エピローグ

「お前……何て事を!この森には、野生動物だっている!それを!」

攻撃を終え、降りてきたツバサへと叫ぶジン。

それをを見ると、彼はフン、と鼻を鳴らして、

「言ったはずだ。俺の邪魔をするな、と」

悪びれもせず、そう言い放った。

「理由になってねぇっての……!」

我慢できず駆け寄り、胸ぐらをつかみにかかるジン。だが、


「ハァッ!」」

ツバサはその鳩尾へ拳を叩き込み、さらに蹴り飛ばした。先ほどの防御でもはや限界を迎えていたジンは変身が解かれ、背中を打ち付けて倒れ込む。

その拍子に手元から離れ、地面へと転がったディスクラッシャーへ近づくと――


「さて、こいつは――」

そんなことを呟きながら、まじまじと観察していた。

「このやろ……返っ……せ……」

痛みをこらえつつ、必死に手を伸ばすジン。

そして、


「チッ、外れか」

そう吐き捨て、無造作に放り捨てた。

あまりにも傍若無人。その様子に――


「……ちょっと、調子に乗りすぎだよ、君」

メイが――キレた。

懐から小型の銃を取り出し、一瞬で間合いを詰めると眼前へ銃口を突き付ける。

しかし、その額からは冷や汗が流れ落ちている。

生身の人間とメモリアナイツとでは、勝負にすらならない。それを理解していない訳ではない。

しかし、彼女は退かない。理由はどうあれ、聖剣を用いて無意味な大規模破壊を行ったのだ。

聖剣の開発者一族として、そして何より人として、この行いを許せるはずはないのだ。


「どけ。俺は誰であろうと容赦するつもりはない」

「あまり、舐めないほうがいいと思うけど?」

なおも引き金に指をかけ、銃口を向け続けるメイ。そんな彼女に対し――


「……警告はした!」

剣を振りかぶり、ツバサが叫んだ!

彼女の首へと迫りくる凶刃。

「博士――ッ!」

立ち上がり、駆けるジン。

その慟哭は、空に響き渡り――








「うわあぁああーーっ!」

叫び、手を伸ばす俺。けれど、その手は博士には届かず――


ガチャンッ!カランカラン……

「え、あれ?」


ドアへと届いた。

聞き覚えのある鐘の音が、室内に響き渡る。

そう、ここは――


「じ、ジンさん?それにそちらの女性は?」

「お帰り……ってお前何があった!?ボロボロじゃねぇか!」

「……どゆこと?」


カフェ『スターズ』だった。

センパイ。おやっさん。博士。そして俺――その場にいた全員が目を丸くし、困惑する。

そしてしばしの沈黙が訪れ――

「……と、とりあえず入って来いよ。ケガ診てやるから」

「押忍……」


おやっさんの一声で、俺たちは店へと入っていった。


謎のメモリアナイツに、あのハイヴァンド。そしてこの現象。

わからないことだらけで頭がパンクしそうだけど――とりあえず命拾いしたことに、俺は安堵した――






遥か上空を飛ぶ、一つの影。

その軌跡は彗星の如く光り輝き、尾を引いている。

それは件の謎のメモリアナイツ――ツバサと呼ばれた男だった。

彼は空を行きながら、考え込む。

あの時一体、何が起こったのか、と。

目の前にいた女が、一瞬のうちに消え去った。自分が剣を振り下ろす、ほんの一瞬のうちに。

あの状況下、手負いの人間を連れて逃げることなど物理的に不可能だ。

ならば、いったい何が起こったのか?

彼はそこで、ある一つの結論を導き出すに至る。


(と、なればやはり……『アレ』は存在するのか……)







(『時』を司る聖剣!)


果たして、時を司る聖剣とは?そして、彼の目的は一体?

全ては、まだ謎の中――

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