サブカルギルド 29
ひとまず、よくしゃべるようになった雪雲さんを含めた三人で公園を歩いていた。
国立公園なのだが、特別な施設があるわけではなく、大きな花園になっている。
様々な花が、様々な場所に植えられていて、時期的に咲いていない花もあったけれど、雪雲さんが完璧に補足してくれたので、まったく問題なかった。
そんな感じで、楽しんでいると、光里のスマホから着信音が鳴る。
少し待つと
「やっぱりかぁ・・・。」
という言葉に、風邪だろうかと疑う。
「雪さん、やっぱりあの三人、時季外れのインフルエンザかかってたよ。」
・・・こんな時期にかかるものなの⁉
「え、それって、大丈夫なの・・・?」
雪雲さんとともに動揺する。
「大丈夫大丈夫。あの子たち毎年こんなんだから。その時期にはかからないのにね。」
光里は笑いながら話す。きっと毎年、症状も軽いものなんだろう。
「それならまぁ、大丈夫、なんだよね?」
若干不安そうに聞く雪雲さん。俺もそうなる。
「だいじょぶだいじょぶ、みんなどうすれば知ってるし、食料も問題ないらしいから。」
別の心配はあるけれど、まぁ、大丈夫だろう。
「そうなんですね・・・。次会う時が、少し楽しみです。」
そんな雪雲さんの言葉を聞いてか、光里はしばらくあの三人の話を続けていた。
昔から仲が良い事・言葉選びが悪いから勘違いされやすい事・一人減るだけでテンションが下がる事・苦手な食べ物がそれぞれ違う事などなど・・・。
自分は話半分で聞きながら、植物や空、風景と二人の写真などを撮って楽しんでいた。
あとで許可をもらわないとな。
1時間ほど歩き続けて、さすがに疲れたのでベンチに座って休憩をとっている。
「そうだ、二人とも、こういう写真撮ったんだけど、使ってもいい?」
一応個人がわからないように、逆光&後ろ姿で撮ったのだけれど、嫌な人には嫌だろうし・・・。
「私は良いですけど・・・。あ、代わりにちょっと撮りたい写真があるんですけどいいですか⁉」
雪さんが途中まで「まぁ、いいかな」くらいだったのに、急にテンションが上がってきた。
「うん?俺は構わないけど・・・。」
「それじゃぁ、光里さんと二人でベンチに座ってください!」
言われた通りにする。
「それでそれで、そのまま膝枕して下さい!」
言われた通りに・・・
「どっちが?」
「どっちでもいいですけど、しいて言えば両方です。」
この子恐ろしいな。
「光里は良いの?」
「私はまぁ、その、後で送ってくれるなら・・・。」
「もちろんですよ!人形じゃ試せない体位とかを見るための資料にしたいんです!」
・・・絵を描いてるのか。
「うん、分かった。協力するよ。」
そんなこんなで、しばらく言われるがままになっていると、雪雲さんが口を滑らせた。
「もういっそコスさせたくなってきたぁ・・・。あっ。」
まぁ、ここに来てるっていうことはそういう事なんだよね。
「いいじゃんコスプレ!」
光里さん⁉
急展開に驚きを隠せない。
「ね、やろうよ!できるならやろうよ!!」
好奇心が暴走してるので、光里の頭に手を置いて、ひとまずなだめる。
「面白いだろうけどすぐには「できるよ!」」
・・・雪雲さんは、とてもうれしそうな表情をしてこちらを見ていた。
見る人によっては、小さな子供が大好きなおもちゃを見つけた時のような目で。
あの後、既に撮り終えていた写真を提出してから三人で寮に戻ったのだが、さすがに、今日あったばかりの女子の部屋に入るなんて・・・。と断ったのだ。
コスプレ回避策だったのだが、いくつかの衣装を持って、自分の部屋にやってきた時には、あぁ、もう逃げれないんだな。なんて思ってしまった。
でも正直、かなり楽しかった。
最初こそ気が乗らなかったけれど、光里の楽しみにしているキラキラとした目には勝てず。仕方なく着てみると、思っていた以上に違和感が無かった。
女子二人もいろいろ着替えていて、見る度に服装が違って新鮮だったし、光里は特にかわいかった。
もちろん事故は起きなかった。なぜなら、俺が風呂場に封印され続けていたからね・・・。
鍵を開けるまで出てくるなと、光里お嬢様からの命令だったのである。
後悔したのは、スマホかパソコンを持ち込まなかったことくらいだ。
数日後、仲良さそうに4人で撮った写真と、4人でワタワタとコスプレしてる動画が送られてきたそうなのだが、なぜか光里は見せてくれなかった。
まぁ、仲良くなれたなら良いか。
また、一連の出来事で実感できたのは、知っている。という書きやすさだろう。
知らない景色や状態、心情を書くよりも、知っているものの方が書きやすく具体的だったと、心から感じたのである。あと、その部分だけ執筆速度が上がったりもした。
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