第301話 国外旅行
今日得られた情報を手帳に記し、眺めながらう~う~唸ること数十分。
もちろん実際に使ってみないと分からないことも多い。
が、自分なりの経験や知識に基づく解釈を加えれば、今後何を優先して入手すべきかが薄っすら見えてくる。
『技能の種』。
これは見つけ次第最優先で押さえるべきレア物だろう。
内容はまずスキルポイントを得られる種で間違いないだろうし、問題はこの種1つでいったい何ポイント上昇するのか。
1つ1億ビーケという相場でスキルポイントが『1』しか上がらなかったら、これはもうかなりの鬼畜仕様。
でも大富豪が相手ならこれも普通にあり得そうで、今からお財布が心配でしょうがない。
次に『成長の種』。
こちらはかなり入手優先度が低く、たぶん俺がオークションに参加してまで入手することはない。
おじさんは『子供が』と言っていたが、魔物を倒したこともないレベル1に近い状態ほど効果を得られる――つまりは定量型の経験値を得られる種の可能性が極めて高い。
そしてそんな砂粒程度の経験値を今更得たところで、まず俺の経験値バーは0.01%も上がらないだろうから、このアイテムに金を突っ込んでもまったくと言っていいほど成長には繋がらないはずだ。
一応僅かながらに、何レベルであっても必要経験値の方が定量。
魔物から得られる経験値は、適正から離れるほどに0へ近づいていくなんてパターンもなくはないので、1個くらいは今後入手できたら使ってみたいけどね。
んで『特殊付与武器&装飾品』は、まぁ【鑑定】の結果次第だな。
どんな特殊付与があるのか、そのパターンをまずは知りたいところだけど、あのおじさんも見る機会がかなり少ないのか、明瞭な回答は得られなかった。
それでも入手経験値増加と、入手スキル経験値増加を匂わせるような効果をおじさんは話していたので、この辺りのレア物を引き当てれば低位素材だろうがキープ推奨だろう。
まぁ入手難度で言えば、この特殊付与が一般的なレア物の中では一番キツいみたいだけど。
そして技能や職業の『書』は中身次第。
職業の方は俺だけの問題なので、一度安いやつでも使用してみてから。
技能の書は分厚い方で未取得から確定でスキルゲットに至るわけだから、俺的な経験値換算で言えばスキルレベル3所持の魔物1匹と同等くらいの計算になる。
つまり、普通なら買ってまではいらないし、どちらかと言えば俺なら売却して現金化推奨だろう。
そんなの何千冊あったところで、スキルレベル7くらいまでがいいところになるんだから。
ただし該当スキルが、【精霊魔法】や【呪術魔法】のような解放条件付きのレアだった場合は別だ。
特に魔物から得られる見込みの無いようなスキルは技能の書でごり押し取得して、とりあえずスキルレベル1にしてから地道にレベル上げ。
この流れが出てきそうだし、たぶん金持ち連中も同様の使い方をしているんじゃないかなと思う。
んでんで、最後の『叡智の切れ端』。
これはコツコツ頑張るしかないだろうなぁ……
おじさんもそこまで詳しいことは分からないらしいが、知っているのは1ページが25枚の切れ端で構成されており、隣接する切れ端同士が接触すれば自然に繋がるということ。
そして若い番号は比較的オークションでも出てくるので、個人でも金があれば最初の10ページくらいまでは集められるだろうけど、普通はこの辺りが限界。
特に20ページ以降は国家などの集合体が金を積み上げて集めるものだと言っていた。
1つの切れ端が数億、数十億なんて話も当たり前の世界。
おまけに初級ダンジョンでは、30ページ以降の切れ端をおじさんは過去に1度しか見たことがないので、特殊付与以上にここで狙うのは現実的じゃないらしい。
本気で集めるなら、中級とか上級ダンジョンにとっとと行ってこいってことだな。
トントントントン――……
夢はある。
面白みもある。
自身の成長にだって繋がる。
でもたぶん、"狩場"として選択するのは、本当に最後の最後かな?
なんとなくのイメージだ。
ダンジョンは今まで存在理由がいまいち分からなかった『幸運』を上げられるだけ上げてから。
強くなるための効率的な手順を考えても、それが最善な気がする。
金とスキルを得るために"フィールド"を巡り、その金は可能な限り自己強化へ。
そしてフィールドでは解決できず、金でも簡単に解決できない局面にまで到達したら、あとはひたすらダンジョンに篭って極みを目指し、腐敗のドラゴンみたいなおかしな存在をぶっ倒す。
そんな展開を想像すれば思わずニヤついてしまうが、それは物凄く先の話。
今はそれより目の前にある問題の方が重要だ。
踏破するだけなら余裕なこの初級ダンジョンをどう料理するか。
(ん~まだ起きてるかな……)
時計を見れば、21時過ぎ。
ならば、風呂のついでに起きてるなら聞いてみようと、俺は下台地へ転移した。
▽ ▼ ▽ ▼ ▽
「おはようございまーす。メイちゃんいますか~?」
「あらロキ君、おはよ。メイならまだ寝てるわよ?」
翌日の朝、結局俺はベザートにいた。
理由はまぁ、なんというか、ゼオ達にフラれたからだ。
結局全員で風呂に入りながら、ダンジョンどうするか会議をしたわけだが、まず想像以上にゼオがダンジョンに詳しかった。
初級ダンジョン『救宝のラビリンス』では、最深部付近でも出てくる魔物はDランク程度らしく、そんな場所に俺、十分強いカルラ、パワレベのおかげで鍛冶師なのに結構強いロッジを引き連れても、無駄過ぎるくらいの過剰戦力なのは明らか。
それこそワンパン行進しながら、ダンジョン内をひたすら散歩するだけだと言われて、たしかにその通りと全員が納得してしまった。
ゼオのリハビリやデバフ解除に繋がるなら意味もあるけど、既に拠点周辺でAランク魔物の経験値を吸わせるなんて初歩的な実験はしちゃってるからね。
結局デバフ解除条件は見当たらず、それこそ日数経過と適度な運動や食事で少しずつ力が戻ってきているという状況なので、無理に4人で行ったとしても得られるものは何も無し。
ならばかつてゼオが通っていたという、100層構成でSランクの魔物も登場する上級ダンジョン『創成のアストール』を目指すべきだろうという結論になった。
ロッジはあくまで鍛冶師だし、さすがにその時は留守番だと思うが。
もしお子様3人衆も難しかったら、もう独りでダンジョン爆走してとっとと終わせよう。
そんなことを思いながらご両親と話していると、ようやく寝癖が大爆発したメイちゃん登場。
俺の『旅行計画』を伝えれば3人とも目を丸くするも、すぐに当の本人は満面の笑みを浮かべ。
「絶対ジンクもポッタも大丈夫!」
こう自信あり気に言い放つので、それなら大丈夫かな~と二日後に予定を合わせ、俺はその間、念のためにマッピングを度外視したダンジョン攻略をひたすら進めることにした。
そして予定の二日後。
「ぎゃああああー! すっごおおおおーーい!」
背に乗せたメイちゃんの案内で、空を飛びながらまずはポッタ君の家に。
そこで既に面識のある同じ顔のお母さんに挨拶をしたら、そのままポッタ君も背に乗せ、お次はジンク君の家に向かう。
「ロキです。僕が責任を持ってお預かりしますので」
「ふふ、何も心配はしていないわ。ジンク、ロキ君に迷惑を掛けちゃダメよ?」
「大丈夫だって! もういいから、母ちゃんは家ん中入ってろよ!」
(思春期っすなぁ……)
背中を押され、苦笑いを浮かべながら家に入っていくジンク君のお母さんにペコリと頭を下げる。
なんとも色気のあるお母さんだ……
凄い美人だし、これなら自慢したって良いくらいだろうに。
何やらソワソワしているジンク君。
顔からワクワクが溢れ出しているメイちゃん。
いつもと違い、今日はしっかり目が開いているポッタ君。
そんな3人を前にして、俺はもったいぶったように口を開く。
「着替えのパンツは持ちましたか?」
「「「持った!」」」
「お土産用のお小遣いも持ちましたか?」
「「「持った!」」」
朝の小道に、子供達の元気な声が響き渡る。
既に装備も身に着けているし、これなら何も問題ないだろう。
実際は何か忘れてても、向こうの町で買えばどうとでもなるしな。
「よーし、それじゃ行きますか! 一泊二日の国外旅行!」
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