小夏のピンチ!①
休み時間。
教室から戻ると、小夏はゴミ箱のなかに手を入れて何かを拾いあげていた。
「小夏?」
呼び掛けながら近づくと、小夏はおどけた仕草で、俺に拾いあげたものを見せる。
「わたし、ボケちゃったのかな。ノートをゴミ箱に捨てちゃうなんて。」
そう言って小夏は笑うが。
またかよ・・・・
俺の我慢は限界に近づいていた。
小夏は俺に気を使わせないよう、嘘をついている。
でも、俺はとっくに気づいていた。
近頃、小夏に対する陰湿な嫌がらせが続いていることに。
教科書やノートが隠される、捨てられるなんて毎日のように起こっていたし、酷いときには、鞄や靴までが隠される始末。
決まってそれは、教室がガラ空きになる移動教室の時や、体育の授業の時に起こっていた。
俺はその度に頭にきていたのだが、当の小夏はケロッとしたものだ。
「わたし、ぼんやりしてる時があるから、自分でおかしな所に置いちゃってるだけかもしれないし。ボケッとして他のゴミと一緒にゴミ箱に捨てちゃったのかもしれないし。どっちみち、すぐ見つかってるから、特に問題ないでしょ。」
そうなのだ。
隠されたものは、毎回、割りとすぐに見つかっている。
でも、どれだけ小夏がボケていたとしても、こんなにしょっちゅうモノが無くなるなんて、おかしすぎるだろ。
もし本当に小夏が自分で無意識にやってしまっているのなら、病院に連れて行くべきなのだろうが、そんなことはまずあり得ない。
少なくとも、俺が見ている範囲では、小夏はそんなボケた事をしたことが無いからだ。
どこの誰だか知らないが、犯人は絶対に、いる。
そしてその犯人はおそらく、小夏をちょっと困らせたいか、ちょっと悪意を見せたいだけなのだろう。
そういう意味では、犯人の目的は全く達成されていないのだ。
ざまーみろ。
そう思って、何とか溜飲を下げていた俺が、とうとうブチ切れる事が起こった。
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