小夏のピンチ!⑧

贅沢パフェですっかりご満悦な女子二人と別れ、家に帰った俺は、源氏物語の『六条御息所』について調べてみた。

もちろん、本なんて俺には読めないし、読む気にもなれない。

だから、ネットで調べただけだ。

ほんと、素晴らしい時代だよな。

ちゃんと分かりやすく現代語で要約したものを掲載してくれる、親切な人がいるんだから。


で。

調べた情報によると、どうやら『六条御息所』は『葵』という話に登場するらしい。

今回の件をこの話に当てはめてみると。

まぁ、俺は、光源氏だよな?・・・・不本意ながら。

で、小夏は、光源氏の正妻の、葵の上。

片岡が、六条御息所だ。


幸い、片岡と小夏は仲直りができたが、一歩間違えば、片岡は本当に六条御息所になっていたかもしれない。

片岡は言っていた、ダメだと分かっていても、止められなかったって。

六条御息所だって、生き霊になりたくてなった訳じゃない。

じゃあ何故、片岡は六条御息所にならずに済んだのか。


憑り殺された葵の上は、なんかの祭りの場所取りで、どうやら六条御息所を貶めるような事をしてしまったらしい。

葵の上は光源氏の正妻だ。

正妻としてのプライドと、それから、六条御息所への嫉妬もあったんだろう。

でもそれが、もともとプライドの高い六条御息所の嫉妬に油を注ぐ結果となってしまった。

もし葵の上が小夏のように、悪者は光源氏だと、フラフラと女を渡り歩いて酷い男よね、と六条御息所と手を取り合っていたのなら。

結果は違うものになっていただろう。

・・・・まぁ。

物語としては、面白みに欠けてしまうんだろうけどな。


小夏は敢えて片岡の前で俺を悪者にすることで、片岡の罪悪感を和らげてやったんだ。

そして、一緒に旨いモノを食いながら、笑い合って、語り合って、片岡との仲を深めたんだろう。


すげーな、小夏は。


俺は改めて、俺の彼女をすごいと思い、惚れ直したのだった。


でも。

明日会ったら、文句の一つくらいは言わせてもらってもいいよな?

つーか。

文句はこの際我慢するからせめて。

少しでもいい。

頑張った俺を、褒めてくれーっ!

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