嫉妬 Challenge 1-2

「竹本くん」

「ん?」

昼休みが終わる直前。

小夏の姿を探してキョロキョロしていた俺の席に、片岡がやってきた。

「昨日はほんとにありがと!」

「あぁ、気にすんなよ、あれくらい。」

姿が見当たらない小夏を探すのに気もそぞろで、俺は早々に会話を切り上げたかったのだが。

「でも、ほんとに助かったから。」

そう言って、片岡は俺にポテチを差し出した。

「これ、お礼!」

「えっ?・・・・あーっ!これっ!」

それは、期間限定で販売されているポテチだった。

発売前からメチャクチャ話題になっていて、発売日当日の朝には既にあちこちの店で売り切れ続出。

俺ももちろん、発売日当日の朝に買いに行ったが、どの店も売り切れ全滅。

今に至るまで手に入れることのできていない、幻のポテチだった。

「片岡お前これ、どこで手に入れたんだ?!」

興奮覚めやらず、そう片岡に聞いてみたのだが、

「ちょっと、ね。」

意味深な笑いでかわされてしまった。

「えっ、これ、ほんとに貰っていいのか?」

「うん、お礼だから。」

片岡は、俺にポテチを押し付け、自分の席に戻っていく。

「サンキュ、片岡!」

その背中に礼を言い、俺は手にしたポテチをしげしげと眺めた。

もう絶対手に入らないだろうと思っていた、幻のポテチ。

ネットで探して、法外な金を払えば買えるのだろうが、そんなことまでしたくない。

だから、半ば諦めていたのに。

それが、ただちょっと、源氏物語ヤロウ・・・・じゃなかった、源氏物語の資料をプリントしただけで、俺のものになるなんてっ!


神かよ、片岡!

この恩は忘れねぇぞ!


そう固く誓ったちょうどその時、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。

と同時に、どこをほっつき歩いていたのか、小夏が教室に飛び込んできた。

「はっ・・・・はっ・・・・間に合ったぁ・・・・」

小夏は息を切らしながら、自分の席に向かう。

俺のそばを通りすぎ様に、チロリと小さく舌をだして笑った。


うん、俺の彼女は今日も可愛い。

そうだ、あのポテチ、後で小夏と一緒に食おう。


そう思いつつも、俺は思った。

もし、小夏がさっきの片岡とのやりとりを見ていたら、嫉妬してくれただろうか?

まったく。

いっつも肝心な時にいないんだもんなぁ、小夏の奴・・・・

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