第8話 暗闇の中で君想う

 短めですが、重要回……! 一章はもう間も無く完結いたします!




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「「「「「ワァァァァァァ!」」」」」


 肌に熱気を感じる。ラ・プルェーブの四人に誰もが興奮して声をあげ、手を振って体を揺らしている中、俺はいまいちテンションが上がらずにいた。


 理由は単純。隣に座ってる美亜のことだ。


『……鼻の下伸ばしすぎ』


 そう言った美亜の目はそこはかとない暗さがあった。お手洗いから戻ってきてもすごく静かで、今も静かにライブを眺めている。さっきまでの興奮した様子の美亜ではない。俺はなんで美亜がこんな様子なのかわからず、戸惑っていた。


 そのせいで俺はライブに集中できずにいる。どうしたらいいのか、何が悪かったのか。そもそも好きでもない相手をなんでこんな気にしなければいけないんだ、と思ってはいる。でも、今日彼女が見せてくれた笑顔が無性に見たくなってしまったのだ。


 観客席は暗く、彼女の表情はよく見えない。ステージの光でなんとか輪郭を捉えることができるだけ。

 あんなにミーサちゃん推しだったのに、ミーサちゃんと会ってから元気がないなんて……。


 ちょっとショックを受けてると、不意に昼間の言葉を思い出した。


『絶対君を振り向かせてみせるから!』


 今思い出しても、その瞳は力強くて綺麗で、その言葉の本気度を感じ取ることができる。


「なんで、初対面の俺に本気になるんだよ……」


 とその時、くらっと目眩がした。


『……くん! ……くんってば! 大丈夫?』


 あれ、この声どっかで聞いたことが……瞼の裏に幼い少女の面影が浮かび上がる。それは偶然にも、美亜に似ているように感じられた。

 しかし、どこか懐かしいその面影はあっという間に消え去り、俺は現実に引き戻される。


「俺は、何を見たんだ……?」


 考えてもわからない。目眩はすっかり消え去り、俺に疑問だけを与えていったようだ。


「みんなー! 最後の曲、準備はいいー?」

「「「「「いーよー!!!!!」」」」」


 考え込んでいたら最後の曲になってしまっていた。せっかく楽しみにしていたのに、ほとんど集中できなかったな。


 自分の様子に苦笑する。なんでこんなに美亜のことが気になるのか、俺はまだ答えを出せていない。だが、一つだけ確信したことがある。


 ーー俺は、この子に笑顔でいて欲しいんだ。


 美亜が笑顔だと俺も笑顔になるし、美亜が落ち込んでいると俺も落ち込む。

 だから、彼女には笑顔でいてもらわないといけない、俺が笑顔でいるためにも!


「美亜、後で話がある」

「う、うん、わかった」


 少し不安そうな表情になる美亜に、俺は大丈夫というように笑顔を浮かべた。


「今は何も考えずに、ライブの最後を楽しもう」

「……そうだね」


 俺の言葉に美亜は儚い笑みを浮かべる。


 最後の曲を俺たちは精一杯声を上げて楽しんだのだった。




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 読んでくださりありがとうございました。

 一章はあと二話で終了……!

 響夜が見た面影は誰だったのか、その謎は二章、三章と続いていく予定です。

 お楽しみに!

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