第42話 2・9角関係

月曜日二人でパソコンに向かって仕事をしていた。

僕は少しややこしい内容だといってずっと眉間にしわを寄せて画面を見つめ、キーボードをたたいている。

昼食の時も考え事をしていて、いつもの笑顔の「美味しい」もなかった。夕方になってやっとめどがついて、優しい顔にもどった僕を見て綾乃さんは安心したようだ。


「新さん、気分転換にお風呂に入って来たら?」


「そうだね、いいかも」下の階へ下りて行った。


・・・・・・・・・・・・・・・・綾乃視点・・・・・


しばらくするとテーブルの上のスマホが鳴ってメッセージが表示された。


『まだ家出娘はいるの?』


私はそれを見て「うーん、新さん隠し事をしてるな」と思わず一言もらす。

新さんはタオルで髪をふきながらリビングへ戻ってきた。


「あー……気持ちよかった、やっぱり水がいいとお風呂は最高だねえ」何喰わぬ顔だ。


「そう、良かったですね」そう言って新さんの胸に飛び込んだ。


「どうしたの?」新さんは聞いて来た。


「新さん私に何か言いたいことない?」首をかしげてみた。


「えっ……特別ないですけど……」


スーッと離れて「ならいいんですけど」そう言ってキッチンへ行った。

夕食はスパイスを思い切り効かせた。


「おー……きくー……」新さんは一口食べるごとに口から火を噴いているように見えた。


「美味しい?」


「美味しいけど辛いです」


「そう、それは良かったわね」上目づかいで少しにらんだ。


新さんは何も気づかないようだ。私は少しイラッとした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る