117.狩り~sideヘルト1

「ちょっと叔父上ぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

「嘘でしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

「何故私達まで巻き込まれるぅぅぅぅ!!!!」

「これが諦観てやつかなぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 私とレイヤードはあのむかつく甥と悪友、そして致し方ない事故によって悪友親子と行動を共にする事となった自他国の王族2人を餌に氷竜を誘き寄せた。

ついでに可愛い娘が欲しがりそうな魔獣素材を効率良く手に入れようと魔獣寄せの香も焚く。

あの子お手製の香は本当に良く出来ているな。

もう集まってきたぞ。

さすが私の可愛い天使


 4人はほどなくして魔獣に追いかけられながら氷湖を走り出て、山道を下る事となった。

仕方ないので私もそれを遠巻きに追いかける。

王族に怪我をさせると後が面倒だからな。


 ちなみに火蜘蛛の素材と卵は私の愛しい妻ミレーネの面影が無くもない、あのやらかし体質の悪友を使って早い段階で採集済みだ。


 冬眠しているだろう地中を掘りかえして奴の首から下を埋め、持たされていた火蜘蛛仕様の香を頭に乗せて待てばすぐに出てきた。


 可愛い娘から言われた通り、あの子お手製のやたら酒精がきつい液体を蜘蛛の腹の方にぶつけてみた。

すると弱ってしまったのか酔ったのかわからないが、随分簡単に素材を傷つけずに狩る事ができた。

うちの天使の着眼点はなんて素晴らしいんだろう。

途中火蜘蛛が火を吹き、あの酒に引火して何匹か仲間ごと燃えてしまったのは残念だったが。


 素材や卵は大容量タイプのマジックバッグに入れてある。

うちの息子も素晴らしい発明の才能を持っている。

こないだは妹のドレスのポケットに自らの新作、マジックポケットを縫いつけて妹が特注でこしらえた手術道具なるものや薬、気配消しの魔具等を入れていた。

息子の心配症もなかなかのものだ。


 大小合わせて20匹ほど入れたところで悪友の首根っこ掴んで土から引きずり出せば、生意気に文句を言う始末。

怪我をする前に対処していたのに何故文句を言われるのだろうか。

これが巷で流行りのイチャモンと言うのか?


 火蜘蛛が吹いた火と娘お手製の酒で炎が上ったのは不可抗力だが、せいぜい奴の前髪が燃えた程度だというのに、本当に昔から大袈裟な男である。


 ここ連日苛々させられっぱなしだったのもあって、今度は氷竜を呼び寄せる餌にでもしようと心に決めた。

可愛い息子の元へ向かえば、途中狸親父国王陛下に出くわすから今日はいよいよついていないらしい。


 あの時のクソ王子と息子王太子を連れて行けと言われ、以前やられたように泣きつかれる気配を感じた為に仕方なく引き受けた。

あの時の涙と鼻水劇場の再現はもうごめんだ。


 クソ王子の護衛らしき竜人も共に連れて山頂の息子に合流すれば、への食いつきが悪かったらしくご立腹中だった。

採集できたのは氷蜥蜴と氷蛇ばかりで、それはそれで可愛い天使は喜ぶと思うが兄心としてはどうしても不服なのだろう。


 ちょうど良いと悪友と甥をまとめて使おうとすれば、ついうっかり、本当にうっかりだが近くにいた王族2人、つまり合わせて4人をまとめて氷竜の気配がする氷った湖に投げ込んでしまった。

例の護衛は見守ると決めたようだから、まあ問題あるまい。


 うちの娘がいれば、うっかりさんだねとか言いながら私の頭を撫でてくれたに違いない。

うちの娘はとっても可愛いのだ。


 今頃は大方、癖の強い高位貴族の婦女子に絡まれているだろうあの子の所に早く戻って抱きしめてやらねば。

中には愛しの妻の知り合いもいて、彼女達の悪のりが心配だ。

あの子はあれで神経質な所があるからな。


 仕方ないのでレイヤードが持たされていた氷竜寄せの香と魔物寄せの香を同時に燃やして氷の一部を溶かしつつ風で拡散させ、さっさと終わらせる事にしてやった。


 やっと氷の下から現れた氷竜は番だったらしく、息子は妹へのお土産が増えたと喜んでいた。

まだまだ少年らしい面影が抜けきらない可愛い息子が見れて何よりだ。


 それにしても、どこぞの不良品が言うところの由緒ある血筋であるはずの公爵バカ親子に隣国の王太子候補、うちの王太子が雁首並べてあの程度で取り乱すとは情けない。


 もっと引きつけてから凍った湖を脱出すれば良いものを、慌てて走るから氷を踏み抜いたり雪解けで滑りやすい山道を転がるのだ。


 特に悪友、お前だ。


 氷竜2匹はレイヤードが狩るだろうし、他はせいぜい強くてAの下位ランクの魔物が約10匹に他はBやCランクが50匹程度集まっただけだ。

思っていたより一気に集まったが、かつてのグレインビル領で兄をしごくのにうちの天使が集めた時よりは少ない。

まあこの山自体にはこれまでに間引くのを怠ったのかと思うくらいには魔獣も無駄に多いが、ここに強いのが集まったようだから他の千匹程度は烏合の衆でしかない。


 三大筆頭公爵家に2つの辺境領主一家が揃っているのだから問題ないな。


 お、うちの息子は雄を仕留めたか。

その場に眩しい稲光が走った。

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