東大陸編
266.スタンピード
【クロウ様及び各位へ! 緊急事態発生! 繰り返す、クロウ様及び各位へ! 緊急事態発生!】
管制塔から緊急の全体遠話が聞こえた。
「クロウ! 急いで管制塔に行こう!」
「分かった! ソフィア! 管制塔に直通の『次元扉』を!」
【ご主人様! はい!】
目と鼻の先ではあるけれど、緊急事態のため、すぐに『次元扉』を通って管制塔に入った。
「クロウ様! あちらを見てください!」
オペレーターさんが指差した画面。
そこには――――――大量のモンスターが現れていた。
今、映っているのはグランセイル王国の西側にある『アズライールのダンジョン』近くのスリオン町近くだった。
まだモンスターの群れは町には到着していないが、このままでは町が危なさそうだ。
「僕はモンスターの群れの対処に行く! セナお姉ちゃんはここから指揮を取って欲しい!」
「分かったわ! クロウ、無理だけはしないでね?」
「分かっ――――っ!?」
行こうとする僕にセナお姉ちゃんの唇が僕の唇と重なった。
「絶対……だよ?」
「うん。絶対無理はしないから」
僕はお姉ちゃんの頭を優しく撫でてから、スリオン町に飛んだ。
◇
モンスターの群れを空から眺めてみるも、初めてみるモンスターばかりだった。
既に多くの兵士達が籠城を決めているみたいだけど、このままでは一溜りもないだろう。
【メティス! このモンスター達は何処から来てる?】
【はい! 今、調べてみてるんだけど、恐らく
【ダンジョン? ダンジョンのモンスターって外に出れないというか、こういう知能はないはずじゃ?】
【うん、でもこのモンスター達は『アズライールのダンジョン』のモンスターではないわ】
ダンジョンのモンスターではない?
確かに見た事ないモンスターばかりだけど……。
【何らかの原因で、『アズライールのダンジョン』から
【そうか、これは全て
大量のモンスター達に僕は雷属性魔法を最大威力で放った。
轟音と眩しい雷の光と共に、前方のモンスター達が焼かれて行った。
他の魔法だと、周辺にも被害が出そうなので、雷属性魔法を数回放ち、モンスター大軍を沈めた。
果てしなく続いてるモンスターの大軍の死体をソフィアの分体に頼んで、全て格納して貰う事にした。
アカバネ大商会から声明で、モンスターの大軍はこちらで対処したと、スリオン町及びグランセイル王国にも報告があがった。
◇
後始末は管制塔にまかせ、僕とソフィアはそのまま『アズライールのダンジョン』に来ていた。
一層の入り口から二層への入り口までには大きな道が出来ていた。
恐らく、あのモンスターの大軍が通ったからだろうね。
それと、その道すがら、冒険者のそれも見えていたので、『次元袋』を通して、スリオン町に運んで貰うソフィア分体も放った。
そのまま二層、三層と進めるも、何処も一層と同じ惨状だった。
漸く、十層に到達した。
ここに来るまで僕の魔法で瞬殺していたので問題にもならなかった。
実は、この『アズライールのダンジョン』は物理耐性の高いモンスターのダンジョンで有名だ。
なので、ここにいる殆どの冒険者は魔法が使えたり、魔法使いを抱えたパーティーのみが入っている。
先程送っていた冒険者のそれも多くは魔法使いの冒険者だった。
魔法が得意な僕には得意なダンジョンだ。
十層のボスも僕の魔法一発で消し炭となった。
ダンジョンの最下層ボスを倒すと、そのダンジョンの祝福を受ける事が出来て、このダンジョンの中でステータス上昇や、ドロップ品の上昇などの恩恵を得られる。
僕も初めてのダンジョン最下層の祝福を受けた。
特にステータスに表記はないみたい。
踏みにじられた土を辿ってボスを倒した先に続いたその道は、いきなりなくなった。
恐らく、この地点からあのモンスター達がうじゃうじゃと発生していたのだろうか?
と、そんな事を思っていると、僕の周りに何やら光の蝶々が集まって来た。
触れられない光の蝶々。
こういう事があるって聞いた事ないんだけどね。
【その蝶々は、ダンジョンの魔力そのものだよ】
ダンジョンの魔力、そのもの?
【ええ、ダンジョンの――――
ダンジョンの意思――――か。
その光る蝶々達は僕の目の前の一箇所にどんどん集まり始めた。
そして、光はやがて、一つの物となった。
鍵だった。
【メティス、この鍵って何?】
【う~ん、ごめんなさい、その鍵は初めて見るものだわ】
メティスの叡智でも初めて見るものみたい。
取り敢えず、この鍵は『アズライールの鍵』と呼ぶ事にした。
管制塔に戻り、皆に現状の報告をした。
鍵の件はともかく、モンスターは既に殲滅している。
セナお姉ちゃんの意見で、各国にこの情報を伝えて、備えて貰う事にした。
全てのダンジョンは立ち入り禁止となり、臨戦態勢となった。
後は、僕達が捕獲した魔族達が目を覚ますまで待つだけだ。
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