第93話 殻を破る

スクリーンをみると各所に配置されたカブトムシ達を通じて石碑の様子が映し出されていた。


『敵さん、石碑の装置を起動しやしたね。今、流れ出した魔力パターンを経由ルートごと解析してやす。…解析完了。…カウンター魔法及び追撃の雷撃発動。』


石碑が発光しながら複雑な魔法陣を幾重にも展開していく。


魔法陣の数が増えるにつれて、石碑が赤く変色し所々にヒビが入り始めた。


(うわぁ。これ本当に倍返しで済むのか?紅ゴブがダンジョンのみんなから魔力を貰ってたけど、集めすぎたんじゃないか?)


紅ゴブが「マリオネット」で操られた時のようにスクリーンを見つめたまま無表情になっていた。


(ダメな顔になってんじゃん…。)


「ダミアン、エンヴィー。紅ゴブのフォローをお願い。…“紅い流星のゴブライオス”ッ!お前の力はそんなものか?」


紅ゴブは意識を取り戻し、即座にリカバリーに入る。


『すいやせん。…装置に対して詰め込んだ魔力が多すぎたんでさぁ。ここは突貫ですが、追撃の雷撃をドラゴンライトニングよりも強い雷魔法に書き換えやす。若旦那、お手伝い願えやすか?』


コウスケの肩の上で食事をしていたモンタが満足そうな顔でサムズアップをキメる。


『紅ゴブ、殻を破るか破らないかは今ここで決まるぞッ!』


紅ゴブもカッコ良くサムズアップをキメる。


(どこの青春マンガだよ…。)


『若旦那ッ!ここにドラゴンライトニングよりも強力な魔法文字を組み込んでくだせぇ。強ければ強いほど助かります。』


(なるほど、このスクリーンがパソコンみたいになってるのか。)


コウスケは、今自分が使える最大の雷魔法を準備する。


「こうでいいかな?」


クロンも聖剣形態になりサポートに加わる。


『フハハ。我も手伝うぞッ!』


コウスケとクロンが“雷神×5”の魔法文字をスクリーンに埋め込むと、紅ゴブは一瞬驚いた表情をしたがカッコ良く頷いた。


(本当に英雄みたいな顔になってきたな。殻を破るか…。)


『ダミアン姉さん、エンヴィー様、行きやすぜぃッ!はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!』


≪仕方ありませんね…。ここで殻を破って、もっとマスターのお役に立てるよう精進するのですよ。≫


”メタモルフォーゼ-ダミ吉-”

≪失敗?上等じゃねぇかッ!思いっきりやった結果なら、それは失敗じゃねぇッ!“糧”だッ!胸を張りやがれッ!紅ゴブッ!≫


ダミアンとエンヴィーが紅ゴブのつくったシステムと接続し、高速でプログラムを修正していく。


『でやぁぁぁぁぁぁぁぁッ!』


石碑がもとの色に戻り、幾重にも展開された魔法陣が正常に動きだす。


≪≪『くらえッ!カウンター&トラップ魔法”紅い流星”~雷神を添えて~』≫≫


(フランス料理っぽい技名になった…。)


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