サブカルギルド 10話
目を覚ますと、光里が布団の上でシロと話していた。・・・どういうこと?
「あ、おはよう。昨日はありがとね。」
「つっちーも変わんないよねぇ、病人連れ込んで自分で看病しちゃうなんてさ。親譲りってやつだね。」
自宅の近くの公園で遊んでいるときに誰かがけがしたら、いつも俺が自分の家に引っ張ってきて、親が相手の意志関係なく応急手当てしてしまうのだ。良い事だよな?
「そんな微妙な表情しないでって、ちゃんとほめてるから。」
「そうだぞ、正直、チャイムを鳴らして最初に出たのが松山さんでびっくりしたからな。」
「クートもいたのか・・・。いや、いつも通りだな。」
「でだ、つっちーよ。お前、明らかに顔が赤いぞ。」
・・・いやいやまさか。昨日ちゃんと風邪ひかないようにしたはずだぞ?
「とりあえずこれ、検温しておけ。」
渡された通りに検温してみる。ピピピピっと音が鳴ったので、見てみると、デジタル表記には39.0と書いてあった。あ、インフルじゃないだけましって感じかぁ・・・。
三人とも覗き込んでいたので、みんなそれぞれすぐに動き始めた。
「ひろくん、次はひろくんが寝る番だよ。」
といわれ、有無を言わさずにさっきまで光里が寝ていた布団に押し入れられる。
「私たちはゼリーとかプリンとか買ってくるね~。」
そう言ってシロとクートの二人は玄関から消えていく。
二人っきりになったのだが、光里は俺の横から動かない。
「光里?どうした?」
「わ、私が昨日甘えちゃったから・・・な、何か・・・何かしなきゃ・・・。」
あ、完全に混乱してるわ。
「大丈夫、光里が甘えたんじゃない、俺が甘えさせたの。だからこの風邪は光里のせいじゃないよ。」
できる限り優しく言ったつもりだが、昨日の光里の様子を見ていた限り、今の自分も弱い声で言ってるのかもしれない。
「それに、熱があっても小説は書けるからね。せっかくだからゆっくり書こうかな。」
あまり心配させるのも良くないと思い、少しでも強気に、いつも通りを演じる。
「ダメです。」
布団から起き上がろうとする俺を押し倒すように抑えてきた。さ、さすがに顔が近いですけど・・・。
「今日はちゃんと休んでいてください!というか私にも看病させてください!」
よくわからないけれどそう言うことらしいので、あきらめて看病されることにしよう。そう決まったので、あきらめて横になり、体から力を抜くと、あっという間に眠ってしまった。
少し暑いと感じて目が覚める。暑さは熱か、それとも季節か。
「あ、目が覚めた。体調はどう?おなかは減ってる?」
昨日聞いたようなフレーズで少し恥ずかしく感じる。
「少し暑い?おなかは減ってないけど・・・。」
「じゃぁ冷え○タ張ろうか。」
あったのか冷え○タ。
「あとアク○リアスも飲んでね。」
あったのかアク○リ。エリクサーみたいな名前してるよなあ。飲みながらそう考え、飲み終えてから横になる。なんか慣れたみたいになってるけど、今朝まで光里が使ってたんだよね????
そんな思考をよそにだんだんと眠くなってきたので再び寝ることに・・・。
再び目が覚めると、光里がちょうど離れるところだった。気持ちもだいぶ楽になったので、起き上がる。
「あ、起こしちゃった?」
こちらを見ることなくそう言う。
「いや、普通に目が覚めただけだよ。」
「そう、起こしちゃ悪いと思ったから。おかゆ出来てるけど、食べる?」
後ろ姿でも耳は見える。真っ赤なので、何かしら仕掛けようとしてたんだろうなと。
「食べる!楽しみだなぁ~。」
「言っておくけど、広くんのほどおいしくないと思うよ?」
「そんなことないと思うよー?」
自分としては、もうすっかり元の調子なのだが、光里がどこかよそよそしいというか・・・。
「あのさ、」
まるで、悪いことをした子供が親に言い訳をするような口調と雰囲気が始まった。
「その、おかゆに惚れ薬とか入ってたら・・・。怒る?」
できるだけ穏便に済ませたかったのだろう、最後だけ茶目っ気たっぷりに聞いてきた。
「怒るも何も・・・。うん、意味ないんじゃない?」
台所に立つと、大きな土鍋に二人前の粥が入っている。
「だってこれ、自分の分も作ったでしょ?」
「あ。」
こういうポンコツっぷり可愛いよな。
「だからまぁ、仮に入ってたら光里も食べることになるし、入ってないんじゃないかなって。」
そう言いながら光里を見ると、真っ赤になって固まっている。
「どうした?」
「いや、その、我ながら恥ずかしいことしちゃったなって・・・。」
そういえば、俺がクートからプリン貰ってる最中になんかもらってたな・・・。
「さっき、シロになに渡されてたんだ?」
「えっ、いやっ、それはさすがに言えないっていうか・・・。」
「ほうほう、俺に言えないようなものをもらっていたと・・・。」
「そう・・・いうものです・・・。」
さすがに観念した。でも実際に何をもらったのかだけは教えてもらえなかった。
「まぁ、二人分作ったのに、その中に惚れ薬なんて入れちゃったら収集付かなくなるもんなぁ。」
終わったことなのでもはや話のネタ。そう思っているのは俺だけなのか、光里はちびちびと緊張しながら粥を食べている。
「そ、それもそうだよねぇ。は、早く食べちゃお。私もおなか減っちゃってて。」
どこかわざとらしく感じるものの、わざわざ確認する時間を取るよりもおなかを満たしたい。。俺もおなかが減っているのだ。無言で食べ続けて完食する。気持ちがこもっていたとでもいうべきか、おいしいかった。
「この後はどうする?」
いつも通り二人で小説を書くのか?と聞くと、
「もちろんだよ。特に何もなかったし。一緒に書こう。」
やはりどこか違和感はあるものの、いつも通りではある。
いつも通りに机を準備して執筆作業に入る。いつも通り光里が紅茶を入れてくれたのだが、書く内容が内容であるために、少し気恥しい感じがする。ラブコメを描いているのだが、隣に女子がいるのはやはり気まずい。とはいえ嫌というわけではない。むしろ光里だからうれしいと言ってもいい・・・。いや、これはよくないな。とりあえず主人公とヒロインのイチャイチャは書けるのだが、日常を描くのがどうも難しい。こういう時にこそありがたいのが光里みたいな存在みたいなわけであり・・・。
「なぁ、こういうのって日常のシーンはどう書けば・・・。」
まぁ、なんだ、意外とうぶなのか、光里は書きながら顔を真っ赤にして羞恥に悶えていた。
「あ、うん、日常的なシーンって書くの難しいよね。ラブコメだと落差が少なかったりするから、余計にね、でもほら、私たちの普段を描けばわかりやすいんじゃないかな。」
そこまで一息に言われてから気付いたのは、光里の顔が熱っぽい事と、俺自身が顔を見た瞬間から心臓が鳴りやまないという事である。
なるほど、効果発揮というわけか・・・。
「ひかり、顔見る限り熱っぽいから寝てな。俺はもうちょっと書いてるから。」
「えっ!いや、私は別に大丈夫だよ?いつも通り元気だし・・・。」
しばらくかかわっているからさすがに通じない。
「いーや、さすがに通じないぞ。少し寝ればすぐよくなるだろうから、悪化する前に寝ときな。」
「・・・わかった。」
渋々。という様子だったが、素直に寝てくれたので俺自身も助かった。照れて赤面している女子が薄い服で同じ部屋にいるとか耐えられないが?
できる限り光里の方を見ないようにしなが小説を書く、書いてる最中は問題ないのだが、席を離れる時に視界に入ってきてしまうので、そのたびに視線は動くし心臓も早くなる。ほんと、大変なものを盛ってくれたよ。
結局、いつも通り寝落ちするまで書いていた。
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