嫉妬 Challenge 1-5
「最近、ちょっとした噂になってるぞ。片岡と爽太、付き合ってるんじゃないかって。」
ドリンクバーで再度コーラを入れて戻ってきた俺に、彩は言った。
「はぁっ?!なんだよそれ。」
寝耳に水だ。
何故そうなる?
だって俺は、たかだか古典の資料準備を代わってやって幻のポテチをお礼に貰ったのと、今日の不可抗力のお姫様抱っこくらいで、そんなに片岡と一緒にいるわけでは・・・・
と思い返してみると。
確かに、片岡とは最近よくしゃべるようになっていたな、と思い直す。
そういや、取るに足らない事を頼まれては引き受け、お礼にと言って、アメやらチョコやらの食い物をよく貰っているような気がする。
・・・・餌付けされてるのか?俺。
でも、だからって、付き合っているようには見えないと思うんだが・・・・
「椎野と上手くいってないのか?」
彩は腕組みをし、心配顔で俺を見る。
「そんな訳ないだろ。」
「二股は良くないぞ。」
「誰がするか。」
「じゃ、片岡とは何も無いんだな?」
「だから、無いって言ってるだろ。」
ドンマイ、片岡。
小さい声で、彩が呟く。
少しだけ、胸が痛んだ。
もし、俺が片岡をその気にさせてしまったのであれば、それは申し訳ないことだ。
・・・・そんなことは、無いと思うけど。
「で、椎野とは、順調なんだな?」
「ああ、ラブラブだ。」
「そりゃ、結構なことで。」
バカップルめ。
そう吐き捨てて、彩は背もたれに体を預けたまま、腕だけを伸ばして、テーブルの上のグラスを取る。
制服の袖口から見えたのは、やはり間違いなく痣だった。それも、できたての、赤い痣。
俺の視線の行き先に気づいたのか、彩は慌てて痣を制服で隠したが、俺は言わずにはいられなかった。
「お前、まだあの男と付き合ってんのか?」
彩の彼氏は、基本的にはいい奴らしい。
ただ、キレると暴力的になるらしく、時には彩にもその暴力が向かってしまう。
俺に言わせれば、女に手を上げるような男など『いい奴』であるはずがないのだが、彩が言うのだ。
彼は、本当は、いい奴なんだと。
「大丈夫、今度こそ約束させたから。もう暴力は振るわないって。」
あはは、と明るく彩は笑うが。
その言葉、何回目だよ?
少なくとも俺、3回は聞いたぞ?
「次もし手をあげられるようなことがあったら、別れろよ。」
「・・・・ああ、うん。」
ただの相づちとしての、返事。
きっと彩は、また暴力彼氏を許してしまうのだろう。
もう一度念押しをしようと思ったのだが。
「ヒトのことより、自分の心配した方がいいぞ、爽太は。」
グラスに残っていたカルピスを飲みながら、彩が言った。
「俺の?何を?」
「それくらい、自分で考えろ、モテ男くん。」
彩はニヤリと笑う。
「は?」
何度もしつこく聞いてみたものの、彩が教えてくれることはなかった。
俺の心配?
なんのことだ?
家に帰ってスマホを見ると、小夏からメッセージが入っていた。
【爽太くん、わたしは今日も、嫉妬しなかったよ?いつ、嫉妬させてくれるのかな?】
頼む、小夏。
こんな時くらいはせめて、俺を癒すメッセージを送って・・・・
【でも、嫉妬させてくれなくても、大好きだよ、爽太くん💕 おやすみ!】
以心伝心か!
さすが、小夏!
俺はスマホを抱きしめた。
本当は、小夏自身を抱きしめたいんだけど、な・・・・
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