エピローグ
「お前……何て事を!この森には、野生動物だっている!それを!」
攻撃を終え、降りてきたツバサへと叫ぶジン。
それをを見ると、彼はフン、と鼻を鳴らして、
「言ったはずだ。俺の邪魔をするな、と」
悪びれもせず、そう言い放った。
「理由になってねぇっての……!」
我慢できず駆け寄り、胸ぐらをつかみにかかるジン。だが、
「ハァッ!」」
ツバサはその鳩尾へ拳を叩き込み、さらに蹴り飛ばした。先ほどの防御でもはや限界を迎えていたジンは変身が解かれ、背中を打ち付けて倒れ込む。
その拍子に手元から離れ、地面へと転がったディスクラッシャーへ近づくと――
「さて、こいつは――」
そんなことを呟きながら、まじまじと観察していた。
「このやろ……返っ……せ……」
痛みをこらえつつ、必死に手を伸ばすジン。
そして、
「チッ、外れか」
そう吐き捨て、無造作に放り捨てた。
あまりにも傍若無人。その様子に――
「……ちょっと、調子に乗りすぎだよ、君」
メイが――キレた。
懐から小型の銃を取り出し、一瞬で間合いを詰めると眼前へ銃口を突き付ける。
しかし、その額からは冷や汗が流れ落ちている。
生身の人間とメモリアナイツとでは、勝負にすらならない。それを理解していない訳ではない。
しかし、彼女は退かない。理由はどうあれ、聖剣を用いて無意味な大規模破壊を行ったのだ。
聖剣の開発者一族として、そして何より人として、この行いを許せるはずはないのだ。
「どけ。俺は誰であろうと容赦するつもりはない」
「あまり、舐めないほうがいいと思うけど?」
なおも引き金に指をかけ、銃口を向け続けるメイ。そんな彼女に対し――
「……警告はした!」
剣を振りかぶり、ツバサが叫んだ!
彼女の首へと迫りくる凶刃。
「博士――ッ!」
立ち上がり、駆けるジン。
その慟哭は、空に響き渡り――
※
「うわあぁああーーっ!」
叫び、手を伸ばす俺。けれど、その手は博士には届かず――
ガチャンッ!カランカラン……
「え、あれ?」
ドアへと届いた。
聞き覚えのある鐘の音が、室内に響き渡る。
そう、ここは――
「じ、ジンさん?それにそちらの女性は?」
「お帰り……ってお前何があった!?ボロボロじゃねぇか!」
「……どゆこと?」
カフェ『スターズ』だった。
センパイ。おやっさん。博士。そして俺――その場にいた全員が目を丸くし、困惑する。
そしてしばしの沈黙が訪れ――
「……と、とりあえず入って来いよ。ケガ診てやるから」
「押忍……」
おやっさんの一声で、俺たちは店へと入っていった。
謎のメモリアナイツに、あのハイヴァンド。そしてこの現象。
わからないことだらけで頭がパンクしそうだけど――とりあえず命拾いしたことに、俺は安堵した――
※
遥か上空を飛ぶ、一つの影。
その軌跡は彗星の如く光り輝き、尾を引いている。
それは件の謎のメモリアナイツ――ツバサと呼ばれた男だった。
彼は空を行きながら、考え込む。
あの時一体、何が起こったのか、と。
目の前にいた女が、一瞬のうちに消え去った。自分が剣を振り下ろす、ほんの一瞬のうちに。
あの状況下、手負いの人間を連れて逃げることなど物理的に不可能だ。
ならば、いったい何が起こったのか?
彼はそこで、ある一つの結論を導き出すに至る。
(と、なればやはり……『アレ』は存在するのか……)
(『時』を司る聖剣!)
果たして、時を司る聖剣とは?そして、彼の目的は一体?
全ては、まだ謎の中――
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