第18話 神マサノブ対策をどうしましょう

「………………すいません……本当に」






 「いいのよ。私のやった事が原因なんていう謝罪は無し」






 シンカリアは項垂れているリィンリンの肩をポンと叩いた。






 「言ったでしょ。神が人を思う事そのものは悪くない。それによる結果が悪になったならどうにかすればいいって。ま、今回は私が必ずどうにかしてあげるわよ。だから暗い顔しないの」






 「………………ううう~~~! シンカリアさーん!」






 言われて感極まったリィンリンはシンカリアに抱きついた。




 シンカリアはリィンリンの頭を優しく撫でる。






 「はいはい、よしよし」






 「じんがりあざーん! えぐえぐえぐ」






 リィンリンは豊満な胸元にその顔を埋めつつワンワン泣き続け――――――――――その間、鼻水も思い切り流していたので、イールフォルト魔法学院の制服にその鼻水が盛大につく。






 「だぁぁぁぁぁ!? こらぁぁぁぁぁぁ! 一張羅を汚すなぁぁぁぁぁ!」






 「ずびばぜんんんんん~~~~」






 リィンリンはシンカリアから離れるが、その鼻からキラキラと輝く糸が引いていた。






 「よかったですねリィンリン。シンカリアさんがママになってくれて」






 「それどういう意味だレスクラッ!?」






 レスクラとやり取りしつつ、シンカリアは牢屋(破壊されているが)の外に目を向ける。




 リザードマン達がゼスターに命じられたのか、いつの間にか牢屋の修復を始めていた。シンカリアの所は後回しなのか、はたまた修理しないのか、リザードマン達が近づいてくる様子は無い。対面側の牢屋につきっきりであり、シンカリアの方を見ようともしてなかった。






 「……………………………………………………………………ん?」






 その破壊された牢屋部分を修理しているリザードマンを見ていると――――――――――――なんたる事か、その中に知っている姿を発見する。






 「あ~~~~~~う~~~~~」






 死んだ魚のような目でリザードマン達と一緒に牢屋を修理している一人の人間がいたのだ。






 それはシンカリアやレスクラが知ってる人間――――――――――サトリマックスだった。






 「は? え? なんで? なんでこんな所にアイツがいんの?」






 「あ~~~~う~~~~~~」






 シンカリアの声に何の反応も示さず、サトリマックスはせっせと牢屋を修理していた。






 「マサノブさんって、自分で発生させられる魔物だけだと数が足りないとかで、エルナブリアにいる魔物達もココに連れてくる事があるんです。で、その時たまになんですけど人が紛れてる時があって……………………」






 「だからアイツがココにいるのね…………」






 「たぶん、労働力として良さそうと思われたんだと思います…………」






 おそらく、シンカリアと分かれた後すぐに捕まったのだろう。夜は魔物がよく活動する時間帯だし、その夜にサトリマックスは飛び出して行ったし――――――――――ゼスターの魔物狩りに巻き込まれた事は容易に予想できる。ぶっちゃけ、かなりツイてない出来事だ。






 「つか、もったいない人材配置ね。アイツ、レスクラと互角以上に戦える人間――――――――――」






 と、そこでシンカリアの喋りが止まる。






 「どうかしましたかシンカリア?」






 「…………………………………………………………」






 何か閃いたのか。シンカリアは「あ~う~」言っているサトリマックスを見ながら、何やら考えていた。






 「も、もしかしてシンカリアさん…………ナイスアイデアを閃いたり………………ですかね?」






 あのサトリマックスからどんなきっかけを掴む事ができたのか――――――――――――レスクラとリィンリンには全くわからない。






 「突撃でもさせるつもりですか? 爆弾なり巻き付けて突撃させても、目にも見えない速さで突撃させても、宴会芸をしながら突撃させても、返り討ち決定と思いますが」






 レスクラはなかなか残酷な事を言った。






 「それは作戦って言わないんじゃないかな………………あと突撃しかさせないってどうかと思うな…………私は知らない人だけど…………」






 「私もよく知りません。リィンリンと一緒です」






 「レスクラちゃんは私以外にも酷だッ!?」






 勝手などうでもいい予測を立てるレスクラと、控えめなツッコミを入れているリィンリンだったが、そのやり取りにシンカリアは反応しない。






 「……………………………………」






 シンカリアは自分が今閃いた事を実行するべきか。このバカみたいな作戦でも何でもここはやるべきなのか。




 実行すべきなのか迷うが、しかし一つだけはっきりしている。




 それは、ここでゼスターをどうにかしなければエルナブリア王国は確実に滅んでしまう


という事だ。






 「……………………まあ、賭けに出る価値はあるわよね」






 本来ならアルドゥーク神殿から離れて援軍なり呼んできた方がいいだろう。だが、離れてしまうとゼスターが神世界メルガリアそのものに来れないようにする可能性があるし、それはもうされているかもしれない。それに援軍を呼んだとしても合流に時間がかかるし、その間にアルドゥーク神殿の場所を何処か知らない土地や世界に移されでもしたら終わりだ。シンカリアがゼスターを見つけられたのはたまたまなのだ。居所を見失えば、以降見つけられる可能性は限りなく低い。




 ――――――――ゼスターをどうにかするなら今が一番良いだろう。いや、今しかない。




 今のメンツでやるしか無い。






 「なかなかハードな修学旅行になってるわよねコレ………………」






 神と同義である転生者との決着をつけるため、シンカリアは行動を開始した。

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