115話目

 汽笛と波音が届いた。


 木々はそよ風に吹かれて葉を揺らし、カーテンはそよぐ。


 ただ平凡な昼下がり。


 緩やかに進む針の音が、なぜか涙を誘う。


 今も僕はここにいる。


 伝えたい言葉も、忘れないように心にしまった。


 優しく差す陽だって変わらない。


 それでもこの景色がモノクロなのは、君だけが足りないから。

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