第80話 禁断の軽井沢2

二人は駅に戻り、反対側の出口へ降りる、すると大きなジープらしき車が待っていた。


「星野さん、お久しぶりです」綾乃ちゃんが手を振ると優しそうなおじさんが車から降りてきた。


「綾乃お嬢様、お待ちしておりました」にこやかに挨拶して後ろの席のドアを開けてくれる。

二人が車に乗り込むと、星野さんはドアを閉め別荘へ向かって走り出した。


「お嬢様が来られるというので掃除しておきました、食材も一通り用意しております」


「ありがとう、星野さんは元気だった?」


「はい、おかげさまで元気にやっております、最近は秩父の別荘にいらっしゃると聞いて寂しく思っておりました」


「ゴメンね、彼の別荘に住んでるのよ」


「社長からお聞きしてますよ、こちらの別荘もまた利用してくださいね」少し寂しそうだった。


車は白いゲートを抜け、20軒ほどの別荘を通り過ぎて奥の別荘に到着する。


「ありがとう星野さん」綾乃ちゃんが声をかけると嬉しそうにお辞儀をして車は出て行った。


「さあどうぞ」綾乃に案内されログハウス風の立派な別荘の中へ入った。


広々としたリビングにはアイランドキッチンがあり、ソファーには余裕で3・4人寝れそうだ。

一階には寝室が二つあり、テラスにはジャグジーのお風呂まで着いている。

2階のロフトに10人は寝れそうだ。

別荘って本当はこんな所を言うんだろうなと思う。


「高校の頃はよくここに友達と泊まってスキーしてたのよ」


懐かしそうに窓の外を眺める綾乃ちゃんを見て、住む世界が違うんだなあと改めて思った。


突然綾乃ちゃんのスマホが鳴り出す。


「パパ、どうしたの?」


「えっ、別荘に来てるの?……ミホさんと……え〜……分かった」綾乃ちゃんは少しふてくされている。


「星野さんから情報が漏れたらしくて、パパが別荘にミホさんと来てるらしいの」


「えっ……?どこに……」


「あの上の別荘」綾乃ちゃんはカーテンを開けて窓から見える景色に指を差す。


俺は綾乃ちゃんの指さした方向を見た。


「あれはホテルじゃないの?」


「あれもパパの別荘よ」綾乃ちゃんはなぜか諦めたような顔をしている。


「あれも別荘なの?」


「ゴメンね説明してなくて……白いゲートからこっちの全ての別荘がパパの会社のものなのよ、社員の保養施設も兼ねてるから会社の人達も申請したら利用できるの」


「ええ!……」俺は腰が抜けたようにソファーへ座り込んだ。


「ゴメンね、どんな所か説明したら新さん行きたがらないと思ったの」


「かもね……」ゆっくりと頷く。


「一番上には温泉施設があって利用できるわ、そしてそこから全部の別荘に温泉が引いてあるからここも温泉よ、後で一緒にはいろうよ」


ただため息を漏らすしかなかった。



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