秘密多め令嬢の自由でデンジャラスな生活〜魔力０、超虚弱体質、たまに白い獣で大冒険して、溺愛されてる話

343.流民と育成とスーパーモデルの色っぽいため息

「流民達も、しっかりと働いてくれてますね」

「アリーのアドバイスのおかげよ」

　そう、アドバイザーになった時に真っ先に目をつけたのは扱いの困ってた流民さん達。

　一時的な処置として、正規の領民に混じって流民達もこの場所の温泉浴場化を手伝ってもらってるんだ。

働かざる者食うべからずだし、人手の確保って大がかりな工事には必要不可欠だもの。

　彼ら自身いつまでも不法滞在で肩身の狭い思いをしているよりも、働くことで一時的にでも居場所を作ってもらう狙いがある。

　流民達には寝食の提供と、資産形成まではできない程度の賃金を払ってる。

額はこの領の平均的な平民の子供のお小遣いくらい。

あまりに多いと隣国にいる他の人達がまた流民として国境を渡ろうとしたり、彼ら自身が出稼ぎの感覚になるといけない。

　彼らは流民という名の不法滞在者だっていうのを認識してもらわないと。　

　もちろん全員の名前と身体的特徴を書いてもらってて、お小遣いの管理は領の役人がしてる。

申請すれば手渡すけど、彼らの身の振り方が決まるまでは使うのはこの領内だけ。

この領の景気循環にも一役かってもらって初めて領民に認められる一歩に繋がるんだ。

　もし国に戻るか正式な形で他領に移るなら残金は一括で手渡すし、この領にとどまるならまずは納めるべき税金の一部になる。

お金を使えばこの領に還元されるから、双方にとって悪い話にはならない。

　どんな理由でも働くにはモチベーションを上げる何かがないと、やっつけ仕事的になれば作業が雑になりかねないし、安くても賃金は必要だ。

　12才以下の流民の子供にも孤児院を託児所代わりにして読み書きを教えつつ、孤児達に混ざって何かしらのお手伝いはしてもらってる。

お手伝いできないほど幼い子供は賃金から託児所代を払ってもらってるんだ。

　流民の何人かはそちらで孤児達も含めたお世話係に回したみたい。

　人件費を安くするのも大事だし、お互い状況的にはウィン・ウィンで良いんじゃない。

この地域の領民達も外国人達の空気に慣れる時間に繋がるしね。

　孤児院は廃村になりかけだった隣村に元々あったから、温泉街の一部として真っ先に建て直した。

未来の温泉宿も併設してて、一時的に仕事をする事に同意した流民達の宿屋にしてるよ。

「まさかこんな風に人材を確保して、次の人材を育成するなんて。

流民は数日だけパンとスープを与えて強制送還するだけだったけれど、飴と鞭ね」

「あくまで隣国の裁可が下りるまでの暫定処置ですが、今までみたいにしてしまうとせっかく人員とお金をかけて整備したこの場所の治安が再び悪化してしまいます。

不法入国者の寝食を領民達の血税で賄うと何かしらの不審を生みますからね」

　ちなみに同意しない場合は従来の不法滞在者より厳しい扱い、というか本来のこの領の扱いに戻してもらったんだ。

　一時的にこの領にあるお城の牢に収容されて、当然だけど翌日には強制送還。

この領の利益にならない他国の人にタダ飯はふるまわない。

「そうね。

少し可哀想に感じても、うちの領に余裕はないもの。

領民はもちろんだけれど、働く事を選んだ流民達にもしめしがつかなくなるのは駄目ね。

大きな紛争が無くなって友好国だからって対処を弛めていたけれど、ファムント領は国を守る辺境地だって事を忘れてはいけないし、忘れさせてもいけなかったわ」

　スーパーモデルなジェン様は覚悟を決めて領地改革をしてる。

僕はここに来てからのジェン様しか知らないけど、少しずつ領主らしいお顔になってるんだ。

「孤児院の立ち回りや教育をうまく確立させれば、子供達の成人してからの就職先の幅が広がります。

流民やその子供自身も知恵がつけば、仮にザルハード国が強制送還を希望しても働き口が見つかるかもしれません。

そうすれば将来的な流民は減る可能性もあります」

　何せこの国も隣国も成人は13才。

僕の感覚的にはまだ体の出来上がっていない子供だもの。

ただでさえ立場が弱いんだから、下手にブラックなお店に出稼ぎなんて事になったら大変だ。

　上手くこの領が発展すれば雇用先は増えるし、他の土地に移住するにしても読み書き算盤と人慣れはできてる方が良い。

この世界は特に知識は身を助けるからね。

　流民の子供達も同じだよ。

貧しい子供の親はいついなくなるかわからない。

　今温泉街として足湯だったり従兄様達が作ろうとしてるカフェなんかの飲食店も含めた観光施設ができつつあるけど、教育ができていればこの土地の人を優先的に雇用する意向なんだ。

「そうね。

将来の働き手の育成も考えて動かないと、領政が回らなくなって破産してしまうものね」

　これからできる貴族用の温泉施設もそうだね。

特にそちらは教育を徹底する必要もあるから、まずは外部から人を引き入れなくちゃいけないっていう課題があるんだよ。

　先に大衆向けの温泉施設を作ってるのは貴族向けの施設ができてもすぐに稼働できないから。

話題になってる間に景気をさくさく回して人件費なんかは回収していかないと、いつまで経っても赤字を黒字転換なんてできないもの。

　先の長さを憂いてかジェン様は、ほうっとため息を吐いちゃった。

でも憂い顔のスーパーモデルは色っぽいね。