第50話 「書くことでしか。 伝えられない」パンダ、詩人です⑰

「現実を見ると、胸がしめつけられる。だから、ぼくは現実から目をそらす」

『名探偵と封じられた秘宝』はやみねかおる




『月も沈まぬ夜に』


現実は冷たい

現実は痛い

現実は暗くて深く

泥の中でもがいているよう


ここから逃れる方法は、

目を閉じることだけ。

ずっと、そう思っていた。


きみが、ここにくるまで。

ここで一緒に立ってくれるまで。

きみをうしなうまで。


きみは、うそをつかなかった。

立ち向かえば、不安は消えていく。

その言葉だけが

きみの残した体温のようなもの。


きみがいないのに

不安のない現実にいて、どうなる?

あの泥のような闇に戻れば

きみはまたここへきて

この手を引っ張り上げてくれる?


月の沈まぬ夜に

どうしようもなく途方に暮れる

この夜は

終わらせ方が分からない




★★★

最近、ジュブナイル、というものを読みはじめました。

冒頭の、はやみねかおるさんは、ガクとネンに教えてもらいました。

小学性高学年から、中学にかけて。

子どもたちは、月も沈まぬ夜にいるかのようです。


ひとりでたちむかうしかない。

現実に、また戻るしかない。

その繰り返しで、大人になっていくのでしょう。


水ぎわは親ですから。子供の死闘を見ているしかできません。

でも。

ここにいますから。

月が傾くまで。

ここにいます。


それが、親というものです。



一気に秋が深まりました。

水ぎわも必死で明日を描こうとしています。

書くことでしか。

伝えられない。

そう思います。


今宵も、深い秋の夜を。

おやすみなさい。



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