第3話

『兄上?』

!やっと来たよ、第3王子。遅かったな!

青みがかったつやのあるくせっ毛の黒髪に金色の瞳。

黒猫みたい。大きめな瞳はちょっとつり目がちで無表情だと怒ってるみたい。


侯爵令嬢は、小さな声で挨拶をして、今第3王子が来た道をしずしずと歩いて行った。

『最近侯爵令嬢と仲がよろしいですね』

『君と白薔薇ちゃんほどではないよ。彼女はお菓子をくれるんだ。』

ほら、と、侯爵令嬢から渡された小さなかごを持ち上げてみせる。

『良かったら、白薔薇ちゃんと食べるかい?』

と第3王子にかごを渡そうとする。

おいおいおい~、自分が貰った物でしょ??

第3王子は、それを右手で制して、

『白薔薇は?会いませんでした?』

『いや、今日はまだ会ってないけど?こちらには来てないんじゃないかな。

ああそうだ、これは君の?』

と左胸ポケットの私を指差す。

『?』

第3王子は、怪訝な顔で私を見る。

『…』

あんまりじろじろ見るからなんか恥ずかしいわ。

なんなのよ。

第2王子は私を胸ポケットから引っ張り出し、

『相変わらずラブラブだね。人形まで作るなんて。

これを探しにきたの?』

と、的外れな事を言いながら第3王子に私を手渡す。何を言ってるんだ、この兄ちゃんは。

『白薔薇ちゃんが来てるなら、後で2人でお茶しにきなよ。用意させとくから。』

と言ってそのままひらひらと手を振って行ってしまった。

第3王子はその場でじっと私を見続けている。

なんなんだ?この視線は?


もしかして、人形の私が私って気づいてくれた?

幼馴染みだから、わかってくれたとか??

私は期待を込めて第3王子を見つめる。

なんだか恥ずかしい。

と、おもむろにスカートを、めくられた。

!?

私を左手で持って、右手の人差し指で下からぺらん、て。

…ちょっと!

めくったまま、そのまま時間が過ぎていく。

…ちょっと!何してんのよ?

凝視してんの?

スカートの中がスースーする。

真面目な顔して

やだ、いつまで見てんのよ?バカ!エロ!

…私、今日どんなパンツはいてたっけ?

と、私をひっくり返して、またスカートをぺろんとめくる。

…ちょっと!!

あ、そうだ、白だ。レースのフリフリが両サイドについていて、右側に同じく白のリボンがついたかわいいやつ。

良かった~って、そんなのはいいのよ!

ちょっと第3王子いつまで見てるのよ?

私はスカートの裾を自分で直すこともできずめくられたままになってる。

~~いつまで!?

と、またひっくり返されて、もとの位置。スカートをまためくって、今度は左のふとももを撫でてくる。

人差し指と中指ですーっと、上から下へ。

右足に移って下から上へ。

指先が熱い。

そのままパンツの上で指先が止まり、フリルをなぞってお腹の方へ。おへその真下あたりのリボンの上で止まる。

まさか。

パンツ下ろすつもりじゃないでしょうね?

このエロ王子は!

人形相手に何してんのよ!

今すぐその手をふり払って、顔面パンチを入れてやりたい!

やだやだ、脱がすな!

と、指先がそのまま左のフリルをなぞっていく。

ほっ。

て、パンツのゴムをなぞらないでよ。何してんの?

君は爽やかイケメンのはずでしょ?

第3王子の指先が熱い。

触り方がエロい。

左のフリルの終点にきたら、足の方のゴムをなぞってきて。

やだやだ!そのまま、ふとももの方へなぞっていく。

だめ!!

抗うすべもなく、パンツの上から触られちゃう。

そのまますっと、熱い指先が右足のふとももに移動して、パンツとの境をゆっくり進む。

やだ!だめ!


今日は話し合いに来たのに。

最近私を避け続けてる、第3王子の態度について。

これからどうしたいのかを。

もし本当に好きな人ができたなら、婚約解消も視野にいれて。

私達の婚約は、親友同士な両母の言い出した事。

一人娘の、私のところにお婿にくる形になるんだから、第3王子としては納得できないのかもしれない。

子供の頃は、身分なんて関係なかったけど、王族、貴族の集まるこの学園に入って色々思うところがあるのかも…。

冬の間から入学まで、我が白薔薇領に帰っていた私。

第3王子に再会したのは入学式の前日。

久しぶりに会った彼は、急に背が伸びて、顔もちょっとしゅっとなった感じ。

なんだか大人っぽくなった。

どこが違うのか、もっとよく観察したくて近づこうとしたら、私の視線を避けるように、逃げた。

それからずっと避けられてる。


いつまでもこんな宙ぶらりんな状態はいやだから、すっぱり婚約解消して、普通の幼馴染みに戻りたい。

王子と伯爵令嬢じゃあ、普通の幼馴染みは難しいかもだけど、少なくとも学園にいる間は、接点がないわけじゃないから。

以前みたいに付き合えたらいいなって、思ってたのに。


何すんのよ!?

エロ王子!

よっぽど、パンツが気に入ったのかその上だけをゆっくりなぞっていく。

~~体は人形だけど、心は、感覚はいつもの私なんだよ~。なんだか変な感じになっちゃう。



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