第69話 キャバ嬢美由紀ちゃん
翌日私はレッドアローに乗って池袋へやってきた。
いけふくろうの前へ来ると帽子を深くかぶりマフラーでほとんど顔が見えない女子高生らしい子を見つける。
「ミユキさん?」
「はい、綾乃さんですか」
「はい」
二人で近くのカフェへ入る。帽子を取りマフラーを外すと、シュートカットの可愛い子だ。
「そっか……私より先に新さんに会っていたら、新さんはあなたに夢中になったかもね」
「新さんってポンカンさんのことですか?」
「そうか、ポンカンさんて呼び名だったのね」
「はい」
「彼の実家は果樹園だからきっとポンカンとか作ってるのかもね」
「へえ……そうだったんですね」
「早速だけど、あなたのアレルギーの状態を見せて?」
「えっ?」
「実はパパの会社で、アレルギーの人の為の食品やサプリ、アドバイスもやってるの」
「えっ、それって高いんじゃないですか?」
ミユキちゃんは売りつけられると思ったようだ。
「そうじゃなくて、勿論無料よ、だって新さんが寂しい時に助けてくれたんですもの、そのお礼よ、安心して」
「そうなんですか……」不思議そうな表情で私を見ている。
ミユキちゃんは納得すると、首や腕などのカサカサになった部分を見せた。
「なるほど……そう言う感じか、分かったわ、念のために写真を撮らせて、
出来るだけ正確な情報を伝えたいから」私はスマホを向ける。
「もし治ったら遊びに来て」
「良いんですか?」
「勿論よ、近いうちにマサキと言う会社の松本くんって子から電話が来ると思うわ」
「はい、ありがとうございます、ポンカンさんきっと幸せですね」そう言って彼女は帰って行った。
私はすぐに松本君に電話した。
「松本君お久しぶり」
「はい、お久しぶりです綾乃さん、見ましたよフィアンセの新さん、かっこよかったですよ」
「えっ????新さんが???」
「はい、僕は会議室で感動しました」
「えっ???そうなの???」
「何も聞いてないんですか?」
「うん……」
「そうですか、ますますかっこいいですねえ」
「新さんをかっこいいなんて言った人はあなたが初めてよ」私は思わず笑ってしまう。
「実はね、アレルギーで困ってる女の子がいるの、新さんの恩人だから何とかしてあげて」
「はい、新さんの恩人なら喜んで」
私は電話を切ると「まあ一応恩人よね」独り言を漏らした。
別荘へ帰ると「疲れた〜」そう言ってコタツの虫に戻った。
相変わらず新さんはキーボードを叩いている。
松本君の「かっこいい」を思い出して後ろ姿をじっと見つめた。
「………………???」
「ねえ新さん、実家の果樹園って何を作ってるの」
「ポンカンとか…………」
「やっぱりか」私は少し笑った。
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