210.吹き出す王族と威圧
「またいつの間に····」
「たまたまですわ。
職人の方々の知識があってこそで、助言などという大仰なものではございませんもの。
他国の商会についても、たまたま知り合いの商人が訪ねていらして下さったから、たまたまお話をしただけで動いたのは彼らや土を管理する国王陛下方ですもの」
ルドルフ王子、呆れた顔でまた余計な事言いそうにならないでよ!
こういう場なのに思わず遮っちゃったじゃない。
エヴィン国王も面白そうだからって静観するの止めて欲しい。
「ですが私、最近よくグレインビル嬢が商人とも広く交流がおありのようだというお噂を耳にしますの。
あら?
でも中には気難しい商人や荒々しい諸外国の商人もいるのではなくて?
グレインビル嬢のような儚げな方ではお相手できないのではないかしら?」
おっと、公爵令嬢いきなりの参戦?!
確かに僕って儚げ虚弱体質だからそこは否定しないけど、僕が個人的に名のある商会の会長さん達とお付き合い出来るわけないって言ってるのかな?
「父を介して知り合った方々ですから、そうした方とお話しした事はまだありませんの」
もちろん嘘。
そんな気難しかったり、荒々しい商人は北の諸国にこそ多いって知らないのかな?
「左様でしたの?
ご家族はかのご高名な魔術師一家とこの国でもお噂に聞く方々ですものね。
ならば他国であってもさぞその名はお力になってくれまたのかしら?
皆様グレインビル嬢の後ろ楯に惹かれましたのね」
つまり僕は家族の力を使って七輪作ったり、商会長さん達と仲良くしてると言いたいのかな?
わざと魔術師一家を持ち出すのは僕の魔力が0なのを揶揄してるのかな。
「はい。
お陰様で家族に愛されておりますから、この国に限らずどこにいても力になってくれましてよ」
でも僕は肯定しかしないからね!
むしろそれって僕の家族はとっても気が利いてて、強くて格好いいって事だね!
「グレインビル侯爵家の皆様は慈悲深い方々なのですね」
だから僕のような者まで愛するんだと言いたいらしいね。
「作用にございますわ」
もちろん激しく同意する!!!!
僕はにっこり満面の微笑みを令嬢に向ける。
うん?
眉を潜めてどうしたの?
はっ、僕の家族がいかに素晴らしいか聞きたいとか?!
もちろんいいに決まってる!!
「まず、お父様はとてつもなく凛々しい殿方で、魔術師としてだけでなく領主としてもやり手ですの。
お母様がお亡くなりになって何年も経っておりますが、未だにお母様一筋の、娘としては大変に誇れて素敵可愛い父ですわ」
「か、かわ····そ、そう」
「はい。
長兄のバルトスお兄様はお母様に面差しが似て優しげな外見をしておりますが、一人称は俺。
世の女性はきっとギャップ萌えなるものを起こしてしまうこと間違いなしです。
魔術師としての腕ももちろんですが、頭脳明晰でお母様や私との約束は必ず守ってくれる義理堅い、男気のある人柄で面倒見は実はよろしいんですのよ」
「わ、わかりましたわ。
もう終わ····」
なに?!
僕にはもう1人義兄様がいるのに!
遮っちゃえ!
「いいえ、次兄のレイヤードお兄様がまだでしてよ。
レイヤードお兄様はお父様似の凛々しいお顔に似ておりますの。
学園を卒業されてからは冒険者をされております。
そのためか美少年らしい顔つきや体型から、見事に美青年らしい顔つきと体型を手に入れられ、まさに洗練された精悍さが備わりましたわ。
ですが決して荒々しく粗野な先入観はお持ちにならないで下さいませね。
私がこのような魔具を作って欲しいとお願いすれば、必ずそのように作って下さるイメージ力と緻密さ、そして魔具作りに必要とされる忍耐を兼ね備えておりますわ」
「お、終わり····」
「ですから····」
「まだ続きますの?!」
「あと少しですわ。
もちろんお聞きになりたくて私の家族の話をお振りになったとわかっておりますもの。
ご期待にそいましてよ!
ですから、グレインビル侯爵家の面々はただ慈悲深いなどという底の浅い綺麗事を吐き出すのではなく、実力が伴い私の事を守り、慈しみ、必ず力になる事ができる真の慈悲深さを兼ね備えた者達なのです!」
ふう、言い切った。
「····え、えっと····そ、そう。
とっても良いお顔を····ではなく!
つまり、そうした貴女の実績のようなお噂は全てご家族のお陰で貴女の実力ではないという事ですのね」
え、何この素敵発言。
どこぞの世界の悪役令嬢のような決め顔も素敵だよ!
目立ちたくない僕の求める判断そのものじゃないか!
「当たり前ではありませんの!
そもそも私、まだ成人手前の小娘でしてよ!
それにいつも申し上げておりますわ。
全ては家族のお陰だと!
やっとわかって下さるご令嬢に出会えて嬉しゅうございます!」
さあ!
明日以降の貴族の女子会で徹底的にこの話を広めてくれたまえ!
積雪なんかに負けずにしっかり交流してよね!
これ以上のロイヤルとの巻き込み事故なんかたまったもんじゃないんだから!
「「「ぶふっ」」」
おや?
僕の上座方向から吹き出す笑いが3つ?
宰相さん、何故呆れた目で僕を見るの?
いつもの冷たい水色はどうしたのかな?
「あ、貴女····何故そんなに喜々として自らの功績を家族へ下げ渡しますの?!
周りが何を言っても実際のところその功績が貴女のものとして揺らがないという自信の表れとでも?!」
「····え、何でそうなりますの?
家族の力なのですから当然のお話をしているだけですのに」
「くっ、何ですの、その自信。
まさか何か罠に····」
「ビアンカ、止めなさい」
そこで宰相さんは止めに入った。
さすがに父親の指示には従うみたいで途中で止まる。
「お父様」
「グレインビル嬢も申し訳ない。
どうやら娘は君の才能に嫉妬したようだ。
だが謙遜も過ぎれば嫌味になる。
貴女はまだ成人していない子供なのだから、素直にその功績を受け取れば良いのだよ」
····何だろう。
このきかん坊な子供を宥めようとする生温かな大人の眼差し。
本当に、いつもの冷たい水色はどこへやったの?
「ふふふ、いや、公爵、申し訳ない。
グレインビル嬢の家族が大好き過ぎる所は、昔からブレた事がない。
謙遜ではなく心からそう思っているから、一周回ってむしろこれが素直な言動なのだ」
「····なるほど」
····何だろう、褒められてる気がしない。
「だからご令嬢。
才ある者は、故に自ら才ある者と気づかぬ上、この者もその家族も互いに愛し慈しむ事を隠しもしない。
どのような意図を持ってどちらかの家族を褒めても、結局は喜んでしまうから虚しくなるだけなのだ」
「意図などと····」
ルドルフ王子、よくわかってるね。
家族褒められるのは大歓迎だよ。
「逆に貶す事になれば有無を言わさず落とし前をつけさせるのがグレインビルだぞ、ビアンカ」
エヴィン国王ってば、王子が穏便に済ませようとしてるのに割って入らないでよね。
そもそも僕だって無闇に女の子に落し前なんてつけないからね。
だから元将軍が威圧するのやめてあげたら?
こっちサイドの下座2人は困惑してるし、女の子も震えて可愛そうじゃない。
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