第3話 これが天才というやつか
「よーし、テスト返すぞー、取りに来い」
早々に採点が終わり返されるテスト。なぜかこの担任、採点が尋常じゃなく早いんだよなぁ……。
「お前、勉強してないとか冗談すぎるだろ」
「本当ですが何か?」
「はぁ、天才はいいよな」
取りに行くとげんなりした表情をされる。そんな表情をされるということは……。足早に席に戻ると点数を確認する。
「よっしゃ……!」
小さくガッツポーズする。予想通りの点数。だが、勉強していない俺としては、今までで一番嬉しかったかもしれない。
「響くん、点数どうだ、た……」
ニコニコしながらテストを覗きに来た奏季が固まる。その手からテストが滑り落ちた。目に入った点数は198点。
「おう、満点だった」
満面の笑みを浮かべて言うと、奏季は黙って隣の自分の席に戻る。そしてガバッと顔を伏せた。
「響くんのバカ」
「バカってなんだよ」
「勉強してなかったんじゃないの?」
「してなかったけど?」
「嫌味だ」
「嫌味じゃないって」
本気で落ち込んでいるのか、なかなか顔が上がらない。まぁ、俺、数学は得意だからな……。やりすぎたか、と反省する。満点取るに越したことはないけど、意地悪しすぎたな。
「勉強してない響くんに勝てないんじゃ、一生勝てないじゃん……」
「そんなことないと思うけど。奏季だってあと一問で満点じゃん」
「そうだけどさ……僕は勉強してるから……」
普段の奏季からは想像もつかない沈んだ声。そんなに俺に勝ちたかったのかよ。
「はぁ、別にお前は英語得意なんだしいいだろ。人それぞれ得意なものなんて違うんだしさ」
「まぁ、そうだけど……」
「そういえば俺、気になる子できたんだよね」
「ほんとに!?」
「お、おう」
奏季がガバッと顔を上げて俺の方を見る。立ち直るの早いわ。
恋バナが好きな奏季らしい反応に思わず吹き出す。
「プハッ。お前そんなに気になってたのかよ」
「当たり前じゃん! 人とほとんど関わろうとしない響くんに友達ができただけでも意外なのに、気になる子なんて……!」
「酷い言い様だな」
思わずつっこむ。俺が友達を作らないのはめんどくさいからであって、趣味が合う美亜はまた別である。
まあ、そんな説明をするのもめんどくさくて濁すが。
「まぁ、ちょっと色々あったんだよ」
「色々って!?」
あ、墓穴掘った。慌ててどう返そうか考えていると、全員にテストを返し終わった担任が喋り出す。助かった。
「テストお疲れさん。できたやつもできなかったやつもいると思うが、全員復習はちゃんとしとけよー。あと、満点は一人、初果だ」
『はっ!?』
クラス中の視線が一斉に俺に向く。急なことで表情が引きつった。
「まあ、そいつは規格外だから気にすんな。しっかり勉強するように。以上」
担任がクラスから出て行くとクラスがざわめきに包まれる。
「あいつ勉強してないんじゃなかったのかよ」
「まあ、頭いいしな……」
「はぁ、イケメンで背高くて頭いいとかどんな優良物件よ」
「もうちょっと優しかったらタイプだったかなー」
「それは求めすぎ」
思い思いに噂されてため息しか出ない。
と、その時、急に後ろから両肩を掴まれた。
「響くん、さっきの話、マックドで聞かせてくれるよね?」
「あ、はい……」
奏季が逃さないというように目を光らせていて、俺は鳥肌が立ったのだった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
読んでくださりありがとうございました!
マックド……みなさんご存知の『あの』お店ですよ。私はアップルパイがお気に入りです♪
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます