第151話 星暦553年 黄の月20日 ちょっと趣味に偏った依頼(17)(第三者視点)
>>>サイド シェイラ・オスレイダ
「あと4日かぁ」
休養日と言うことで、今日は遺跡の傍に見つけた泉の脇でウィルと一緒にピクニックを楽しむことになった。
時間効率を重視し、移動には
何やらデルバンが来てからウィルの態度が微妙に変わったと思っていたら、もにょもにょと分かりにくいことを言ってきて、最終的には恋人同士になった。
「なにが?」
木のマグにティーバッグを使って器用にお茶を淹れていたウィルが振り返る。
「貴方達の契約が終わって王都へ帰るまでの日数よ。
20日間の契約でしょ?」
元々、将来のことなぞあまり考えていなかったから恋人同士になった際にも特にそれについて話し合ってはいない。
が。
この無関心さにはちょっと感心しないぞ。
「確かに一緒に仕事が出来ないから、共に過ごす時間は減りそうだな。
まあ、休養日には転移門か
通信機も魔石を多めに渡しておくから毎晩話せるし、極端には状況は変わらないんじゃないか?
仕事が早く終わったら夕食を一緒に食べるためにこちらに来るというのも可能だし」
肩を竦めながらウィルが答えた。
そうか、魔術師だから転移門は自分の魔力で移転できるお陰で費用は掛らないんだったわね。
普通の場合だったらそんな『恋人と夕食を食べるため』に転移門を使うなんて贅沢な事は余程の金持ちで無ければ出来ない。
「・・・そうね、気軽に転移門が使えるなら、あまり深く考えなくてもいいか」
お茶を渡したウィルが、小さく咳払いをした。
「ちなみに・・・シェイラって結婚とか、したいの?」
ぶっ!!
ゴホゴホゴホ!!!
思わずお茶を吸い込んでしまって吹き出す。
ちょっとぉ。
まだ、知り合って20日も経ってないのよ?!
いくら何でも気が早すぎでしょう???
「考えても無かったわ。
まだまだ先の話でしょう??
それとも、ウィルは子供が欲しいとか、何か願望があるの??」
ぶんぶんぶん!!
私の返事を待っていたお陰で咳き込むことはなかったが、勢いよく首を横に振った為、ウィルの髪がボサボサになった。
「まさか。
魔術学院を卒業して、事業が軌道にのってやっと金に困らなくなったばかりなんだぜ?
これからの人生を楽しむ時期じゃ無いか。
子供は特に欲しいと思ったことは無いし。
・・・シェイラは欲しいのか?」
恐る恐ると言った感じで聞いてきた。
いやぁ、だからさぁ。
まだ私達、知り合って20日弱よ?
いくら何でも子供の話をするのは早すぎるって。
「まずは自分の専門知識を磨いて、それこそ子供が居ても私に遺跡での発掘作業に関わって欲しいと思われるぐらいの学者になってからだわね。
第一、私達はまだ知り合って20日も経ってないじゃない。
こないだ恋人になったばかりなのに随分と気が早いから、余程そう言った方向に願望があるのかと思っただけよ」
ウィルが肩を竦めた。
「一応参考までに、こういう状況では何を考えておくべきなのかとシャルロとアレクに聞いたら、場合によっては女性は結婚と子供を求めるぞって言われてね」
・・・それってからかわれたんじゃ無い?
もしくは、貴族の常識の話なのか。
貴族だとしたら当主同士で既に話が付いた状態でのお見合いモドキが上手くいったときの話だろうし、商会の人間だとしたって家の当主とまず相談が入るし。
・・・やはり、ウィルがからかわれた可能性が高いかな。
思いがけず初心なウィルの言動に思わず我慢できずにやっちゃったんだろうねぇ・・・。
当事者じゃなかったら、私もついついウィルに色々吹き込んじゃいそう。
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