第12話
星屑は、柊木と須藤の持ち帰った情報をその日のうちにクラスメイト全員に伝えた。
放っておいても直にバレるだろうし、バレたらバレたで秘匿していた理由を聞かれて面倒だった。
生産班の権藤が挙手をする。
「それでは俺が畑を作る必要は今後無くなるというわけか?」
「いや、先生は今まで通り頼む。阿久津を引っ張り出して躾けるまで状況は好転しない。そして今調理担当の氷川はだいぶ参っている。みんなには悪いが当分我慢させると思う」
「でもよ、阿久津さえ手に入れちまえば今まで通りなんだろ?」
星屑派の男子、久川が身を乗り上げる。
星屑派閥は戦闘班が多く、一緒になって阿久津をいじめていたメンバーである。なので引っ張り出しても今までと同じように扱き使うのが決定しているような口ぶりだ。
星屑は大きく頷く。
「だがあいつは相当用心深い。今回の情報も柊木と須藤だったからこそ持ち帰れたものだと理解してほしい」
「餌に食い付いたら最後、拠点への道は途絶え、前に進むしかなくなる。そして前に進んだメンバーは帰ってこない。どうするかは星屑の判断を仰いだ。そしてメンバーを集めたと言うことは腹を決めたと言うことだよな?」
柊木の指摘に星屑は頷いた。
「ああ、打って出る。そして力の違いをわからせてやるんだ。今まで以上に躾けて、逆らう意思を折るぞ。そうしなきゃ俺たちに明日はない!」
星屑の言葉に全員が声を上げた。
阿久津という共通の悪者を駆逐するために全員の心が一つになったのである。
だがそこに水をさすように数学教諭の権藤が挙手した。
「なんだよ先生?」
「悪いが俺は戦闘は門外漢だ。鍬は振れるが、それ以外はからっきし。他に女子達も全員身重。行くならお前らだけでいってこい」
「そうだよ星屑君、俺のような職業〈鍛治〉が戦えるわけないだろう?」
「ちょっと、先生!今はそんなこと言ってる場合じゃないでしょ?」
弱気な態度の責任者と行長の言葉に、妊娠三ヶ月のまだ身動きができる園川が反論する。
甘いものに目がない女子の中でも特に目がない園川は、今の生活に満足できていなかった。
過剰に育った二つのメロンを揺らし男子生徒の視線を攫う。
彼女の職業は〈賢者〉である。
「良いんだ、園川。先生の言ってることは間違ってない。確かに今先生を失ったら今後俺たちは飢えて死ぬ事になる」
「そうだけど、でも。阿久津を屈服させれば良いんでしょ? ここはみんなで打って出るべきよ」
「分かってる。お前の気持ちは分かっているが、同時に俺にとってはお前達も大事なんだ。先生と一緒に俺たちの帰りを待ってくれないか?」
「絶対に帰ってきなさいよ? 帰ってこなかったら許さないんだから!」
園川に見送られ、〈勇者〉星屑は〈重戦士〉の久川、〈スナイパー〉柊木、〈魔法使い(水)〉須藤と共に階段を降りていく。
園川率いるハーレムメンバーは、その後一週間以上も星屑達の帰りを祈るように待ち続けた。
しかしその願いは途中で様子を見に行った権藤の手によって絶たれてしまう。
その日から権藤派の魔の手が女子全員に向けられる事になった。
ベッドに寝たきりで過ごす彼女達に、拒否権はなかった。
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