祝?!初・・・・①

「あれっ?あそこでなんか撮影してんじゃね?」

バイト終わりの小夏と待ち合わせての帰り道。

小夏の家からそう遠くはない商業施設に人だかりができていて、隙間から強力な照明と撮影カメラのようなものが見えた。

「えっ?・・・・あ、そうだねぇ。見に行ってみる?」

「そうだな。」

繋いでいた小夏の手を握り直し、二人で人だかりに近づく。

もう時間も遅いし、こんなに人がたくさんいたら、変な奴がいるかもしれないだろ?

痴漢とか、さ。

「あーっ!あの俳優さん、見たことある!」

1人で走り出そうとする小夏をなんとか押さえながら、俺は小夏を守るような体勢で人だかりの中に入り込んだ。


スタッフがしっかりガードしていたため、撮影現場に近づくことはできないものの、テレビや映画でお馴染みの俳優や女優の顔は、余裕で見ることができた。

撮影現場なんて、滅多に遭遇できるもんじゃない。

小夏は目を耀かせて撮影風景を見ていたのだが。


あれって・・・・えっ?!

マジっ?!

橋●環●じゃね?!


俺の目は、すぐそこにいる『●本●奈』に釘付けになった。


だって!

仕方ないだろっ?!

俺。

年頃の、オトコノコだものっ!

くぅ~・・・・テレビで見るよりメッチャ可愛い!

なにあの顔の小ささ。

なにあの目の大きさ。

なにあの、可愛さ満開オーラ!


そうして、どれくらい経っただろうか。

撮影も終了したようで、撮影クルーが撤収を始め、集まっていた大勢の人達もそれぞれに散らばり始めた頃。


あれっ・・・・?!


気付くと、俺の隣から、小夏の姿が消えていた。


「こなつ~、こなつさ~ん!」

呼んではみたが、返事はない。

電話をしてみても、呼び出し音は鳴るものの、一向に応答がない。


どこ、行ったんだ?


ふいにものすごい不安に襲われ、俺は小夏の姿を探しながら、メッセージを送った。


【今どこにいるんだ?】


暫く辺りを探し回っても、小夏の姿は見つからない。

電話をしても、やはり一向に応答がない。


もしかして小夏・・・・

拐われたりとか、してないよな?!


冷たい汗が、背中を伝い落ちる。

俺がいながら、俺が隣にいながら、まさかそんなことっ!


もう一度メッセージを送ろうとして、俺はさっき送ったメッセージが『既読』になっていることに気づいた。


あれ?

・・・・メッセージは、見てるのか?


【どうしたんだ?なんで電話に出てくれないんだよ?】


再度メッセージを送ると、すぐ『既読』になった。

だが、しばらく待ってみても、返信は、無い。


【頼む、小夏。お願いだから、今どこにいるかだけでも、教えてくれ!】


すると。

たった一文字だけ。

小夏から、メッセージが返ってきた。


【家】

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