第45話
屍同然の生身の人間達の間を縫って、定児の体を背負い連れていく。
きっとこいつらは指示する親玉の一声が存在しなければ指揮されない筈だ。
どちらにしろ、このままでは済ますものか。こいつらも含めて。
燃え立つ敵意を飲み込んだ堅い決意をしながら、忌まわしい祭堂に入ってきた扉を開けると、定児を背負ったまま一気に出口までめがけて走り抜ける。
流石に背後の遠くから、何体かの俺を追ってくる足音が続いてきた。
追っ手は先程の信者達らしい。指令系統が甦ったか?
…………危ないな。それならば。
振り向きざま、連中の姿を確認すると、青森神主から渡された木彫りの指人形をポケットから手に取り、奴等に向かって投げ放った。
「頼む!!行け!」
たちまち紫の煙に巻かれて擬人の使役式神が人形より現れ出でた。
中に入っていたのは……疫鬼(えきき)!
「穢悪伎疫鬼(けがらわしきえやみのかみ)!」
調伏された鬼神が入っていた。
疫鬼の体は黒く、仮面を被った鬼の姿をし、頭から短い四本の角と、何本もの牙を口から覗かせている。
洞窟の天井近くまでの2m越すような体を取り現れ出でてきた、病魔をもたらす疫病神。
疫鬼は緑の毒のガスを口から放出すると、追いかけてきた信者達がドミノのように次々に倒れていった。
それから振り返らず最初の鉄の扉まで辿り着き階段を上がると、扉を開いた向こう側には林と風が広がり
…………!?
青森神主が苦痛の顔色で胸を押さえ座り込み、猪狩祐司が気を失い倒れていた。
「三人で中に入ってくれれば、中で三人とも潰す予定だったのにね、石狗(シーゴー)」
「ッ!見鬼姫……!!」
そこにはあの見鬼姫と、石狗と呼ばれた傍らに石のような防具の甲冑のような硬い甲羅で全身を覆われた、二本の長角を持った長髪の鬼がいた。
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