第24話 決闘の流儀
日が昇りきり、天高く位置する大空。その日は快晴、だがある集まりは暗雲な空気に包まれ息苦しかった。
新生されたギルドは、三つの足で樹立される。この形態のギルドを
今まではギルドは一つ、今までは
だが新生され、今後ギルドでは三つの受け付けカウンターに分かれる事になった。
運送は、読んで字のごとくである。しかし、実体は信用と危険の隣合わせとなっている。これを運営しているのは
断言しよう、彼等居なければ、細い生命線は途切れ滅ぶだろう。
ざっと書いたが、此処である問題が浮上する。
それは今現在、大貴族ブラーニェ家現当主が決闘に勝利した場合の条文がパスカーノに手渡された。
・決闘の勝利後、領地をブラーニェ家へ献上する。
・決闘の勝利後、グリムレッドは当主の指揮下へ入る。
・決闘の拒否は帝国への反逆と見なす。
この条文をドゥンロオ家の屋敷で朝早く執筆された。早朝と同時、ゴルテラの付き人達が馬車と馬で遅れてやって来た。
彼等従者達は軽装ながら武器を携えていた。
長剣、槍、そしてこれ
長剣、とは書いたが両手剣を侍女達、しかも数名が背中に担いでたとか。グリムレッドは実際には目にしてはいなかった。聞いた話だと両手剣はツヴァイヘンダーとか。
銃、はこれ又長かったらしい。遠巻きで一瞬、短槍に見えたとか。それは『ライフル』と呼称される物だった。既に小規模な戦で実証、量産品が出回っていると聞く。
知らしめてるのだろう、ブラーニェ家従者の自分達は手練だと。
「……」
顎に手を当てるアジールはニヤ付き、他所から来た貴族の従者が身に着ける武装に興味を示していた。
「アレが今後の兵達に使われる物、それは
だが長物だ、と付け加えライフルをそう表する。
アジールはその場から姿を消す。構えた自分の城と言う店に、帰路へ移す。
奴の頭には、製図が閃かれる。
*
「……」
ドゥンロオ邸の応接間、其処は無言の空間だった。
グリムレッドとパスカーノの二人、この二人の沈黙はかれこれ一時間以上は経過した。
時間は8時過ぎに
最早脅しとしか思えず、要約すると自分の前に出て来て敗れたら下に付き領地と
グリムレッドが恩情で領地だけ手を引く事は出来ないか、とパスカーノに聞くが無理だろうと返答する。
現代の決闘は異勇思想が混じっている為、純粋な物ではない。つまりは紛い物が蔓延る、
とある学者はこの行為を『蛮族病』と皮肉った。
崇高なる意思がない、下らない私情ありきは私闘も同然、名誉の為の業であり陳腐な
しかし、
そんな物は屁理屈に過ぎない。もし受けずにいれば、末代までドゥンロオ家は後指を貴族社会で指され、永劫爪弾きに合うだろう。だから、グリムレッドが出した決断は──
「退路はない、受けるしかないな」
潔く、それは承諾と言っても差し支えない。
パスカーノは顔を覆いながら、済まないと小さく呟く様な声で謝る。謝罪の意味もあり、自分の名誉の為に動いてくれた事に。
*
小さな食堂だとゴルテラは思った。食事を終え、魔導駆動式馬車の中に持参していた本を読んでいた。
一人、静かな読書にふけっていた。愛読書は武力的闘争を論じた内容を三つの編から成り、特に彼女が開くのは『決闘』についての編だった。
静かな食堂に扉の金具の音が響く。音のなる方に目を向けると、其処に赤い騎士が入ってくる。
少し驚いたが、途中だった読書を中断し椅子から立ち上がる。
「何かしら、赤騎士殿。まさか降参しに参って」
「違う、その逆だ。決闘を受けようと話が決まったのでその報告を」
「あら、そう。で、対戦の御相手は貴方ですこと?」
「パスカーノ辺境伯自身と貴女では、雲泥の差が開き過ぎているかと。となると、此方が出る以外なしになると思うので」
「ええ、事が運んで嬉しいわ。実力を測れて一石二鳥となる事ですし」
「……」
嘘を付け、口に出したかった言葉。しかし、それを出せなかった。
仮に、もしパスカーノ自身が相手をすると言ったら彼女はどんな反応をしたのだろう。実力が及ばない辺境伯を、徹底的に、立ち上がる事さえ出来ぬよう性根を叩き折るのだろうか。
ゴルテラはグリムレッドへとゆっくりと歩みながら、問い尋ねた。
「
「……。自分の
「では、何故受けるとなられたので?」
「此方が勝てば取り下げて貰えると、安直な考えであると言うなら笑っても構わない」
「ま〜、嫌いではありませんわその考え。寧ろその気になって貰わなければ。……そうだ」
口は弧を描き、何かを思い付いた様子だった。
「ふふふ」と笑るエルドラに、グリムレッドは嫌な予感が頭に過ぎる。
目を細めるや、弧を描いた笑顔のままある人物の名前が出でくる。
「ハイネン・クラッコー、彼の者をご存じで?」
「……、
「今の間は一体」
「シンプルに忘れてた。ペストマスクのだったな、何故其処でハイネンが出でくる?」
「貴方を機動師団に推薦します」
「理由は聞いても」
「我がブラーニェ家は今現在、機動師団の
「実質、ブラーニェ家の私兵も兼ねてと」
「まぁ半分程は、彼処には我が家系と同じ地位の者が一人いまして。それに対するカウンターとして起用したい。同時に、
「……」
グリムレッドは黙りこくる。
要件を掻い摘むと、ブラーニェ家は今現在機動師団に
そしてブラーニェ家と同じ立ち位置となる者、其奴が自ら機動師団に入り身を置いているのは、大貴族同士の静かな対立が水面下で繰り広げられ、入り込んだその大貴族の子息・息女はとんだ
只『グリムレッドを配置するだけでカウンターとして安定する』、其処だけは気になったが何故か以前ハイネンが言っていた『熱心なファン』ではないかと考えたが、それは憶測の域でしかなかった。
咳払いがゴルテラから聞こえてくる。
深く考え更け過ぎたようだ、時間的に十分位は黙りこくってた。
「失敬、理由は大腿把握した。で、日時はいつに」
「……今日も含めて、五日後と言った所かしら。予定では昼過ぎに開始致しますわ、それまでコンディションを整えておくように。他に何か?」
「──いや、ない。来た理由も知れて有り難い時間を頂き感謝を、では失礼する」
グリムレッドはそう言うと、食堂から退室する。
また一人になったゴルテラは瞼を閉じ一呼吸を入れる。近くにあった椅子を引き、腰を下ろし、さっきまで対峙していた彼を思い返す。
節々に自身、いや出自に対する嫌悪が少なからず感じていた。
彼女にはまるで首輪と縄が繋がられていない二足歩行する鎧の猛獣に見えていた。兜のスリット、其処から微かにだが、敵意に近い視線を向けていたのを彼本人は気付いていないだろう一人笑うのだった。
屋敷の持ち主であるパスカーノには、昼食時に面白可笑しく話した。聞き手側は顔に出さず、胃袋を痛めるのだった。
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