282.神の世界①

 セナお姉ちゃんの過剰過ぎる? 心配の所為で、アカバネ島では、皆が訓練に明け暮れていた。


 大きく分けて二つの隊が出来た。



 一つ目は、戦闘隊。


 戦闘系の職能を開花した人や、戦いの心得がある人で、基本的にはレベルを上げて、装備も最上位品を装着している。


 彼らは、冒険者や傭兵、兵士のように、普通の戦闘の為の隊だ。


 警備隊の方が全て上位なので、警備隊が指揮を執り、戦闘隊を率いる感じだ。



 二つ目は、遊撃隊。


 遊撃隊は元々、馬で移動して、兵器魔道具を用いて戦う隊の事だ。


 馬は何とか調達しようと頑張ったらしいけど、警備隊の目に叶う馬は中々見つからなかったそうだ。


 そんな時に、僕に最適な従魔が沢山増えた。


 うん。


 白狐達の協力を得て、遊撃隊となって貰う事になった。


 白狐自身がそもそも移動も早くて、知能も高く、人の言葉も聞き取れる。


 更に、単体で雷属性魔法が使えるみたいで、非常に強かった。


 そこに、遊撃隊員がアカバネ大商会で作った兵器魔道具、通称『魔法銃』を使い、一緒に遊撃するという。


 この『魔法銃』はとても便利で、力がない者でも簡単に使えた。


 なので、基本的には、遊撃隊員以外には渡していない。


 そもそも、使うにも魔石が大量に必要なんだけどね~。


 その魔力自体も『次元袋』を利用して…………異次元空間から無限に取り込めるから、実質、制限なして撃てるようになっている。


 ただ、連射が利かないし、狙いも普通の魔法より難しくて、強いかというと、ちょっと違う気がする。


 便利なのは間違いないので、戦う力はないけど、判断力に優れた人に遊撃隊に入って貰った。



 これにて、何故が本格的な兵隊となった戦闘隊と遊撃隊。


 大陸の王国軍や帝国軍より強かったりしてね………………まさかね。




 ◇




 新たに加わった従魔のギルとその子供達が順応してきた頃。


 僕は一つの約束を守る為、奥さん達に断わりを入れ、一人で屋敷の執務室にいた。



「メティス」


【どうしたの? クロウくん】


「実は、『神様』に会う約束をしているんだ。メティスなら、会える方法を知っていると神様も仰っていたから」


【…………】


「ねえ、メティス。神様ってどういう方なの?」


【そうね……クロウくんが話している様なら、とても素晴らしい方だわ】


 やっぱり、メティスは神様を知っているみたいだね。


 でも、何となく神様についてはあまり話したくないみたいだね。


「その神様から、会いに来てくれと頼まれていて、身近の誰かが知っているって言われたんだよ、多分メティスの事なのかなと思って」


【クロウくん、一つだけ約束して貰ってもいいかな?】


「うん? いいよ!」


【神様にお会い出来るのは、いつでも出来る訳ではない事と、神様の許可がないといけないから……この先、例えば、クロウくんが困った際に神様に頼るのは出来ないのを知っておいて欲しいの】


「分かった! 今回も会いに来て欲しいと言っていたし、僕も神様には感謝するばかりだから、何かをお願いするのは、もうしないよ」


 見えないけど、メティスはきっと優しい微笑みを浮かべていそうだった。


 そして、メティスの指示に従って、僕は目を瞑った。


【クロノシア、リインカーネーション・ゼロ】




 ◇




 目を覚ますと、そこは美しくも儚げな白い空間が広がっていた。


 何処からか、ほっほっほっ、って笑い声が聞こえそうな、三度目の訪問だ。


「クロウくんや、お久しぶりじゃのう」


「お久しぶりです! お爺ちゃん――――と?」


 目の前の神様こと、お爺ちゃんはテーブルの前の椅子に座っており、隣にもう一つ椅子があり、そこに若い男性が一人座っていた。


 お爺ちゃんは優しい笑顔のまま、目の前の椅子に座るよう促してくれた。


 テーブルの上には、美味しそうなお菓子や、大陸中でも人気に火がついている『ロイヤル紅茶』が用意されていた。


 そして、正面に座るお爺ちゃんともう一人の男性。


 その男性は、年齢はお父さんくらいの年齢かな?


 物凄いイケメンさんなんだけど、鋭い目が何処か怖いものを感じさせる所があった。



「クロウくんや、今日来て貰ったのは、他でもなく、この男に会って貰いたかったのじゃ」


「初めまして、クロウティアと申します」


 僕の挨拶に彼の鋭い眼光が、僕を向いた。


 ――――何もかも見透かされそうな目だ。


 そして、男性は口を開いた。



「そうか、このガキが『クロノスリザレクション』を使ったのか」



 男性の言葉に、激しい不安が僕を襲った。




 ◇




 パリーン


 クロウティアの屋敷のリビング。


 カップが一つ落とされてしまい、割れる音が響いた。


「も、申し訳ございません」


 新人のメイドが、奥さん達に『ロイヤル紅茶』を淹れていたのだが、間違えて使っていないカップを落としてしまったらしい。


「ノラちゃん!? 怪我はしていない?」


 奥さん達は、割れたカップなど、見向きもせず、新人メイドのノラを心配する。


「だ、大丈夫です……」


「それは良かった、怪我していたら教えてね」


 アリサの優しい言葉に戸惑いながらも、ノラは素早く割れたカップを片付けた。




「あれ? そのカップって……誰のだっけ?」




 ふと、ナターシャがそう話した。


 奥さん達は、確かに誰のカップだっけ? と声を漏らす。


 しかし、誰のカップだったのか思い出せなかった。


 彼女達四人と似た模様のティーカップ。


 その中でも、最も豪華に作られたそのティーカップ。


 割れたカップを見つめると、分からない不安が彼女達を襲った。


 そして、彼女達からは衝撃的な言葉が飛び出した。




「あれ? 私のこの指輪……皆にも同じ指輪……この指輪って何の指輪でしたっけ?」

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