第06話 ダンジョンへの挑戦
「さて、着いたな」
俺は次の日から早速ダンジョンへとやってきた。少し遠いが世田谷にあるE5ダンジョンだ。と言うのも大森にあるE5ダンジョンの方が近いが、辞めた手前学校の奴と会うのが気まずいのだ。察してくれ。
「まずは、装備を集めますかね」
初心者はまずこのE5ダンジョンでレベル上げと装備品集めを行う。チュートリアルシリーズは持って帰ることができないため、装備品を集めないとE4以上のダンジョンで何もできないのだ。
「と、その前に……、すみません。フリーのダンジョンモーラーIDカードの発行をお願いしていたのですが」
「お名前と生年月日を」
「獅堂辰巳、平成十五年、五月六日です」
「少々お待ちください」
昨日、教官が別れる前に発行手続きを取ってくれたフリーのモーラーIDカードは今朝までに出来上がり、それはどこのダンジョン施設でも受け取れるとのことだ。
「はい。確認が取れました。どうぞ」
「ありがとうございます」
学生用のIDカードとは少し違う正式なIDカードを受け取る。さて、感慨に耽っている場合ではない。早速ダンジョンだ。
「入場お願いします。ソロです」
「畏まりました。どうぞ」
「ありがとうございます」
俺は興奮と僅かな不安を胸にゲートをくぐった。
「さーて、支度、支度ーっと」
支給品ボックスから右逆手に短剣、左手にハンドガン、防具一式を装備し、早速一階へと向かう。
「お、いたいた。さて、まずは死んでみますかね」
俺はひとまず通過儀礼であるリスポーンを試すこととした。不安なのはここだった。魔王の言った通りダンジョン内では痛みもないし、ケガをしてもゲートを出れば治る。それに死んだ人間はいない。だが、これだけイレギュラーが続いてる俺は万が一を恐れていた。
(親父、母さん、茜、死んだら本当にごめんなさい)
「南無三ッ!」
そして俺は右手の短剣をしまい、スライムの酸性粘液でできた身体に右手を突っ込む。シューシューと音を立てて溶けていく右手。グロテスクではあるが、痛みはない。
開いておいたステータスボードを見ると、すぐにHPが減り始め、HPが1になったところで目の前がチカチカと点滅し、そして──。
ぺいっ。
と音でもしそうな勢いでゲートから吐き出され、施設に戻ってくる。
「……ふむ。リスポーン機能は問題なし、と」
良かった。生きているみたいだ。これで最大の懸念事項は払拭された。後はひたすら死んでもなんでもレベルを上げて、装備品を集めるだけだ。俺は再度入場して支度部屋で装備品について考える。
「宝箱ガチャ、厳しいよなぁ」
ダンジョンには宝箱が存在している。それは道端に落ちていたり、隠し部屋に隠されていたり、モンスターがドロップしたり、と。宝箱には等級があり、更にその中身にも当たりハズレはある。
(つまり俺は宝箱の生成率もしくはドロップ率、等級率、中身ガチャ、これらの抽選に受かって装備を獲得しなきゃいけない訳だが、大丈夫か?)
ステータスボードに燦然と輝くLUK1の文字。そう、これらの確率はLUK依存なのだ。
「まぁ、いざとなったらボス箱マラソンか」
ボスは確定で1~3個の宝箱を落とす。所謂ボス箱だ。通常の敵に比べれば等級も良いものが出やすい。
「何はともあれ、進んでみますか」
俺はとりあえず道中で宝箱がないか、モンスターからのドロップ率はどんなものかと調べながらボスのいる地下五階を目指すことにした。
◇
「ぴぎゃぁぁ」
十体目のスライムを倒す。レベルは順調に4に上がった。
「ステータスオープン」
<名前> 獅堂 辰巳
<Lv>4
<ステータス> HP:10 MP:10 STR:1 VIT:1 DEX:1 AGI:1 INT:1 MND:1 LUK:1
<装備>右手:チュートリアルダガー 左手:チュートリアルハンドガン 頭:なし 上半身:チュートリアルロンT 下半身:チュートリアルジーンズ 靴:チュートリアルスニーカー アクセサリー:なし
<ジョブスキル>
<アクティブスキル>
<パッシブスキル>
<特殊スキル>【レベル転生★】【アイテムボックス(仮)】
<スキルポイント>0
<称号>なし
「っざけんな」
これで成長率オールDの夢は潰えたと見ていいだろう。いや期待はしていなかった。期待はしていなかったけどもどれか一つくらい何か上がってくれてもいいじゃないか。そう思わずにはいられなかった。
「さ、切り替えよう。俺はこのステータスでレベル100まで上げる。気合と根性だ」
ちなみに装備品の更新もない。スライム十匹も倒せば最低等級の宝箱が二~三個出てもいいものだが、やはりドロップしない。
「ボスだ。ボス行くしかねぇ」
俺は一階の探索を打ち切り、最速で五階まで降りてボスであるホブゴブリンを倒すことを決めた。
「ぴぎゃぁぁあ、ぴぎゃ?」
「うるせぇ、こちとらステータスオール1なんだよっ!」
牽制代わりに銃弾を数発打ち込んでも死なないスライムは死んでいないことに驚いているようだった。それもその筈、銃の攻撃依存ステータスは
「おらおらおらっ!」
「ぴぎゃぁぁああ」
俺はそんなスライムの後ろ(?)に回り込み、順手に持ち変えた右の短剣で核を何度も切りつける。銃より圧倒的に速かった。
一瞬であれば
「思った数倍ハードだな……」
ハードモードだということは覚悟していたが、チュートリアルダンジョンの三階でこれだと先が思いやられる。
「っと、転送門か。次はいよいよ四階か」
四階からはスライムだけでなくゴブリンが出現する。ゴブリンははっきり言ってスライムとは次元が違う。それぞれが武器を装備し、思考し、個ではなく小集団を形成している場合もあるのだ。
「さて、ビビらずに気合入れていこう」
転送門の前で立ち止まってしまった足をゆっくりと前へ動かし、俺は四階層へと降りていく。
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