妖怪変化
鬼屋敷
序章 『紛失』
「はぁ!?見失った!?」
『しーっ!静かに!』
廃墟と化した夜の建物内に怒声を響かせるのは、銀髪の男。
緊急事態だと連絡をよこしてきた電話相手の報告を聞き、思わずスマホを握り潰しそうになる。
その周りには仲間と思しき三名の男女がおり、銀髪の男と同様に電話相手に呆れていた。スマホのスピーカー越しに聞こえる半べそをかいてる電話相手の声。
『お願い!探すの手伝って!これがバレたら僕殺される!』
「馬鹿は死なないと治らないって言うし、別に良いんじゃねぇの」
『酷いよ!何でそんなこと言うの!?僕が死んだら皆悲しっ──』
ついに話すことさえ馬鹿馬鹿しくなった銀髪の男は、容赦なく電話を切った。ブチッと乱暴な音がし、悪態をつく。
数秒後にもう一度電話がかかってきたが、銀髪の男が再び電話に出ることはなかった。
「うーん、でもどうしましょうか?このまま放置したら危険ですよね」
そう次に声を発したのは四人の中で唯一の女だった。
まだ電話相手に怒りをあらわにする銀髪の男を宥めつつ、残りの二人、糸目の男と黄色いニット帽を被った男に尋ねる。
「どうするって言われても……ねぇ?」
糸目の男は困ったようにニット帽の男を見つめた。それに気付いたニット帽の男も糸目の男を見る。
数秒の間、無言の時間が流れた。銀髪の男と女も黙って二人を見る。
やがて、糸目の男が深く溜息をついた。
「やれやれ……。探しに行くしかないようだ」
「出発進行」
闇夜に四つの影が紛れる。
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