第10話 我、――――

明日も更新と言いたいところですが、明日はお休みします。すみません。


すべてカレンダーさんが悪い。

なんで赤字なのに祝日じゃないの? 今日休みで木曜日からも休みでいいじゃん。

予定が、、、、狂う。

見直す時間が無かったので、後で本文を修整するかもです


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 画面の中の巫女――サクは、チルの後ろを軽く歩きながら、問いかける。


「だいたい千留姉ぇ、なんの下調べもせずにこのダンジョンに来たでしょ」

「下調べ? 出てきた敵を倒せばクラスが得られる。それくらいは知っている。さすがに今日はクラスを得られれば帰るつもりだから、それで十分だろう」

「いや、そうだけどそうじゃなくて。中で何が出てくるとか調べてないでしょって事」


 頬をふくらませ言いつのるサクに、チルは平淡に返す。


「何が出てこようが斬ってしまえば終わりだろうが……」

「そうだけど、もーー」



《うーん。姉貴の方、脳筋疑惑が出てきたぞ》

《切ってしまえばいい……、ある意味真理だけどさぁ》

《殺ればできる!》

《ゴブとかそれで対処できるだろうけど、スライムとか難しくない?》

《この姉貴、スライムくらいなら切ってしまいそうな雰囲気ある》

《あ、それわかるかも》

《なんだかんだで、ダンジョン最初のモンスターだし、弱点以外でもうまくやれば倒せそうよね》

《モナも気をつけなよ。下手にウスベニをダンジョンに入れたりしたら、姉貴みたいなのに切って捨てられて終わっちゃうよ》



 そのコメントに、モナはうむとばかりにうなずいた。


「むろんじゃ。ウスベニは我の癒やしじゃからな。ダンジョンで無駄死にはさせぬよ」


 ぽよぽよとしたウスベニの身体を抱き寄せる。


「それに、もしダンジョンに行ってもらうことがあっても、その時はちょー強化して、そなたらを蹂躙してやるのじゃ。の?」


 モナはにっこり笑ってウスベニの頭をなでる。ウスベニもぷるぷると身体を震わせそれに答えた。



《無双(されるの)は嫌です》

《やめーや》

《強化されたスライムとか悪夢でしかないだろ》

《物語の最後の方に出てきて、主人公を蹂躙するやつ》

《大体無限の再生力と消化力持ってるよね》

《振りじゃないからね、マジでやめてよ》

《スライムダンジョンの奥の方は、下手したらそんなやつばっかりかもしれないけどね》

《弱点だ、弱点をつけ! それならやれる》



「弱点? ウスベニの弱点なぞ無くしてくれるわ。どころか全耐性までつけてやるもんね。はーはっは」


 のけぞり笑うモナ。その体は当然の如くバランスを崩し――。


 ――はっしと身体を伸ばし手を捕まえたウスベニによって、難を逃れた。


「お、おおお。ウスベニ、すまぬの。危うくまた倒れるところじゃった」


 ウスベニは何でも無いという風に身体を震わせ、椅子を直し、モナをそこに座らせる。



《ウスベニちゃん、有能》

《モナちん無能》

《無能と言うよりドジっ子》

《同じ失敗は2回までなんだよなぁ》



「うるさいわい。我もこけたくてこけたんじゃないんじゃ!」


 モナも顔を赤くして反論する。



《調子に乗るからいけないんだよなぁ》

《モナに高笑いは無理》

《笑いの三段活用は、なおさら無理》

《無理よりの無理》

《それってただ無理なだけでは?》

《は、じ、め、か、ら、わ、か、っ、て、た》

《話は戻すが、このダンジョンってアンデッドダンジョンなんだろ? 敵によっては物理無効とかあったりしないか?》

《あ~、ゴースト系はそうね……》

《序盤に出てくるなら、せいぜい半減とかで出てくれねえかなあ》

《後はアンデッド系だと、スケルトン系かゾンビ系か》

《ゾンビも走るやつか、両手挙げてゆっくり来るやつか》

《それなりに選択肢多いな》

《ゾンビなら、顎切ったら飼い慣らせないかな》

《そんなんできるの、フィクションだけじゃないかな》

《ダンジョンもフィクションみたいなもんだよな》

《まあ、それ以前にゾンビはなぁ》

《いやですー。ぜったいくちゃいじゃん》

《おじーちゃん、おくちくちゃい》

《孫、やめてさしあげろ。おじーちゃんには仲良くしてあげろ。その方が懐も温かくなる》

《年金巻き上げてるんだよなぁ》

《おじーちゃん、孫と遊べて嬉しい。孫、懐温かくなって嬉しい。Win-Winの関係やね》

《うーん、この……》

《まあでも、ゾンビ系序盤にいっぱい出てくるんじゃ、過疎りそうよね》

《ということは骨かねぇ》

《モナ、そこら辺は……》



 モナの顔色をうかがおうとしたコメント。だがそれも絶句となる。モナの表情がデフォルトのまま固まっていたからだ。


「――――――」



《モーション切ってるwww》

《いきなり最終手段で笑う》

《確かにそれだと表情読めねーわ》

《ま、まあ、マヨにネタバレ聞くのはやめようか》

《せやな、見てればわかるし》

《あまり深くつっこむのはやめるか》

《まああくまで仮定として骨が出てくるなら斬れるな。脳筋姉貴の言ってることにあながち間違いは無い》

《ただなぁ、それはあくまで俺たちがここがアンデッドダンジョンって知ってて、想像を巡らせた結果であってだな……》

《この動画始まる前の段階じゃ、ダンジョンごとのコンセプトなんて話、出てなかったよね》

《んじゃやっぱり脳筋か?》

《せやねぇ》




 そんなコメントを証明するかのような会話が画面上で繰り広げられていた。


「千留姉ぇ聞いてる? ここのダンジョンはゲームで言うアンデッドがよく出るの。ほとんどは武器を持ったスケルトンらしいんだけど……」

「人型か……、なおさら斬りやすいじゃないか」


 チルは口角を上げる。それを見てサクは両手を振り下ろし不満をあらわにした。


「そうだけどそうじゃないの。最後まで聞いてよ千留姉ぇ。スケルトンは倒せるだろうけど、問題はそれじゃ無い。たまに出てくるゴーストの方なの。幽霊はさすがに斬れないでしょ」


 その言葉にチルは顎に指を当てしばし考え込む。


「まあ、大丈夫だろう。幽霊とて存在がある以上斬れん事は無いだろうし」

「またそんな無茶苦茶言ってー」


 ぷっくりと頬をふくらますサクの頭を、チルは軽くなでる。


「そうむくれるな、咲。何も私は根拠もなく言ってるわけじゃないんだよ」

「どういうことよぉ」


 頭をなでる手を煩わしげに、だけどそのままにしながらサクは姉に問いかけた。チルもそれに答える。


「これが深く潜った先ならまだしも、まだ一番最初の階層だよ? クラスを持たないものが多くいる階層に、物理完全無効の魔物を安易に配置するとは考えづらい」

「そうだけどぉ。もしだめだったらどうするのよ」

「そりゃ、ケツをまくって逃げるだけさ」


 サクの頭をポンとひと叩き。


「もう、女の子がケツなんて言わないの」

「はは、私は咲と違って女の子なんて年齢じゃないし、そう思われたこともないからね。ノーカンだよ、ノーカン」

「もう……」


 膨れるサクに、ああそうだと、チルは問いを付け加えた。


「咲はどうしてここのダンジョンで出る魔物を知ってるんだい? まだそんな情報は出回ってないはずだろ?」

「そんなの先に入った人に教えてもらったに決まってるでしょ。それに入る前にここの職員さんに確認もしたし。アタシは千留姉ぇと違ってとりあえず突撃とかしないの。ちゃんと事前に準備するの」

「うーん、いつも思うが咲のは事前準備を越えてる気がするね。なんで都合よく知り合いが先に入っているのやら……」


 チルは困ったような顔をして、それでも――、


「まあ、助かったよ」


 ――もう一度サクの頭を軽くなでる。


「なによ、もう」


 サクは口をとがらせ、それでもまた、その手を払いはしない。


「咲は下調べして、私のことが心配になって無理についてきたんだろう? そりゃあ感謝もするよ」

「むぅぅ」


 とがらせた口の端がわずかにほころぶ。


「巫女の装束に千早まで家から持ち出してきたのもそれが理由だろ。アンデッド、いや幽霊なんかが出てき時なんとかするために……。うんうんそうだね、斬ってもダメなら咲に頼った方が良さそうだ」


 チルは呵々と笑い、足をダンジョンの奥へと向ける。


「もぉぉ。それがわかってるなら千留姉ぇも一回出て着替えてきなよ。千留姉ぇの装束も持ってきたんだから」


 追いかけるサクの言葉に、チルはひらひらと手を振って答える。


「どうせサクの持ってきたのは水干か何かだろ? それよりこっちの方がずっと動きやすい。それに、幽霊がどうしようもなければ咲がなんとかしてくれるだろう?」

「そうだけど、そうだけどぉ……」

「なに、それでもどうしようもなかったら、咲くらいは担いで逃げてやるよ。お前はちっこいからなぁ」

「そういうこと言ってるんじゃないの、もう」


 口では文句を言いながら、でもその顔はほころばせ、サクは姉の後を追いかけていった。



《いい関係性》

《はぁ、尊い》

《はさまりたい》

《死ね!!》

《絶許》

《あれは遠くから眺めるモノ》

《不用意なこと言うから……》

《妹ちゃん、お姉ちゃんに振り回されてるなぁ》

《でも、それでも、いやそれが楽しそうじゃんか》

《慕ってるんだろうねぇ》

《そこら辺どうなのよ、若旦那》

《ノーコメントで》

《ぬぅ、口が堅い》

《もっと、がばしていいのよ》

《姉は考える脳筋だったなぁ》

《物理はすべてを解決する》

《そうして妹ちゃんのネットワークよ》

《一階だけとはいえ、その日の内に出てくる敵がわかってるとはね》

《職員さんにも聞いたって言ってたからな。俺たちには無理だ》

《コミュ障の俺たちにはな……》

《『ありがとう』、『すみません』、『どうも』の三つの言葉で世の中は切り抜けられる》

《それは極論じゃないかなぁ》

《イケルイケル》

《まあいうて画面の姉妹、コミュ力高そうよな》

《そこどうなの、若旦那》

《姉は年下、そして女の子に人気ある。妹は男女年齢問わず人気あると見た》

《確かにそうだけど、なぜわかった……》

《はは、数々のフィクションを見てきた俺には造作も無きこと》

《悲しい告白なんだよなぁ》

《でも若旦那、口を滑らせたな》

《は!? しまったぁ!!》

《これはいけませんなぁ》

《あーあ、個人情報ばらしちゃった》

《おい、それはないだろう、てめえら》



 新たなおもちゃの発見により、コメント欄はダンジョンそっちのけで活気づいていた。

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