第25話 恐怖

ジョージが姿を消してから5分くらいたっただろうか。

あれから誰も声を出さない。


空気がヒリついている。


そんな空気の中コツコツと乾いた足音が響き渡る。

その足音の主であるメリッサが現れた。

メリッサは微笑を浮かべながらまっすぐと席へと向かう

その後ろに小さい影がついてくる。


影をよく見てみると

先ほど消えたときと全く同じ表情のままのジョージが

メリッサの後ろをついてきていた。


ゴクリ・・・

隣の席のフレットが唾をのみ込む音が聞こえてきた。


緊張感が高まった場に別の方向からも足音が聞こえる。

どうやらこちらの足音はバルシュのようだ。


さすがバルシュは領主としての勘が鋭いのであろう

席に着く前にこの異様な空気を察していた。


そんな中メリッサはバルシュに微笑みながら

「あら、あなた遅かったのね」


バルシュは声を少しこわばらせながら

「んっ あぁ 少し書類の整理に時間がかかってしまって」


「そう、でもちょうどみんなが揃ったことですし

午後も各自予定があるので早速昼食を頂きましょう」

メリッサは表情を一切変えることなくバルシュに提案をする


「うむ、それではみんな頂くとしよう」


「「いただきます」」


カチャ カチャ



食器の音だけが響く


オレはこの空気に耐えきればくなりフレットに話しかける。


「フレット兄さま食事を終えたら 朝言っていた ボール遊びをやりましょう」


「そ、そうだなジョージも行くよな」


コクリ

とジョージは一度だけうなずいた。


ジョージはよほど怖いものを見たのだろう

あの悟り顔から表情を変えられないまま食事をとっている

・・・かわいそうに


「そ、そしたら食事を終えたらみんなで中庭に集合な!」

とフレットは明るく声をかける


ジョージはコクリとうなずく


「は、はい、兄さま。食事を終えたらプレゼントでいただいたボールを持っていきますね!」

俺もすかさず返事をする


「みんな仲良く遊ぶのはいいけど 怪我には気を付けるのよ」

メリッサはいつもの様子に戻っている。

良かった。



「はい!母様」

ジョージは姿勢を正し、

今までに聞いたことの無いきっちりとした返事をしていた。

もはやこの返事は反応ではなく反だ・・・

一体あの数分の間に何が起きたのだろう

・・・かわいそうに


そして昼食を終え

「じゃあ、二人とも準備が出来たら中庭で!」

とフレットがオレとジョージに声をかけて一度部屋に戻った。


オレは部屋に戻る前に厨房へ行きランシェに肉を分け貰うことにした。


「すみませーん ランシェさんいますかー?」

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