた、苦肉の策であった。

当然、モーリス、ミリアン、カミーユには伝え、念の為、口止めしていた。


炎弾! 炎弾! 炎弾! 炎弾! 炎弾! 炎弾!


ぐっぎゃあああああああああああ!!!! 

ぎゃあああああああああああああ!!!!


魔法攻撃力が大幅にアップしたリオネルの炎弾は当初の3倍の大きさにもなり、威力も3倍に、温度も大幅に上昇していた。


猛煙に包まれたオークどもは、上位種ともどもあっという間に塵と化してしまった。


続いて、リオネルは葬送魔法『昇天』を発動、

倒したオークどもの魂を全て浄化したのである。

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