226.願いと最強技

「クハハハハッ! クロウティアよ、さっきの威勢は何処にいったのだ?」


 一度、教皇を殴り飛ばしたが、その後、教皇に敵わず、既にボロボロにされていた。


「貴様程の魔法使いには会った事がない、あいつより強いかもしれない! だが、俺様とあまりにも相性がかったんだよ! 貴様に俺様を倒す術等ありはしない!」


 僕は……イカリくんの仇も取れず、守りたい人も守れず、こんなやつに負けるのか?


 教皇の蹴りで、また遠くまで吹き飛ばされた。


 ――もう既に、痛みは感じない。


 ――リサが……ああなってから、何も感じなくなった。


 ――僕は……何がしたかったのだろう。


 ――僕はこの世界に来て、何がしたかったのだろう。




 ――――「クロウ!」


 セレナお姉ちゃん……僕……


 ――――「クロウ様!」


 ディアナ……僕は……


 ――――「クロウくん!」「クロウ!」


 お父さん……お母さん……僕はまた……


 ――――「クロウくん!」


 ナターシャお姉ちゃん……僕はまた守れ……


 ――――「クロちゃん!」


 お母さん前世の……僕……またリサを……守れなかったよ……


 ――――「くろにぃ!」


 リサ……ごめんな。


 僕はこの世界で強くなったと勝手に勘違いしていたみたいだ。


 何でも出来ると思っていたみたいだ……


 君を……二度と……失いたくなったのに…………


 リサ…………


 僕は君の事が………………大――――











【――――! ――ん! ――うくん!】


 この声は…………


 メティス?


 もう僕は……。


【クロウくん! まだ諦めないで!! 君が願えば、何でも出来るの!!! 何がしたいのか、ちゃんとってよ!!!!】


 願う?


 僕の願い?


 そんなの簡単じゃないか……


 前世で僕達はずっと惨めな思いをしてきた。


 だから、新しい世界で、新しい人生を、彼女と一緒歩んでいきたい。


 妹と……ううん、リサと……大好きな彼女と生きて生きたい!




 ――――僕は生きていたい!! 一緒に生きていたい!!! もう君を失いたくないんだ!!!!




 ◇




 クロウティアのボロボロになった身体から、眩い光が溢れだした。


 その光に魔族姿になっている教皇エデンは慌てる。


 が、しかし――エデンはクロウティアから溢れ出した光に触れると、動けなくなった。


 そして、クロウティアが立ち上がる。


「教皇、僕はお前を絶対に許さない」


「くっ……な……に……を……」


「お前を倒して、僕は自分の幸せを必ず取り戻す!」


 クロウティアは手を前に出した。


「魔法が効かない、僕の攻撃ではお前を倒せない……なら、お前を動けなくすればいいだけだ!」


 教皇の表情が強張った。


「――――MPドレイン!!!」


「な……ぎゃあああああ」


 クロウティアは、エデンのMP・・を吸い取った。


「や、やめろぉおおおお!!!」


 クロウティアも知らなかった真実。


 MPドレインとは、掛けている相手を一切動けなくさせる事だった。


 ただ、動けなくなるだけではない。


 このまま、吸い取り続けると――――




 ◇




 教皇のMPを全て吸い切った。


 教皇は断末魔を上げながら転がっている。


 きっと、しい頭痛がしているのだろうね。


 今のままでは、魔法もスキルも力も、使う事が出来ないだろう。


「くあああああ!! ゆ、ゆるさああああああ」


 教皇が頭を押さえてのたうち回っている。


「お前の所為で、多くの人の命が散った……その報いを受けろ」


 僕は一振りの短剣を『異次元空間』から取り出した。


 平凡な柄の短剣。


 しかし、この短剣は…………リサが、もし魔族を倒す時があれば、使ってねと渡してくれた短剣だった。


 魔族を倒す『聖女の力』が込められた短剣。




 ――――僕はその短剣で教皇の胸を刺した。




「ぐがあああああああああ」


 刺し込んだ短剣から眩い光が溢れ、教皇の身体が少しずつ灰色になってゆく。


 そして、教皇の身体は灰となり消え去った。




 僕はリサの元に歩いて行った。


 まるで静かに寝ているように、穏やかな表情の彼女の前に僕は膝をついた。


「メティス、どうすれば、リサを助けられる?」


【――――――――】



 僕はメティスから言われた通り、とあるスキルを使用した。






 - 経験値を獲得しました。レベルが上昇しました。-


 - レベルが69になりました。-


 - 職能アザトースにより、レベル69より上昇するには特別条件を満たす必要があります。-


 - レベル上限が69から79へ解放されました。-


 - レベルが上昇しました。-


 - レベルが一定値に達しました。――――――――

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