29話 エルカ名物海鮮丼

三人はそれぞれ新たに旅に加わった三人を背負って、飛行気を使い世界樹に向けて飛んでいた。

「このさきにある港から、私の暮らしていた人魚(ホーリー)の国へ行けるわ!」

ティファリアの背にオブられていた人魚(ホーリー)は、自慢げに故郷を語っていた。

琴音の背に乗っていたラティスは追い風に少し辛そうにしていた。

「ラティスちゃん大丈夫?」

「はい。平気です」

優一はさり気なく、少し飛行速度を落とす。

「君は平気なのか?」

優一は背に乗っている女の子に声をかける。

「平気です」

会話もすぐに終わり気まずくなる。

「そう言えば二人の名前、まだ聞いてなかったな」

「ルナフィーネです」

「良い名前だな!」

「ルナちゃんって呼んでもいいですか?」

「はい」

「うちはイルミだよ」

「可愛い名前だね」

「でしょ!うちも好きなの」

優一はイルミの道案内で港へと目指す。

「港は南西に向けて進むと見えてくるよ!港から出てる船に乗っていくのが良いけど、空を飛べるなら、そのまま諸島に向かうといいね」

「いえ!港に向かいましょう」

「そうですね」

「決まりだな!」

「どうしてよ!寄り道しないですぐに行こうよ!」

「さっき、イルミが話してた港名物の海鮮丼が食べたい!」

「私も食べてみたいです」

「この世界に来てから野菜とお肉ばかりだったので、私もお刺身食べたい」

「では、多数決を取ります」

結果は五体一で港へと寄ることになった。

「もう、余計な事を話したのが間違いだったーー!」


そして数時間が経過した。

空から見渡す港町。

赤煉瓦の建物、道は白煉瓦で構成されていた。

港には運搬用や漁業に使うであろう船が何隻も停泊しており、それに交じって軍艦も数隻あった。

エルカ港。

ここは、どの国にも属さない。いわば中立の場だ。


入り口は各方角に一つずつあり、門では馬車で行列が出来ていた。

どこの国の荷物を輸入輸出したのか、細かく記憶を取っていた。

これは、国同士のトラブルに巻き込まれない様とのこと。

門で渡された申請書に受諾の印を押してもらい、それをどこの国に送るのかを記載するのが一連の流れ。

もちろん武器の所持は厳禁とされ、入る際には入り口で預けるようなっている。

なお、何も輸入する者が無く、観光として訪れる者も数知れない。

優一達は申請書を要してないので、そのまま空からエルカ港へと降り立った。

港の人達は優一達に驚き、興味津々に見ていた。

空から降りた事だけではなく、獣人(ベスティア)、人魚(ホーリー)、そして二人の美女に可愛らしい金髪の少女。

そして、ガタイの良い男。

人込みの中、優一達に一人の男が駆け寄ってくる。

「ちょっと困るよ。君たち。申請を必要としなくても、入り口で武器を所持してないか検査を受けて貰わないと。魔法道具も使わず空から来たよね?」

「すまない。急いでいたもので・・・」

「よく言うよ。エルカ港の海鮮丼が食べたくて入り口をすっぽかしたくせに…」

「とにかく!持ち物検査をします」

優一達は、持ち物検査を済ますと、飲食店へと一目散に向かった。

外見は赤煉瓦で出来ており、中に入ると壁はガラス一面ガラス張り、そしてテラス席もあった。

中から海原が眺める事が出来、外では潮音と潮風を堪能出来る、理想的なロケーション。

そんなムードを壊すが如く、優一と琴音とティファリアは海鮮丼を食べまくる。

「おかわり!」

「すみません。おかわりお願いします」

「私も!それと、このシュワシュワブルーウォーターもお願いします」

「貴方達、もう少しムードを大切にしたら?」

優一はイルミに何か言うが、口に食べ物を含んだ状態のため、何を言っているのか分からなかった。

「汚いわね!飲み込んでから話しなさいよ!」

「そうですよ。優一さん」

「兄さん、もう少しマナーを身に付けましょう」

「二人は、食べる量を減らしたら?ラティスとルナフィーネを見習いなさい」

そう言ってイルミはため息を付く。


食事を終えて、優一達は港を満喫していた。

「そろそろ、いいかな?人魚の国へ行きたいのだけど」

「よし!いくか」


船着き場。

優一は目的地の島へ行くためのチケットを買っていた。

「何でチケットを買ってるの!空を飛んでいけばいいじゃん!!」

「私、一度で良いから船に乗ってみたかったんです」

「私も旅行とか言った事ないからこれが初めて!」

「ラティスも生まれて初めて乗ります!」

ルナフィーネは何も話さず、だが尻尾は揺れていた。

「決まりだな!」

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