第20話 不吉の予感
「小鳥遊さん!おめでとう!」
私は、学校の体育館で、
みんなから激励の拍手をもらっている
ピアノのコンテストで2位を受賞したからだ
教室に入ると、クラスメイトたちが祝福してくれた
《嬉しい》本当に……
「琴人~」
お母さんが、見たことのない笑みで私の名前を呼ぶ、両手にはケーキが!
「誕生日おめでとう!」
誕生日だった、
受賞式の日と誕生日の日が偶然にも重なっていたのだ
「さすが私の子ね、」
お母さんが褒めてくれる
少しむず痒い
でも………
もうひとつの椅子は空席だった……
「もう!あの人ったら、なんでこんな大事な日に限って仕事なのかしら!」
《お父さんがいない》
「琴人の受賞と誕生日を兼ねてるのに!
というか、コンテストの時もそう、
なんであの人来ないのかしら」
お母さんが怒っていた
このままだとお父さんが叩かれてしまうかもしれない
焦った、私はお母さんの気をそらす
「良いから良いから、早く食べようよ!」
結局、その日もお父さんは家に帰らなかった
そして、次の日、お父さんが帰ってきた
「ちょっとあなた!」
予想通りお母さんが怒った
「お、お母さん大丈夫だよ!
私なんとも思ってないよ!」
「ちょっと、静かにしててちょうだい!」
私は口を閉じた
「ねぇ!あなた、
なんでコンテストに顔を出さなかったの?
なんでお誕生日の日に来なかったの?」
すると靴を脱いだお父さんは、立ち上がり様に
ビシ!!!
《お母さんの頬を叩いた》
「うるせぇ!!」
「ひぃっ!」
お母さんが凝縮してしまった
「ちょっと!!」
私は黙ってなかった!
「なんでお母さん叩くの!
悪いのはお父さんでしょ!」
初めて、誰かに対して、
誰かのために、怒った
すると、お父さんは、
静かになって自分の部屋に入っていった
「お母さん!」
「大丈夫よ」
お母さんの雰囲気は、
たった一回のビンタで元気が無くなっていた
「あの人、昔からあぁゆう人なの」
「え!?」
「でもね、あれでも、
結構優しい面があるのよ
そこに魅力を感じたの」
お母さんがお父さんのお話を私にしてくれた
今までそんなこと一度もなかったのに
質問しても、流されていたのに
何故か、お母さんから、お話を始めた
私は、お母さんとお父さんの出会いを
ひたすら聴き続ける
お父さんとは合コンで出会ったらしい
お父さんは男子グループの中でも、
おとなしく、お淑やかな性格で、
プライベートで合うようになってから、
仲良くなったみたいだ
「お父さんとはいろんな困難を乗り越えたわ
お金が無いときは金融会社に借りて
2人で働いて、借金を返したりしたわ!
あの人が競馬で稼いだお金で、
借金が返せたのよ!
色んな人と浮気をされてて、
最終的に私を選んだことが、
なによりも、嬉しいのよ!
結婚を反対した私のお父さんと殴り合いになって、私と結婚してくれたのよ!」
……………………………
お母さんがお父さんの思い出を語っている
だけど、どの話もなんかおかしい?
全部、ぜんぶ、お母さんが
《お母さんだけが、苦しんでいる》
あの、私がお父さんと、呼んでいる人は
《一体誰なんだろう?》
◆◇◆◇◆◇
次の日、お父さんが、謝罪をした
「いつも、すまん!
家族に迷惑をかけているのは、分かっている。昔からストレスが溜まると、
誰かに当たってしまうのも、わかっている。本当にすまんかった。」
「わかれば良いのよ。あなたなら分かってくれると思っていたわ。
昔からそうところがあったから。
私もあなたのこと、
よく分かってなかったわ、
ごめんなさいね。」
お母さんは謝っているお父さんをすんなり受け入れた……受け入れている?
2人は、抱き合って………抱き合って………
「違う!!」
私は冷静では無かった
「お母さん、お父さんが言っていること、変だよ!」
思ったことを口に出した
「おかしいよ!お母さんだけ、辛い思いをしているよ!
昨日、お母さんを叩いて!悪いことしたのに、なんでお母さんが謝っているの?!
お父さん、なんか怖いよ!」
パシ!
「え?」
お母さんが、私を殴った
「っ!!!」
なんで?
「悪い子ね!」
お母さんから、信じられない一言が
私に飛んできた
「お父さんに謝りなさい!」
「え?」
「謝りなさい!」
《お母さんが変だ》
なんで? なんで私が………
「お母さん?」
私を睨めつけている
………………………………
「……ごめんなさい……」
…………
「あぁ、分かってくれたらいいんだ!」
「っ‼︎‼︎」
なんだ?この言葉は……
おかしい!
私は決断した、お金を稼いで
《お母さんを助けよう》
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