第133話「いきなり! クリティカルヒット!」
リオネル達は、全員で冒険者ギルド総本部の講座を受講。
びっしりと修行に
リオネルは、『召喚術』『付呪術』の基礎と応用。
モーリスは『上級打撃武器』の基礎と応用。
ミリアンは『打撃武器』『体術格闘』『水属性魔法』『回復魔法』の基礎を。
カミーユが特に頑張りを見せ、『シーフ』『迷宮探索術』『打撃武器』
『盾』『体術格闘』の基礎を。
更にミリアンとカミーユ両名が『サバイバル術』の基礎を。
全員、短期間で充分とはいえないが、たっぷりと『インプット』に費やした。
リオネルとモーリスは依頼を一旦断り、手配してくれたクローディーヌに深く謝罪した。
だがクローディーヌは事情を知り、笑顔で講座の申し込みと受講手続きに尽力してくれた。
そしてエステルも、ミリアンとカミーユの面倒を良く見てくれ……
ふたりは順調に予定を消化したのである。
またリオネルは講座の合間に時間を作っては、息抜きを兼ね、
ワレバットの街中、周囲を探索、調査した。
たいていはひとり。
たまにモーリスと、更にミリアンとカミーユも伴って全員で。
買い物もまめに行い、必要と思われる武器防具、道具、魔法薬、日用品などを購入し、自分ひとりの時は、誰も見ていない場所や自宅で収納の腕輪へ放り込んでおいた。
但し、時間がないので、無理はしない。
ワレバッドの街中はじっくりと見たが、あまり郊外へ足を延ばしたり、古代遺跡や洞窟には踏み込まない。
せいぜいワレバッド近くの町や村で人々の生活を見物したり、
同じく近くの森や原野において、下見としてオークレベル以下の魔物、動物をチェックして回る程度である。
この間、久々にチートスキル『見よう見まね』が発動。
『召喚術』を30%『付呪術』を10%、それぞれの基礎を習得した。
近くの森では、ひとりの時に、ムササビかモモンガらしき小動物を目撃。
またも『見よう見まね』が発動、能力を50%習得もした。
ムササビは、「身体にある飛膜で空中を滑空する」と本で読んだ事がある。
通常でも約20m、上手く風に乗れば100mも滑空するという。
アンセルムから貰った指輪、様々なスキルや動物の能力でビルドアップしているリオネルは……
更に身体が軽くなり、見えない飛膜を得たような感覚を覚えた。
その場で、怪我をしないよう注意した上で木に登って試し、見事10mの滑空に成功。
徐々に高さを上げ、何度も何度も何度も、楽しみながら修行した。
終いには誰も居ない草原で助走し、ジャ~ンプ。
ウサギの持つ跳躍能力で垂直に飛び上がる能力も、
度重なるレベルアップで著しく向上。
助走なしで、当初の2mから5m。
助走したら、何と!
約10mの高さまで飛び上がる事が出来た。
そして……
地上から10mの高さで風に乗り、猫の空中バランス維持と落下緩和能力も加わり、
何と何と!! 約40m以上を楽々と滑空し、着地する事が出来たのである。
誰か、リオネルとはかかわりのない第三者が見たら……
「絶対に人間とは思われない」であろう。
そして、数日後……ミリアンとカミーユが日々の勝手に慣れ、リオネル達全員の、
業務の担当者が正式にエステルとなった。
更に数日が経ち、事前にマルセルに一報を入れた上、1週間後、ホテルをチェックアウト。
賃貸契約した新居へ無事に引っ越した。
ギルド総本部の厩舎で預かって貰った馬は元気。
馬車もリオネル、ミリアンとカミーユの3人でピカピカに磨き上げられ、整備、点検もされていた。
そして……
4人が入った新居は、マルセルの手配でギルドの不動産部によりしっかりと清掃が為され、購入した荷物は家具を始め、全てが配達されていた。
引っ越し当日、各自は数時間時間をかけ、家具、荷物を整理し、配置。
ようやくひと段落ついたところで、クローディーヌから料理のケータリングが引っ越し祝いで届き、4人は夕食を兼ねた引っ越しパーティを開いていた。
乾杯し、4人は料理を楽しむ。
サブマスター、ブレーズの指示でクローディーヌが手配した料理と酒はどれも美味かった。
ちなみにミリアンとカミーユは年齢的に酒がNGなので果実ジュースである。
4人は各自の部屋もしっかり確保。
購入した家具を好みに配置した。
誰もが新居を改めて気に入り、上機嫌である。
当然、会話も弾む。
ミリアンとカミーユが、
「いろいろ『基礎』が学べて少し実践も出来た! でもまだまだ学びたい! 『応用』も、どんどん受けたい」
「そうっす! シーフと迷宮探索術の『基礎』はすっごく為になったっすよ! 更に『応用』を受けたら、一人前のシーフとして、やって行く目途が立ちそうっす!」
そしてモーリスも、
「ふむ、40の手習いも悪くない。メイスの破壊力が更に増し、フレイルの使い方も覚えたぞ!」
リオネルも完全とはいえないが、結果が出ている。
「『召喚術』は最終日に、やっと使い魔を呼ぶ事が出来た。本当に長かったあ! 10年以上も修行してダメだったから、とても嬉しかったよ。でも『付呪術』は……まだまだ、だなあ」
ここでミリアンとカミーユが突っ込む。
「リオさん、使い魔、何を召喚したの?」
「ぜひ知りたいっす」
「いやいや、ただの犬さ。心の内なる声に命じられ、『ケル』と名付けたよ。但し、変に貫録はあって、灰色狼みたいな大きい犬だ。まあ、連絡係くらいにはなるかな」
「さっすが、リオさん、ケルちゃん、見たいわ♡」
「そうっす、リオさん! ケルを、後で召喚して欲しいっす」
ここでモーリスが「すっ」と挙手をした。
重大発表があるらしい。
笑顔で頷くところを見ると、リオネルは『発表内容』を知っているようだ。
「うおっほん! 皆、良く聞いてくれ。我々の『初依頼』が決まった!」
モーリスはそう言うと、悪戯っぽくミリアンとカミーユを見つめたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
『我々の初依頼』とモーリスが言うのは、冒険者ギルド総本部から正式に発注を受けた依頼……という事である。
つまり、ミリアンとカミーユがギルド所属の冒険者として挑む、公式デビュー戦である。
ミリアンとカミーユは、キャナール村で結構な数のゴブリンを倒したが、公式依頼を受諾していないので、討伐料を受け取る事は出来なかった。
ふたりが、大いに残念がったのは言うまでもない。
現在、ミリアンは『レベル18』カミーユも『レベル15』であり、
エステルの手続きにより、ゴブリンとスライムの公式依頼を受諾する事が出来た。
ふたりは「さあ! 戦いはこれからだ!」と張り切って、腕を撫している。
「師匠! 依頼はどこかの村でゴブリン、スライムの討伐?」
「思い切りやるっすよ!」
しかし、モーリスは意味ありげに笑い、首を横へ振った。
「いや、違う。ゴブリンの討伐ではないよ」
「え? 違うの? ゴブリンなら戦い慣れていて、私とカミーユの公式デビュー戦にはちょうどいいと思ったのにぃ!」
「そうっす! ゴブリンなら、俺も楽勝! ……ではないけれど充分戦えるっす!」
「いやいや、今回の現場は……」
「現場?」
「ど、どこっす? どこへ行って戦うっすか? 師匠、教えて欲しいっす」
「うむ、現場はな、ワレバットの街郊外の王立墓地だ!」
「え? 王立墓地?」
「墓地!? ま、まさかっすう!」
「ああ、カミーユ、その『まさか』だ! エステルさんのご手配で、私達4人は王立墓地管理人の臨時代行を務める!」
「えええっ!? 管理人の臨時代行ぉ!?」
「うむ! 依頼内容はな、墓地に出現する人外の『討伐』『除霊』『浄化』つまり! 今回戦う相手は
公式デビュー戦の相手が、
ミリアンとカミーユは、全くの想定外だったらしい。
「わあおっ! いきなり
「ぐっはあ! クリティカルヒット! を受けたっすぅ!」
「おう! 気合を入れて頑張ろうなっ! 呪われるんじゃないぞ! ははははははははは!」
大きなショックを受けるミリアンとカミーユを見て、モーリスは高らかに笑っていたのである。
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