第17話 真剣なお願い

 とりあえず俺は失われしHPを回復するため、一ノ瀬さんの死角でこっそりと薬草(微)を二回飲んだ。


「さて、じゃあ進もうか。但し、神剣ドーンはやめよう。スライムにならチョンでいける」


「確かにそうですね」


 俺たちはお互い苦笑いし、ダンジョンを進み始める。そのあと一ノ瀬さんは言った通り、神剣ドーンではなく、神剣チョンでスライムを倒していった。本来チュートリアルダンジョンのスライムは神剣じゃなくてもこんな感じで倒せるのだが、俺の場合だと何十発も弾丸をぶちこまなきゃいけなかったり、短剣でグサグサ、グサグサ刺さなきゃいけなかった。そのことを思うと、一ノ瀬さんの神剣ムーブがすごい楽そうに見えてしまう。つまり、神剣貸して欲しい。


「あの、一ノ瀬さん」


「はい、なんでしょうか?」


「俺たちってアイテム共有できるじゃないですか」


「? えぇ」


「その……、ちょっと俺にも神剣装備させてくれません?」


 なので俺も一回楽勝でスライムを狩りたくなって、お願いしてみた。


「もちろん、良いですよ。では装備を一旦解除しますね。はい、どうぞ」


 一ノ瀬さんは快諾してくれた。そして神剣をアイテムボックスへと仕舞う。


「ありがとうございます」


 俺と一ノ瀬さんのスキル【アイテムボックスLv1】は共有アイテムボックスになっており、お互いがアイテムを自由に出し入れできる。なので、一ノ瀬さんが仕舞った神剣は俺のアイテムボックス内にも表示されており、この神剣カーディナルを──。


「装備、神剣カーディナルっ! あれ? 装備、神剣カーディナルっ! って、エラーログ?」


【神剣は所有者のみ装備でき、いかなるスキルによっても譲渡できません】


「……ありがとう。一ノ瀬さん」


 儚い夢であった。


「……ドンマイです、辰巳君。きっと辰巳君にも素晴らしい武器が手に入りますよ」


「あぁ、頑張るよ……」


 本当は素晴らしい武器ではなく、神剣ドーンがしたかった。一ノ瀬さんには神剣ドーンするなと言いながらも。


 そんなこんながありながらもスライムを狩り続け、順調に三層まで辿り着いた。遂にスライム以外のモンスター、ゴブリンと相まみえる。


「辰巳君、ゴブリンがいます。それも二体同時に」


「うん、じゃあ俺がこん棒を持ってるヤツを引き付けるからその間に一ノ瀬さんは短剣を持ってるゴブリンを倒して」


「了解です」


「じゃあ、まずは俺からっ」


 俺は駆け出し、こん棒を持ったゴブリンに銃弾を放つ。ステータスは最低なため、この一撃は只の牽制だ。今のうちに、ってあれー。


「ぐ、ぐぎゃ……」


 左手のハンドガンから放たれた銃弾は胸を貫き、ゴブリンはその場にうずくまる。なんだか致命傷っぽい感じだ。


「えーいっ」


 動きが止まってるので、素早くステッピングで後ろに回りこみ、首に短剣をグサーッ。


「ぐ、ぐぎゃぁぁあ……」


 倒せてしまった。はて?


「辰巳君、流石です! 私もっ、ハッ」


 一ノ瀬さんは神剣を天高く振りかぶり、その剣身が眩く光る──。


「ちょっ、待っ──」


 ドーン。ピシャピシャピシャ。


 今日の世田谷ダンジョンは酸性雨のち緑の雨だ。


「……あー、一ノ瀬さんナイス。でもゴブリンもチョンで良さそうだね」


「フフ、はいっ」


「ハハッ」


 全身緑なのに、楽しそうに笑う一ノ瀬さんを見て、俺もなんだか不思議と楽しくなってしまった。


(あぁ、そうか。今までソロが気が楽って言ってたけど、ホントは俺……)


「辰巳君? どうしました?」


「いや、なんでもない。さ、この調子でボス部屋まで行こう」


「はいっ」


 それから道中で見かけたゴブリンを二人で倒しながら地下五階を目指す。やはりLUK500越えは伊達ではない。スライムやゴブリンから大量に宝箱をゲットし、ボスエリアへの転送門を見つける頃には一ノ瀬さんの装備が揃った。


「これで、装備一式が揃いました」


「おめでとう。まさか一週目でしかもボス前に装備が揃うとは思わなかったよ。LUK500すごいね……」


 ちなみに俺の方はというと、ソロの時と比べると僅かに宝箱のドロップ率は上がった気がするが、そのほとんどが白箱で青箱が一つと言ったところだ。もちろん装備品などドロップしない。


「さて、頼みの綱はボス箱だな。どう? 一ノ瀬さん準備はおっけー?」


「……多分、大丈夫です」


「うん、まぁ、ボス部屋の前は安全地帯になっているから一旦、そこで確認しよう」


「お願いします」


「おっけ」


 こうして俺たちは地下五階へと降りた。


「さて、俺もボス前にステータスを確認しておこう。ステータスオープン」


<名前> 獅堂 辰巳

<Lv> 54

<ステータス> 

HP:10/10

MP:10/10

STR:22(1+5+16)

VIT:22(1+11+10)

DEX:8(1+5+2)

AGI:26(1+24+1)

INT:2(1+0+1)

MND:17(1+12+4)

LUK:2(1+0+1)


<装備>

右手:ゴブリンダガー(STR+5 DEX+5 AGI+5、乗算ボーナスSTR DEX AGI 1.05倍)

左手:チュートリアルハンドガン(装備効果なし)

頭:ゴブリン頭巾(VIT+2 MND+2)

上半身:ゴブリン布切れ(VIT+5 MND+4 AGI+5)

下半身:ゴブリン腰ミノ(VIT+3 MND+5 AGI+5) 

靴:ゴブリンズック(VIT+1 MND+1 AGI+7)

アクセサリー:ゴブリンのお守り(ゴブリンからのダメージ軽減5% ゴブリンへのダメージ強化5%)


<ジョブスキル> 

<アクティブスキル>

<パッシブスキル> 【契約者ステータス補正Lv1】

<特殊スキル> 【レベル転生★】【アイテムボックスLv1】【契約を交わされた者Lv1】

<スキルポイント> 0

<称号> 【弄ぶ者】


「おぉ、レベルアップしても素のステータスは一切上がっていないが強くなってる。【契約者ステータス補正Lv1】の効果か……」


【契約者ステータス補正Lv1】は一ノ瀬さんの本来のステータス分の20%が俺の全ステータスに加算されるという強パッシブスキルだ。


 つまり、俺が強くなったのは装備品と一ノ瀬さんのおかげである。


「ステータスありがとうございます」


「フフ、どういたしまして。では、私も……。ステータスオープン」



<名前> ヒカリ エヴァンス 一ノ瀬

<Lv> 7

<ステータス> 

HP:42/42

MP:16/16

STR:676(82+594+0)

VIT:685(51+634+0)

DEX:527(10+517+0)

AGI:524(9+515+0)

INT:527(9+518+0)

MND:584(24+560+0)

LUK:524(7+514+0)


<装備>

両手:神剣カーディナル(ALLステータス+500 乗算ボーナスALLステータス2.00倍) 

頭:バレッタ(VIT+1 MND+5)

上半身:ライトチェストプレート(VIT+10 MND+2 DEX -3)

下半身:スチールスカート(VIT+9 MND+3)

靴:アイアングリーヴ(VIT+12 MND+2 AGI-3)

アクセサリー:力の指輪(STR+10 乗算ボーナスSTR1.05倍)


<ジョブスキル> 【神剣使いLv1】

<アクティブスキル> 【絶・穿ちLv1】

<パッシブスキル> 【全ステータス成長補正Lv1】【HP・MP自動回復Lv1】【大剣装備補正Lv1】【契約者ステータス補正Lv1】【剛力Lv1】【金剛Lv1】【不動Lv1】【天賦の才Lv1】

<特殊スキル> 【契約を交わした者Lv1】【アイテムボックスLv1】

<スキルポイント> 0

<称号> 【神剣所有者】



 一ノ瀬さんは俺の何十倍も強くなっていた。

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