小夏のピンチ!④

ガヤガヤとした声が教室から遠ざかる。

中には『竹本の奴、どうしたんだろうな』などと、俺を心配してくれている奴もいた。

ありがたい。そして、申し訳ない。

やがて、誰もいなくなったはずの教室から、微かに音が聞こえてきた。


来たか・・・・


とたんに、心臓がバクバクと物凄い勢いで胸を叩き始める。

俺の思っている奴がもし本当に犯人ならば、来て欲しくはなかった。

こんな事は、させたくなかった。

俺は物音を立てないように細心の注意を払いながら、そっとトイレを出て教室へと向かった。

思ったとおり、小夏の席に、そいつはいた。

残念ながら、俺の思っていた奴だった。

腹を決め、俺はそいつに向かって声をかけた。


「そこで何をしてるんだ、片岡。」


片岡の華奢な肩がビクリと震え、暫くしてゆっくりと振り返る。

「やっぱりいたんだね、竹本くん。」

片岡は、泣きそうな目をして笑っていた。

「なんかおかしいと思ったんだ、あんなに急に具合悪くなるなんて。・・・・なんだか、わざとらしかったし。」

・・・・どうやら、俺の演技はそう上手くは無かったらしい。

もしかしたら、古典のじいちゃん先生も、気づいていながら騙されてくれたのだろうか?

「今までのも、全部片岡がやったのか?」

「うん。」

片岡は、拍子抜けするくらいにあっさりと認めた。

「そっか。」

まだまだ聞きたいことはあったが、もうすぐ次の授業が始まる時間だ。

いつまでも片岡を引き留めるわけにはいかない。

「昼休み、屋上に来られるか?」

「うん。」

「じゃ、屋上で。早く行けよ、授業始まるぞ。」

「うん。」

ありがと。

小さく呟き、片岡は走って教室を出て行った。


次の授業が終われば、昼休みだ。

さて、俺はどうしようか。

少し迷ったが、まず昇降口に戻ってスリッパから上履きに履き替え、隣の奴の下駄箱から俺のスニーカーを取り出して自分の下駄箱に戻し、棚の陰に押し込んだ鞄を取り出す。

帰宅途中で腹痛が治まり、学校に戻ったことにすればいい。

再び教室に戻って鞄を席に置くと、俺は一足先に屋上へと向かった。

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