嫉妬 Challenge 1-7

土曜日。

結局、金曜日のテンションだだ下がりを引きずってしまった俺は、せっかくの久しぶりのデートだというにも関わらず、どこかに出かける気にはならず。

俺の部屋でまったりと過ごすことにしたのだった。


はぁ、情けねぇ・・・・


ただ、小夏は特に気にした様子もなく、まるで自分の部屋にでもいるかのように、俺の部屋でまったりとくつろいでくれている。

ほんと・・・・そーゆーとこ大好きだぞ、小夏。


「ねぇ、爽太くん。」

幻のポテチを一緒に食いながら、小夏が口を開く。

正直なところ、今はこのポテチすら目にしたくない気分ではあったが、片岡から貰ったその日に、一緒に食おうと小夏に約束してしまっていたのだ。

小夏も楽しみにしていた手前、『やっぱりやめた』とは、とても言えない。

「大丈夫?」

「えっ?なにが?」

「なんか、爽太くんの悪い噂を聞いたから。」

パリパリと旨そうにポテチを食いながら、小夏は言う。

「付き合う気も無いのに、女の子をその気にさせる、女たらしだって。」

ドキッとした。

おそらく、片岡のことだろう。

「無駄に優しさ振りまいていい雰囲気まで作っておきながら、『大好きな奴がいるんだ』って告白した子を振った、って聞いたよ?」

言いふらしているのは、片岡本人か、応援団の女子達か。


つーか、『無駄な優しさ』ってなんだよ?

別に特別に優しくした訳でもねぇよ。

『いい雰囲気』ってなんだよ?

そんなもん、俺は全然感じなかったぞ?

まったく。

優しくて何が悪いんだよ。

冷たきゃ冷たいで、文句言うくせに。

恋愛的な好意とただの優しさなんて、全くの別もんだろーがっ!


せっかくのポテチを食う気にもならず、ボーッと眺めていると、いつの間にか手を止めて、小夏がジッと俺を見ていた。

「ん?どうした?」

「爽太くんさ・・・・」

「うん?」

「ダメだよ?気もないのに、女の子をその気にさせちゃ。」


・・・・正論だ。

小夏の言っていることは、ものすごく正しい。

だが。

小夏さんよ、言っている事が矛盾していやしないか?

俺の記憶が確かなら、お前は俺に【わたしに、嫉妬させてみて】と言ったんだぞ?

まぁ、それと片岡のことは、別だけども。

・・・・別だけど、もしかして・・・・?!


「で、嫉妬したか?」

僅かな期待を抱いて聞いてはみたものの。

再びポテチを食い始めた小夏は、キョトンとして小首を傾げる。

「してない、か。」

「だってー。」

小夏は笑いながら言った。

「『大好きな奴』って、わたしでしょ?」

「まぁな。」

「嫉妬できないよー!」

声をあげて、小夏はケラケラと笑う。

「そっか。」

俺もつられて笑いながらも。


ちくしょー、難しいぜ、嫉妬!


小夏に気づかれないよう、小さくため息を吐いたのだった。

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