学園と王国編

158.出逢い

――前書き――――――――――――――――――――――――――――――――

大変お待たせしました。ここからメインストーリーが始まります。

ここまで長く掛った気もしますが…この先のためにも大切な話しばかりでした。

スローペースは変わらないかも知れませんが、是非この先を楽しんで頂けたら幸いでございます。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 本日は久しぶりに学園に来てみた。


 僕……一応まだ学生だよね……。


 学園休み過ぎて、学生な感じが全然しなかった。


 実際、学園に来ても『ロード』クラスなので、クラスメイトも先生もいないからね~。



「クロウ様」


「うん? どうしたの? ディアナ」


「実は先日、セレナ様に頼まれて戦士科の剣士の生徒達と稽古して貰えないかと相談がありまして……」


「そっか、僕としても生徒達のためにディアナさえ良ければ頑張って欲しいかな」


「――――、それはクロウ様のためになりますでしょうか?」


 いつも僕を優先してくれるディアナがまた愛おしくなった。


 そんなディアナの頭を優しく撫でてあげた。


「ディアナが彼らのために何かをしてあげる事で、僕の評判も上がるからね。とても助かるよ」


 それを聞いたディアナは嬉しそうに頷いて「では行ってまいります」と戦士科に向かった。


 本当は僕の評判なんてどうでもいいんだけどね。


 ずっと僕なんかと一緒にいるより、色んな人に触れて貰いたいのが本音だ。


 ディアナは可愛いし、きっと人気者になれると思うから――。




 ◇




 そして僕は学園内を散策した。


 学園の表は綺麗に整備されているが、裏側はそれ程整備されている訳ではなく、自然が豊かだった。


 この後ろの木々で昼休憩していたっけ――。


 リサと会えた思い出の場所だ。


 そんな事を思って歩いていると――


 一際大きい木の下に人がいた。



 綺麗な赤い髪で、何処か守ってあげたくなるような人だった。


 何となくその人に近づいて行った。


 ――この人凄く綺麗だ。


「ん? 君は?」


 目が合ったその人の瞳に、吸い寄せられるようだった。


「ちょっと裏手を歩いていたら……こんな所に人がいると思わなくて……」


「ふふっ、それは奇遇だね、僕も同じ事を思ったよ」


 そして彼は読んでいた本を閉じて立ち上がった。


「初めまして、僕はイカリフィア・ハイランド」


 そう言いながら彼は右手を差し出した。


「初めまして! 僕はクロウティア」


 彼の右手を握り返した。


 しかし、彼は不思議そうな顔をしていた。


「どうかしたの?」


「ん~、君……貴族……だよね?」


「え? うん、そうだよ?」


「――――、悪い人ではなさそうだから話しておくけど……名乗る時家名・・を言わないのは、『貴方とは関わりを持ちたくありません』って事……だからね?」


 えええええ!? それって物凄く失礼な事なんじゃ!?


「ご、ごめんなさい、確かにそう教わっていたよ」


「うん、何となく君からは優しいりがしたからね、忘れていたのなら大丈夫」


「ありがとう! 僕はクロウティア・エクシアだよ!」


 それを聞いた彼は驚いた。


「エクシアって……あの大貴族の?」


「あはは……多分その大貴族であってるけど、僕が偉い訳ではないので、かしこまらないで欲しいかな?」


「ふふっ、君って凄いんだね」


 うちのお父さんお母さんが凄いんだからね!



「僕の名前、長いから皆からはイカリくんって呼ばれているので、クロウティアくんもそう呼んでくれると嬉しいな」


「分かった! 僕も皆からクロウくんって呼ばれてるからイカリくんもそう呼んでよ!」


「ふふっ、分かった。宜しくね、クロウくん」


「うん! こちらこそ!」


 イカリくんって凄く優しいんだね。


「あ、えっとさ」


「ん? どうしたの」


「こういうの失礼かも知れないけど……イカリくんって……男の子なんだよね?」


 イカリくんがジト目になった。


「――――、触ってみる?」


「えええええ!? ダメだよ!」


「ふふっ、クロウくんって本当に可愛いね、僕は正真正銘の男だよ! 疑うんなら全然触ってくれてもいいけど――」


 イカリくんが小悪魔みたいな笑顔になった。


「まあ、実は良く間違われるから慣れているんだ、でも……クロウくんもそうなんじゃない?」


「えええええ!? 僕なんて全然だよ!」


 イカリくんが小さく「そう……」と呟いた。




「イカリくんはいつもここに?」


「ん~、そうだね。僕はあまりクラスに馴染めないから、いつもここで本を読んでいるよ。ほら、これも教本でしょう?」


 イカリくんは持っていた本を見せてくれた。


 どうやら生産系の職能のようだ。


「へぇー、これはアルケミスト科の教本なのかな?」


「うん、そうだよ。僕『魔道具師』だからね」


「本当!? 凄いね!」


 『魔道具師』って、そうそういないので凄い希少性の高い職能だからね!


 もしかしたら、卒業してうちのアカバネ商会に入ってくれたりして……なんちゃって。



「ふう、しかし……他人ひととこんな喋るなんて久しぶりだよ」


「え? そうなの?」


「うん、さっきも話したけど……僕、あまり人との関わりが苦手だからさ、でもクロウくんとなら普通に話せるかも」


「そうか! 僕もだよ!」


 そして僕達はお互いを見て笑顔になった。


 何だか……こういうのって……と――――。



「クロウくんは何年生なの?」


「僕は一年生だよ!」


「ふふっ、そうか」


「イカリくんは?」


「僕は三年生だよ」


「えええええ!? ご――――」


「いいの、クロウくんにはそのままイカリくんって呼んで欲しいかな? 年が違くったっていいじゃないか」


 親しみやすいから、ついつい普通に喋ってしまったけど、どうやら年上だったみたいだ。


「うん、ありがとう、イカリくん」


「こちらこそだよ~まさか、自分があのエクシア家に連なる人と知り合うなんて」


「ふふっ、でも僕は全然大した事ないからね! うちはお姉ちゃんが凄いんだよ!」


「お姉ちゃんって……もしかして生徒会長さん?」


「うん! セレナお姉ちゃん!」


「確かに……生徒会長凄いよね」


「うん! うちのお姉ちゃん凄い!」


「ふふっ」






 これが僕とイカリくんの初めての出逢いだった。


 僕の――――――――











 初めての友達。

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